◇「人間には同じ24時間しかないので、どこかが盛り上がるとどこかが廃れちゃう」


土屋:お2人にはこの記事を読んでいる方が「俺もネットで収入を得て生活できるんじゃないか」と思ったりするかもしれないので、そういう戦略、稼ぎ方も教えていただきたいと思います。

山本:それは、ネット上で上位0.1%にあてはまるかという話でしかないと思っています。「ブログで儲かる」って一時期流行ったんですよ。いまでも高知で儲かると公言して消耗している人はいますが、本当に儲かるかどうかは別として、水車の仕組みみたいなもので、まず川が流れていないとダメなんです。物を書きたいという動機がないと水車が回らない。いかにブログとアフィの仕組みという水車が巧緻にできていたとしても、書く動機がなかったりネタを探しきれないと水車が回らなくなる。上位0.1%というのは、書き続けるためにネタを探せる人であり、その意欲、時間がある人なんです。

土屋:お2人は、どういう経緯でネット業界に?

山本:いきなり話変えんなよ。びっくりするだろ。

中川:俺は博報堂に行って、4年で辞めて無職になり、『テレビブロス』の編集者になったのだけど不祥事起こして半無職になり、そんな時にネットニュースをやらないかと誘われて「2ちゃんねるも見たことないですけど…」って始めたんです。仕事がほしいからネットに入っただけなんです。俺は単に、ネットで儲かる仕組みを作った人に雇われてるだけなんですよ。

山本:私はもともとパソコン通信をやっていて。インターネットができる前に、パソコン同士を電話でつなぐと文字でコミュニケーションがとれるんじゃないかと真面目に考えてる人がいまして。一般の人からすると、当時40万円くらいするパソコンをわざわざ電話につないで、電話料金を払って文字でコミュニケーションをとるって聞くと「電話で話せよ」ってみんな思うわけです。

Webがある前からこういうパソコン野郎がいて、そのパソコン野郎の薫陶を受けてずっとPCを触っていた見習いプログラマーが私だったわけです。ニフティーサーブに入った時も掲示板マスター、システムオペレーターの補佐みたいなことをしていて。その後2ちゃんねるやブログが出たり、Twitterがでたり、mixiが出てきましたけど、僕らからするとすごくわかりやすい世界で、CGM(コンシューマージェネレーテッドメディア)っていうんですけど。

土屋:今はたくさんのWebサービスがあると思います。その中で生き残るにはどうしたらいいんでしょう?

山本:例えば LINEって、カカオトークとかViberと何がすごく違ったかと聞かれても説明できないんです。なぜLINEだけが日本人のマジョリティーを占めたか、なぜmixiが広まったか、なぜ2ちゃんねるにあんなに人が集まったのか、「肌ざわり」とか「タイミングが良かった」などとしか説明できません。

中川:ネットのおもしろいところは、上位1社と、それをパクったもう1社が全部をとるところですよね。

山本:昔はウィナーテイクオールといって、1位が総取りできると言われていたんですが、今はウィナーだけじゃなくて、模倣者である2番手が生き残る仕組みができているんです。

土屋:ミュージシャンもだいたい2番手までは生き残る(笑)。でも、これが永遠に続くってわけじゃないですよね。何年周期くらいなんですか。

山本:6〜7年くらいです。2ちゃんねるもそうだったんですけど、mixiも天下は6年くらい、そのあとFacebookだ、Twitterだ、LINEだって出てきて、その後Instagramが出てきて、そのあとPinterestとかWhatsAppが出てきて、代替していくんじゃないかと。

中川:人間には同じ24時間しかないので、どこかが盛り上がるとどこかが廃れちゃう。

山本:パイは変わらないので。あとこれは意外なんですけど、いろんな人が「SNS使ってる使ってる」って言うじゃないですか。でも自分のプロフィールを出してコミュニケーションをとっているのは、全人口の8%くらいしかいないんです。名前を出してしゃべる人はそのくらいしかいないから、発言する人は実は希少価値がある。そうすると今度は、表に名前を出してしゃべる人の奪い合いがあるんです。そういう人は今度は自分のドック、ホームグラウンドになるものを作るんです。それがブログになる可能性は高いです。

ブログの中に自分のTwitterカウントを連携させたり、FacebookやInstagramを連携させて、自分のホームグラウンドを作る。最近だと、NewsPicksやYahoo!も意図的にやってますが、そこに書いたものやリアクションをひとつの場所にまとめる。昔のブログの使い方とは違ってきてる。

土屋:ポータルサイトみたいなことでしょうか。

山本:自分ポータルですね。個人のメディアみたいになっていて、そこに行くとその人のやっていることがすべてわかる。それで自分メディアをやっている気になるんです。昔は、オピニオンや自分の表現したいことを書くとそれを読みに来る人がいて、いろんな反響があってページビューが増えてブロガーとして認知されるという仕組みだったのが、最近はいろんなタコ足状のSNSがあって、様々なものを糾合した自分メディアの場所としてブログが使われることが増えた。そこにアフィリエイトリンクを貼って暮らしていく人が出て、それでようやくブログで飯が食えるという、そういう仕組みです。