韓国音楽シーンに風通しのいい雰囲気を作り出している3人組のHIP HOPグループ、EPIK HIGH。ファンにも、仲間にも、後輩にも、おそらくEPIK HIGHのことをまだよく知らないというあなたにも。誰に対しても、フラットで気さくでオープンマインドな彼らは、結成16年になるベテランでありながら、そんな素振りをまったく見せない、レジェンドらしからぬレジェンドたち。

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そんな彼らの独特のトークのノリとテンポ、胸に突き刺さる繊細で知的なリリックと研ぎ澄まされたサウンド、そしてフロアに強力な一体感と高揚感、爽快感が生まれるライブにハマる人が、日本でも増加中!

2011年よりYG ENTERTAINMENTに所属する彼らは、年々日本活動も活発になっている。今年は4月29日の名古屋公演を皮切りに、1か月間にわたる7都市9公演を回る3度目の日本ツアー「EPIK HIGH JAPAN TOUR 2016」を開催。

「韓流ぴあ」は、ツアー真っ只中のEPIK HIGHに直撃! 6月8日(水)にリリースされるリパッケージベストアルバム『THE BEST OF EPIK HIGH 〜SHOW MUST GO ON & ON〜』や、とにかくわんさか出てくる今後の日本での目標について、たっぷり話を聞いた。

ファンのスローガンを目に
「HIGHGRNDはすごく愛されているんだな」!? 

――現在ツアーの半分を終えてみての感想は?

TABLO(タブロ)「公演をするたびに楽しさも熱気も増して、日本でもそんな風に熱狂的に迎えてもらえる状況がいまだに信じられません」

――横浜公演では、ファンの方々がTABLOさんの娘ハルさんの誕生日をサプライズでお祝いしてくれそうですね。

TABLO「泣く寸前でした。今年はハルの誕生日にもこどもの日にも一緒にいてあげられず、日本ツアーの前にはカルフォルニアで開催されたコーチェラ・フェスティバル出演のために、2週間ほど家を留守にしていて申し訳なく思っていたから、あの日サプライズを見て、感謝の気持ちでいっぱいになりました」

――EPIK HIGHのファンの皆さんらしい、遊び心と愛にあふれた企画ですね。

TABLO「そうなんですよ。来るたびにしてくれるんです」

MITHRA(ミスラ)「昨年は僕の誕生日を祝うイベントをしてくれました」

TABLO「ちょっとTUKUTZの誕生日も気にしていただけたら……」

DJ TUKUTZ(ディージェートゥーカッツ)「掲げられたスローガンには『HARUGRND』って書かれていたんだけど、最初よく見えなくて『HIGHGRND』と勘違いして」

TABLO「えっ、そうだったの?」

DJ TUKUTZ「『あぁ、HIGHGRNDがすごく愛されているんだなぁ』と思いました。スミマセン(笑)」

辛抱強さは長所のひとつ

――ツアーの合間には、日本を満喫されているようですね。TUKUTZさんは食事の報告をSNSに上げてらっしゃいますよね。TABLOさんとMITHRAさんは牛カツを食べるために2時間半並んだとか……。

TABLO「3時間です(きっぱり)」

DJ TUKUTZ「僕は今日違う店舗に行ったんだけど、20分待ったら食べられたよ。同じ味を!」

TABLO「僕たちが行った店舗の方がおいしかったはず。なぜなら3時間待ったから。正直それだけ待ったら、何を食べさせられても大抵のものはすべておいしく感じられるでしょうね」

――辛抱強いんですね。

TABLO「それがEPIK HIGHの長所のひとつ。仕事でもデビューしてから人気が出るまで時間がかかったし、音楽活動 ができない時期もあったけど、いつも耐えてきたから、3時間待ったら食事が出てくるなんてことは……」

MITHRA「思ったより早く出てきたっていう感覚。3時間くらいね」

――並んでいるときにEPIK HIGHだと気付かれるのでは?

TABLO「今日も気付かれました。たくさんの人に」

MITHRA「食べ終わって外に出たら、待っていた方もいたよね」

――そういう時は、どうするんですか?

TABLO「“対応”します。こんな風にして写真を撮ったり(ピース)」

DJ TUKUTZ「申告しなきゃいけませんか!? それにしても対応って(笑)」

TABLO「よくしてあげますよ。ありがたいから」

DJ TUKUTZ & MITHRA「感謝だよね!」

カニエ・ウェストと同じ空気を吸った

――日本以外の海外でも活躍の場を広げていますね。昨年の北米ツアーに続いて、今年は先ほど話にも出た「世界最高峰の野外フェス」と呼ばれるコーチェラ・フェスティバルにも参加。アメリカから日本に直接来られたんですか?

