中国では「一人っ子政策」のなかで男児の出産を望む夫婦の心理を利用したさまざまな「神薬」が出回った。「これを使えば男児が生まれる」というものだが、2人目の出産が解禁されて以降も「神薬」にすがろうとする夫婦が消えることはなさそうだ。

 中国メディアの北京青年報は22日、近ごろ1人目に女児を出産した夫婦をおもなターゲットに、男児を生むための「秘方」や「神薬」の市場が活発化しているとし、国外や香港からの個人輸入品としてECサイト上にさまざまな商品が売られていると紹介。ただし専門家からは、「多くは科学的根拠に欠け、女性の健康を脅かすもの」と指摘が出ているという。

 記事は、その例として「日本(から)直送」などと書かれた商品を紹介。ゴム製の棒を膣に挿入することで1分のうちに膣内環境を弱アルカリ性あるいは弱酸性に変化させ、男女の産み分けを実現する」とする商品を紹介。ネット上で300-2000元(約5700-3万8000円)程度で売られているという。記事は続けて、北京にある産婦人科の専門家が「酸・アルカリ度では性別は変わらず、疾病を誘発する可能性がある」と注意喚起したと紹介した。

 また、「10年間に7人の男子を生んだ人の経験から配合した」という香港の「神薬」についても取り上げた。2-3年前に比べて7-8倍の値段になっているにもかかわらず、大陸からの購入者が後を絶たないという。記事はこの商品についても、専門家が「効果はない」と断じていると伝えた。

 記事によると、「2人目を生むママはプレッシャーが大きい! 男児を生まねば!」といったキャッチコピーを掲示するECサイト上のショップもある。中国では、男女により発言率が異なる遺伝病の可能性がある場合を除き、医療機関が胎児の性別を調べたり、性別が分かったとしても親に伝えることが禁止されている。しかし、何らかの手段で男女の性別を知り、女児とわかったとたんに人口中絶をする夫婦が多く、昨今でも男女の出生比が115.88対100程度とされている。

 男児欲しがるのは、古くからの「男尊女子」の考え方以外に、中国では社会保障が整備されていないため、「女の子だと実家を離れる確率が高い。その場合、老後に世話をしてくれる人がいない」との「不安感」が関係しているとされる。ただし、北京市の男女出生比は107対100とであり、男女比のバランスの崩れは地方のほうがより深刻な状況のようだ。(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:123RF)