「本田は、守備の面では汚れ仕事をよくやってくれていた。しかし私は、攻撃を組み立てる点で、彼がもっとやってくれると信じていた」
そしてもうひとつ、本田にとっては危険とも思える、ある示唆を含んだ言葉……。
「ここまでの時点で、一番出来の良いトップ下は本田だった」
これは、MFのアンドレア・ベルトラッチが怪我から復帰すれば、ボナベントゥーラがポジションを上げてトップ下に入る――とも解釈できる。つまり、7月までずっと論じられてきた、「トップ下は誰か」の問題が再燃し始めたわけだ。
この夏、好不調の波の大きかった本田にとって、今回のデルビーはポジションを確実に自分のものとするチャンスだったのだが、そのプレーは人々を納得させるものではなかった。
イタリアのマスコミのほとんどが、この日の本田に最低の評価をつけた。そして、彼らのほとんどが、同じような疑問を投げかけている。デルビーのような重要な試合で、本田のような才能ある選手たちが力を出し切ることができないのならば、ミランのレベルは永遠に上がらないのではないか?……。
では、ミランが再上昇するためには何が必要なのだろうか。本田のようにプロ精神を持ち、懸命に練習するのは大切なことであり、周囲からの評価を高める姿勢である。しかし苦境を打開するには、時に、より強烈な個性やイニシアティブが必要となる。つまり、あえて枠組みからはみ出すことも必要ということだ。
本田にとっても、ミランにとっても、先行きは不透明である。ゼロから再出発しなければならない状況であったとはいえ、3試合で3ポイントはあまりにもひどい。
さて最後に、久しぶりにミランの株譲渡の進行具合をお知らせしておこう。今月末までには、ビー・テチャウボン氏への48パーセントの売却が完了することになっている。事実上、譲渡はほぼ終わっており、あとは形式的なサインといくつかの細かい項目を決めるだけだと、つい最近、ベルルスコーニ・オーナーは発表している。
国外からの資本参入は、もちろん大歓迎だ。しかし、カルチョメルカートはすでに終了してしまっている。
ミランはこの夏、もっとうまく立ち回ることができたはずだ。せっかく、また金を使えるようになったというのに、どうやら彼らは、その使い方を忘れてしまったらしい……。
文:マルコ・パソット(ガゼッタ・デッロ・スポルト)
協力・翻訳:利根川晶子
Marco PASOTTO/Gazzetta dello Sport
マルコ・パソット
1972年2月20日、トリノ生まれ。95年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で執筆活動。2002年から8年間ウディネーゼを追い、10年より番記者としてミランに密着。ミランとともにある人生を送っている。
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