「ハンカチ」「ビリギャル」応酬で話題となった早慶戦
早大が歴代最多タイとなる44度目のリーグ優勝を決めた早慶戦。プロ野球よりも歴史が長い創立90周年の東京六大学野球伝統の一戦では今回、思わぬ形での場外戦が脚光を浴びることになった。
早慶戦に向け、制作された宣伝ポスターがインターネット上で拡散され、世間の話題を呼んだのだ。
そのおもしろさは、東京六大学ならではだろう。5つのバージョンがあり、両校チアリーダー、野球部員、リーダー部員、吹奏学部員、マスコットが睨み合うように対峙。互いのライバル心をあおるキャッチコピーが秀逸だ。
◆チアリーダー
「ハンカチ以来パッとしないわね、早稲田さん」
「ビリギャルって言葉がお似合いよ、慶應さん」
◆野球部員
「早稲田から勝ち取る優勝に、意味がある」
「慶應に負けた優勝など、したくない」
◆リーダー部員
「早稲田の勝利しか、見えない」
「それは視野せまい」
◆吹奏楽部員
「トラウマになるまで吹いてやる、若き血を」
「思うぞんぶん吹かせてもらうよ、紺碧の空を」
◆マスコット
「一塁側のため息が、イチバンのごちそうだよ」
「敗戦後の三塁側は冷え込むので、ご自愛するのである」
なじみのないファンには、少し過激に聞こえるかもしれない。だが、東京六大学ではこのコピーのように、応援団のリーダー部がユーモアに富んだ“ヤジ”のコールを応援席で呼びかけ、互いにあおることは風物詩。それが今回、ポスターとなり、大反響につながった。
慶大応援指導部OBと現役の指導部員が4月中旬、早大・斎藤佑樹(現・日本ハム)の卒業後から動員が減少傾向にある早慶戦を盛り上げようと企画したのが事の発端だった。早大応援団側に持ちかけ、スタジオ代、編集代など、総額5万円という低予算で初めての試みが実現した。
特に、チアリーダーは「お高くとまった感じが慶應っぽい」「おへその出た早稲田の子がかわいい」など、インターネット上で話題沸騰となった。
「実物も美人」「写真を撮ってもらった」の声も、ユニホーム姿のモデルは…
さらに、当日のインターネットやツイッター上には「慶應の応援席で踊っている『ポスターのチア』は実物も美人」「早稲田の優勝パレードで写真を撮ってもらった」などのコメントが見られ、一躍、時の人となり、モデルとなった両校のチアリーダーの名前を特定しようとする動きまでみられていた。
一方で、意外と知られていないのが、ユニホーム姿で向かい合う野球部のモデル。帽子を目深に被っているため、顔を伺い知ることができない。
しかし、大学野球ファンであれば、慶應は主砲・谷田成吾選手と分かるだろう。今秋ドラフト候補に挙がり、甘いマスクが特徴的な人気選手である。
対する早稲田も、谷田とライバル関係にあるような実力選手かと思いきや、実はベンチ入り経験のない1年生選手だったという。
撮影日が早大のリーグ戦の試合週と重なり、レギュラー格の選手は試合への調整があるために起用できず。代わってルーキーが抜擢される形になったという裏話があった。
こうした両校の努力もあり、初戦は3万4000人を動員。これは、同じ神宮を本拠地とするヤクルトの今季最多の観衆3万777人(5月2日・広島戦)を上回る超満員。早大の優勝が決まっていた2回戦にも3万人の学生、ファンらが殺到した。
伝統のカードは、早大の勝ち点5の完全Vという結果で幕を閉じた。次の舞台は8日に開幕する全日本大学野球選手権。2日間で6万4000人が熱狂した早慶戦でつけた勢いそのままに、3年ぶりの日本一に挑戦する。<終わり>