[J1・1stステージ16節]福岡2-2川崎 6月18日/レベスタ
 
「電光石火」――。金森健志が川崎戦で挙げた2ゴールは、まさにこの表現が相応しい。
 
 最下位の福岡は、首位・川崎相手にも引かず、「先に点を取りに行く」プランでゲームに臨んだ。すると9分、GKイ・ボムヨンのキックフィードをウェリントンが頭でそらしたボールに邦本宜裕が飛び込み、相手DFのクリアが甘くなったところを金森が颯爽とインターセプト。飛び出してくるGKの足もとを狙い、冷静にゴール右隅に流し込んだ。
 
 さらに先制点からわずか6分後には、「良い位置関係でやれた」(金森)邦本とのワンツーで抜け出すと、こぼれ球を小さく切り替えしてDFを外し、左足を一閃。川崎のGKチョン・ソンリョンの手の下をすり抜ける高速シュートで立て続けにゴールネットを揺らす。開始15分で2点のリードを奪う“予想外”の展開に、ホームのレベルファイブスタジアムは熱狂の渦に巻き込まれた。
 
「ウチのホームで優勝を決められるのは嫌だったし、とにかく勝つことだけを考えてやっていました。自分がゴールを決めないと勝てない、と。ウェリ(ウェリントン)が競り勝っていたのでそこのこぼれ球と、攻撃的なエウシーニョ選手の裏を狙っていました。どちらのゴールも、いつも自分がやりたいような狙い通りの形でしたね」
 
 J1リーグ戦初の1試合・2得点を記録したなか、1点リードで迎えた48分の場面がひとつの勝負の分かれ目だった。末吉隼也の叩いたボールをウェリントンがアタッキングサードのスペースに流し、金森がスピードに乗ってカウンター。しかし、DFと並走しながら左足で放ったシュートは、枠を捉え切れずにサイドネットに突き刺さった。その後は徐々に川崎ペースとなり、72分に同点に追いつかれてしまっただけに、3点目が決まっていれば……。もっとも、それは本人が痛いほど理解しており、それまでの2得点の価値が色褪せるわけでは決してない。
「あそこ(48分のチャンス)でもっと落ち着いて切り返せれば……。正直、勝ち試合だったので、勝点3を取れなくてすごく悔しい。でも、相手は首位のチーム。自分たちもやれるんだと見せつけたかったし、これだけ渡り合えたのはチームとして自信になるかなと。自分もああいう場面で決められれば、もうワンランク上の選手になれると思います」
 
 この日、J1通算最多得点を更新する現役ナンバー1ストライカーの大久保嘉人と対戦し、同じFWとして刺激を受けたという。
 
「大久保選手のポジショニングとか、ずっと点を取っているプレーヤーの凄いところを目の当たりにして刺激になりました。自分には(リオ)オリンピックのチャンスも残っているので、強いインパクトを残さないといけない。毎試合点を取ってチャンスをモノにしたいし、次節は鹿島との対戦なので、絶対に優勝はさせないつもりです」
 
 生まれ故郷のクラブをJ1に残留させるために――。目標であるリオ五輪行きの切符を勝ち獲るために――。6月に入り、公式戦3試合で4得点と勢いに乗る“福岡のプリンス”から目が離せない。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)