2014年、日本中を駆け巡った食品への異物混入問題。ハンバーガー、インスタント食品、コンビニフードなど、相次ぐ騒動と過熱する報道に、消費者の食への不安は増大した。

【写真を見る】マクドナルド独自の調理器具、スパチュラの検査。鉄板と頻繁に接触する先の部分が曲がっていないか、別のヘラを当てて確認

また、これをきっかけに各企業でも衛生管理のチェック体制の強化やスタッフ教育の徹底など、あらゆる対策が図られ、食の安全性が改めてクローズアップされた。

外食産業においては、各企業が独自の衛生管理ルールに基づき、チェック体制を敷いていると聞く。しかし、内部だけの検査では、異物混入対策が現場で適切に行われているかは分からない。

そこで、異物混入報道の渦中にあった日本マクドナルドの臨時外部衛生検査、いわゆる抜き打ち検査の現場へ潜入取材を行った。

マクドナルドで働くクルー以外は入ることができないバックヤードに入り、第三者機関というプロの目で行われる厳しい検査を取材した。

マクドナルドが定める独自のフードセーフティチェックリストを基に作成された通常検査から、異物混入対策関連の項目を抜粋した臨時検査に立ち会った。

その中身は大きく分けて7項目。さらに、項目ごとにおよそ40項目もの“ビューポイント”があり、正常であるかどうか、キッチンだけではなく倉庫までも検査対象になっている。

まずは、日々の衛生管理や検査結果が保管されている、サニタリーファイルからチェック。前回の検査で指摘した項目があれば、その後に改善されているかも確認する。

検査員はキッチンに移動し、食材が収納されている冷蔵庫やトレー、調理器具などを隅々までチェック。そこで樹脂製品のひび割れ、ネジの緩み、ワイヤー製品の破損、輪ゴムやクリップなど落としやすい物を使用していないかなど、目を凝らして進めていく。

さらに、倉庫ではプラスチックケースの破損がないかなども細かくチェックし検査は終了。

終了後、立ち会ったスタッフに検査結果のフィードバックが行われ、改善ポイントが伝えられる。今回の検査では、樹脂製品の欠けとフライヤーの隙間に剥がれが確認され、スタッフがすぐに交換を行い、改善を図っていた。

臨時外部衛生検査にかかった時間はおよそ30分。それは他社と比較すると長いのか、第三者機関の検査員に聞いてみた。

「マクドナルドのフードセーフティチェックリストの内容は、異物混入対策以外に食中毒対策や記録管理などがあり項目数も多い。チェック時間も他の企業であれば通常検査が15分で終わるところもあるが、毎年1回、マクドナルドの各店舗で実施されている通常検査は、1時間半から2時間かかります。今回の臨時衛生検査だけでも30分かかることからも、その厳しさが分かると思います」。

そもそも、衛生管理の体制を厳しくすれば異物混入を完全に防ぐことは可能なのだろうか。

「それは無理だと思います。生産地、加工場、製造場など、流通の場で多くの人が関わっているので。とはいえ、異物混入問題が頻出してから、問い合わせ件数は圧倒的に増えています」。

また、日本マクドナルドの店舗フードセーフティの担当者は、「フードセーフティチェックリストで確認すべき項目は、科学的な根拠に基づいて作成しています。ただ、調理するのは人間なので、100%ミスがないとは断言できません。何かが起きてしまった時に、最小限の危害で抑えられるようなプログラムを組んでいます」と語る。

全国で14万人ほどいるクルーに対する教育については、「1年で、半分以上が入れ替わります。教育の徹底は大きな課題だと思っています。まずは人材を育てること。それがお客様に気分良く利用していただける店づくりにつながります」と熱弁。

クルーへの適正な勤務評価を行い、モチベーションを上げることも重要だと語る。

最後に、第三者機関を入れて検査をすることの効果について聞いた。

「やはり説明責任を果たすことです。自分たちで、自分たちの店をチェックしてアピールをしても疑わしいですよね。本当に適切かどうかは、客観的に評価してもらうことが大切だと思っています」と、その重要性を語った。

公正かつ透明化された検査を行わないと消費者からの信頼は得られない。そのためには専門の知識を有する、第三者機関による外部衛生検査が重要な役割を果たすのだ。

外食産業で働くアルバイトたちの視点や認識のギャップを埋める企業努力を各社が重ねていくことで、消費者の衛生管理に対する信頼も高まっていくはずだ。【関西ウォーカー】