TABLO「ソウルに1日だけ戻って、すぐに日本に来ました」

MITHRA「僕はその1日を使って引っ越しをしました。ウソじゃありません。今頃、妻が荷ほどきしているはず……」

――コーチェラのステージでは、最初は十数人だった観客が最終的には数千人に膨れ上がって会場を埋め尽くしたとか。

TABLO「そうなんです。超満員でした。そこにはアジアの人たちがほとんどいないし、EPIK HIGHを知らない人の方が多いはずだから、このくらい集まってくれたらありがたい方だと思って楽しんでたら、数曲歌ったくらいで一気に人が集まってきて。すごく盛り上がったよね」

――数年前のメモに「生きている間に参加したい5つのフェス」が書かれていてコーチェラを含む3つが叶ったそうですね。昨年にはその中のひとつ「SUMMER SONIC」への出演が実現しましたが、日本のフェスにはどんなイメージを持っていましたか?

TABLO「有名なアーティストがたくさん参加しますよね。音楽を始めたときから、必ず一度は遊びに行きたいと強く思ってました。『SUMMER SONIC』ではファレル・ウィリアムスに会ったし、今回アメリカでも多くの出会いがありました。Andre 3000のOUTKASTやTHE WEEKEND……ほかに誰がいたっけ?」

DJ TUKUTZ & MITHRA「カニエ・ウェスト」

TABLO「そうそう、カニエ・ウェスト。近くを歩いていて同じ空気を吸ったっていうね(笑)。僕のインスタグラムを見ていただければ、アメリカでの様子を詳しくご覧いただけます。@blobyblo(アカウント名)」

MITHRA「@realmithrajin」

DJ TUKUTZ「@realtukutz。ぜひチェックして、『いいね』を押してください!」

スターになることに関心がない子たちのやりたい音楽を形に

――カニエ・ウェストといえば、彼が創設したレーベルG.O.O.D. Musicと、TABLOさんが率いるレーベルHIGHGRNDが、3泊4日で14曲を作るプロジェクト“SONG CAMP”を一緒にしたことが話題になりました。その様子を映した動画の中で「脳がセクシーな男(TABLO)」「ノリのアイコン(TUKUTZ)」「HIP HOP救助隊(MITHRA)」というキャッチフレーズが使われていましたが、気に入っていますか?

TABLO「もちろん。なぜなら自分たちで作ったから(笑)」

DJ TUKUTZ「気に入ってるから、世の中に出たんです!」

――自己プロデュース力もさすがです(笑)。参加者は、所属アーティストのHYUKOH(「SUMMER SONIC 2016」への出演が決定)のボーカリスト・ヒョゴや、プロデューサーのCODE KUNSTほか、TABLOさんが2ndアルバムのプロデュースを手がけたイ・ハイなど、シャイな方が多かったですが、そういうアーティストたちの士気を高めてまとめていく秘訣は?

TABLO「僕たちもそうでしたが、本来の自分の姿を変えようとしたりはしません。素晴らしい音楽の才能を持っているけど、スターになることに関心がない子たちのやりたい音楽を形にするのがHIGHGRND。大切なのは、そういうアーティストがありのままの姿でのびのびと長く音楽ができるように居場所を作ってあげることだけです」

――HIGHGRNDのアーティストだけでなく、事務所やレーベルの垣根を超えて、音楽の可能性を広げる架け橋となっているのが、EPIK HIGHのような気がします。SHINeeのジョンヒョンさんのイ・ハイさんへの楽曲提供や、ジュンスさんのPSY最新アルバムへの参加も、皆さんがいたからこそ実現したそうですね?

TABLO「あぁ、そんな風に言っていただいたらプレッシャーですよ。僕たちはSHINeeやSUPER JUNIOR、JYPのアーティスト、それからすでにご存知の通り俳優のソン・ジュンギさんとも親しいし……(詳しくは、発売中の雑誌『韓流ぴあ 6月号』参照!)。元々どんなジャンルか、アイドルなのかそうじゃないのか」

DJ TUKUTZ「事務所が一緒だとか、違うとか」

TABLO「そう、そういうことを気にせずに、自分たちがいいと思う人と付き合うタイプだからか、僕たちのところに誰かを紹介してほしいと来る人が多いんだよね。かといって人脈が広いわけではないんだけど、HIP HOPの仲間だけで付き合おうという感覚がありません」

――現在シーズン5が放送中のサバイバル番組『SHOW ME THE MONEY』の人気で、昨今新たなHIP HOPブームでしたよね。その影響は感じていますか?

