考えうる限りの最低なかたちで、ミランは終焉を迎えた……。
 
 ウディネのピッチで見たミランは、戦うこともなく、やる気もなく、自分たちらしささえもなかった。
 
 フィリッポ・インザーギの監督続投を決めた時、ミランの幹部はあることを彼に希望した。
 
 シーズンをミランらしい態度で終えること、終盤戦の試合を適切なメンタリティーでプレーすること、来シーズンに向けてチームがすぐに新たなスタートを切れる状態にすること――。
 
 集約すれば、シルビオ・ベルルスコーニ・オーナーにしろ、アドリアーノ・ガッリアーニ副会長にしろ、最も重要なのはヨーロッパリーグ(EL)出場権を手に入れることだと、はっきり言いたかったのだ。
 
 しかし、インザーギはその要望に応えることができなかった。ミランは、デルビー(ダービー=ミラノダービー)で不穏な亀裂を見せ、ウディネーゼ戦でついにどん底にたどり着いた。ELの夢もおしまい、インザーギもおしまいだ。
 
 彼は今シーズン最後まではどうにかミランを率いるだろうが、その後は“ベルルスコーニ時代で最もひどかった年の監督”という不名誉なレッテルとともにベンチを去るだろう。
 
 正直に言うと、選手たちはかなり以前から、インザーギのことを見限っていた。来シーズンのミランの監督が彼ではないと分かった頃から、そうした空気がロッカールームを支配していった。だから、誰も闘志もやる気も出すことができない。それがウディネでの敗戦で浮き彫りになってしまった。
 
 このことに、組織としての将来の不透明さも加わって、選手たちは完全にブラックアウトしてしまったわけだ。もっとも、だからといって、敗戦が正当化されるわけではない。
 
 ミランがここまでの状態に陥ってしまった責任は、全員にある。もう何年も選手の補強に金をかけなかったクラブ幹部、そして経験不足なだけでなく、自分の考えに固執しすぎて他者に口を挟ませなかった監督……。ひどい内容の試合の後、会見で様々な言い訳をするインザーギを、我々記者は何度も見てきた。
 
 怪我人が多かったから(確かに多かったが)、他のチームだってかなり苦しい戦いをしている(それと自チームの不甲斐ない戦いぶりは関係ないのでは?)、対戦相手の出来が良かったから(エンポリやキエーボのようなセリエA残留が目標のチーム相手でも?)――。
 
 彼の言葉を聞いていると、常にミランには未曾有の不運が襲いかかっているようだ。しかし実際は、テクニカルな面においても精神面においても、彼のチームのマネージメントが誤っていたことはもうはっきりしている。
 
 もちろん、選手たちにも非はある。誰も今のチームの状況を変えようと積極的に試みなかったし、誰もこのチームのリーダーになろうとはしなかった。そして誰も、苦労しているチームメイトに手を差し伸べようとはしなかった。「プロの手本」だとされている本田圭佑でさえも、何もできなかった。
 ウディネーゼ戦の後、インザーギ監督は就任以来、初めて厳しい言葉を吐いた。
 
「どん底にたどり着いた」
「皆、うわの空で頭はピッチになかった」
「こんな調子では、誰と対戦しようと負けるだろう」
「これからは、本当にやる気のある選手しかプレーさせない」
 
 そして、スタジアムからウディネの空港に向かうバスのなか、彼は選手たちの目を見ながら、ダメ押しのひと言を発した。
 
「お前たちは、ミランのユニホームを受け継ぐ者として相応しくない」
 
 この言葉に選手たちの何人かがキレ、かなり激しい言葉を監督に返した。こうして、インザーギと選手たちの溝は決定的なものとなってしまった。