TABLO「僕たちはデビューして長いので、これまでに4、5回そのブームを経験してきました。世の中のあらゆるものは、流行り廃りを繰り返すのが常なので、僕たちにとっては今のブームが特別な感じはしないけど、盛り上がっているのはうれしいことですね」

――最近気になっているアーティストはいますか?

TABLO「特に最近ということではないけど、ILLIONAIRE RECORDS? DOK2、The Quiett、Beenzino……」

MITHRA「それからTWICE。AOAももうすぐカムバックする(※)って、記事が出てたよ。芸能ニュースはいつもくまなくチェックしています(笑)」
※取材はAOAのカムバック前に行われました

TABLO & TUKUTZ「(呆れ顔)」

自分の才能に点数をつけるなら EPIK HIGHの夢

――6月8日(水)には、自身初となるベストアルバムのリパッケージアルバム『THE BEST OF EPIK HIGH 〜SHOW MUST GO ON & ON〜』がリリースされます。代表曲の『DON'T HATE ME -Japanese Version-』『LOVE LOVE LOVE ft. DARA (from 2NE1) -Japanese Version-』が新録されたスペシャル盤ですね。

TABLO「これまでツアーをしながら、日本の観客の皆さんの反応が一番よかったのがこの2曲。感謝の気持ちも込めて、日本語でもお聞かせしたいと思ってセレクトしたんです」

――2007年に韓国で発売された『LOVE LOVE LOVE』は、最近韓国で社会現象にもなった大人気ドラマ『太陽の末裔』でもかかったそうですが?

TABLO & DJ TUKUTZ「(声を揃えて)そうです、2回!!」

TABLO「僕は見ていませんでしたが、ファンのみんながSNSで騒いでいて……調べてみたら“EPIK HIGH”と“LOVE LOVE LOVE”が検索語と音源チャートの上位に上がっていて知りました。ドラマ制作者の中に、EPIK HIGHが好きな人がいるんだなぁと、気分がよかったです」

――韓国内でも今もなお愛されているこの曲ですが、約10年の時を経て日本語ver.が発売される心境は?

TABLO「初めて聞く観客の人たちには新しい曲として受け入れられるなんて、不思議です。アメリカ公演で昔の曲を歌った時にも反応がよくて、そういうのを見るとやっぱり嬉しい。韓国でも僕たちの曲がリメイクされたことがあったけど、それでもまた人気になるので……“タイムレスな歌”を生み出す自分の才能に点数をつけるなら(笑)、僕はちょっと謙遜して3点。なぜならふたりがもっと高い点数をつけてくれるはずだから。どう思う?」

DJ TUKUTZ「10点」

MITHRA「9.3点」

TABLO「(満足そうに頷いて)僕たちの夢は、いつか子どもたちが成人した頃にまたリメイクされてヒットして、『あぁ、これはお父さんたちが作った曲なんだ』と思ってもらうこと。そうなったら嬉しいな」

なんでも可能! 目標という名の果てしなき野望!?

――十二分に実現の可能性がありますね! 他にもリパッケージ盤ならではのポイントを挙げるなら?

TABLO「ジャケット写真がイカしています。前回はモノクロで衣装もスーツで地味だったけど、今回は鮮やかなカラーでなんというか、“サマー”な感じ(笑)」

DJ TUKUTZ「僕の短パン姿が、なんとも……言葉になりません(笑)」

――素敵ですよ(笑)。日本での次の活動計画や目標はありますか?

TABLO「紅白歌合戦」

――どの曲で出ましょうか?

TABLO「なんでも」

DJ TUKUTZ「(笑)。出していただけるなら、曲は問いません」

TABLO「これって何を言ってもいいわけだよね。“ビストロスマップ”にゲスト出演!」

――非常におもしろそうです(笑)。

TABLO「それから音楽賞を受賞して日本の視聴者が『あの人たち誰? なんで賞をもらってるの?』みたいなシチュエーション(笑)が実現すればこの上なくありがたいね。あとはソフトバンクのCMに出演したり、青山に一軒家を建てたり」

DJ TUKUTZ「なんの理由もなしに渋谷に僕の巨大写真が飾られたり(笑)」

TABLO「僕たちの顔を気に入った漫画家がEPIK HIGHをキャラクターにした漫画を描いて、『ドラゴンボール』や『ワンピース』を凌ぐ人気になって、ロイヤリティーをあげるって言われてね。僕たちは宣伝になってありがたいから別にもらわなくてもいいのに」

MITHRA「それで秋葉原に僕たちの動画が流れたりして!」

TABLO「なんでも可能なんですよ!」

DJ TUKUTZ「人の人生っていうのはどうなるのか、わからないものですから」

TABLO「別に実現しなくてもいいんです。今言ったことが叶わなくても、僕たちは今も十分ありがたい環境に恵まれていて、幸せですから!」