■ チャリティーマッチ

3月27日にギラヴァンツ北九州のホームの本城陸上競技場で行われたチャリティーマッチ。ギラヴァンツ北九州がサガン鳥栖と試合。北九州はJ2で2年目のシーズンであり、鳥栖は13年目のシーズンとなる。1999年にJ2が誕生したが、皆勤クラブは鳥栖だけである。

ホームの北九州は<4-2-3-1>。GK佐藤優。DF佐藤真、宮本、福井、多田。MF桑原、木村、永畑、森村、安田晃。FW池元。39歳のベテランのMF桑原と川崎Fから加入のMF木村のダブルボランチ。フィテッセのDF安田理大の弟でガンバ大阪から加入のMF安田がトップ下。コンサドーレ札幌から移籍のGK佐藤優がゴールを守る。

対するアウェーの鳥栖は<4-2-3-1>。GK室。DF丹羽、木谷、呂成海、磯崎。MF岡本、藤田、キム・ビョンスク、永田、早坂。FW野田。2010年に13ゴールを挙げているFW豊田は怪我のため欠場。新人のFW野田がスタメンに入った。トップ下は湘南ベルマーレから加入のMF永田。モンテディオ山形から加入したばかりのMFキム・ビョンスクがスタメン。

■ 早坂が決勝ゴール

序盤はホームの北九州がペースを握る。細かいパスをつなぐスタイルで、何度かチャンスを作る。しかし、時間が経つにつれて、自力に優る鳥栖のチャンスシーンが増えていく。先制ゴールは前半終了間際。ショートコーナーからDF丹羽が右サイドからクロスを上げると、フリーで飛び込んだMF永田が決めて鳥栖が先制する。

リードを奪われた北九州は、後半開始からFWレオナルドを投入して反撃。後半11分にそのFWレオナルドが右サイドに流れてクロスを上げると、ファーサイドに走り込んできたMF森村がヘディングで合わせて1対1の同点に追いつく。

追いつかれた鳥栖だったが、後半16分に右サイドバックのDF丹羽のクロスから、再びチャンスを作る。DF丹羽が左足でゴール前にふわりと上げたボールFW野田がヘディングシュート。これは惜しくもポストに当たるが、こぼれ球をMF早坂が落ち着いて決めて、2対1と勝ち越しに成功する。DF丹羽は2ゴールに絡む活躍。結局、試合は2対1で鳥栖が勝利し、先輩の意地を見せた。

■ ヤスのチャレンジ

今シーズンから、北九州の監督に就任したのが三浦泰年監督で、1965年7月15日生まれの45歳。弟のFW三浦知良が1967年2月26日生まれの44歳なので「1学年違い」となるが、45歳は監督としては「若い」といえる年齢で、Jリーグの監督は初めてとなる。

その三浦監督が、どういったサッカーを見せるかというのは、興味深いところであるが、開幕戦は大雨の中での試合ということで、思うような試合運びは出来なかったが、この日は監督のカラーというものが見えてきた。

基本は<4-2-3-1>であるが、攻撃になったときにボランチのMF桑原が最終ラインまで下がってきて、両サイドバックが非常に高い位置を取る。したがって、攻撃のときは<3-4-3>のような配置になっており、非常に攻撃的な布陣である。サイドバックは、右にDF佐藤真、左にDF多田が起用されているが、左サイドに入っているDF多田のポジションはサイドバックとは思えないほどの高い位置をキープしており、左サイドからの攻撃が武器になっている。

この方式は、サイドアタッカーに強烈な選手がいるチームが採用しそうなものであるが、ここまでサイドバックが高い位置にポジションを取るというのは、Jリーグではあまり見られないものであり、ベースのシステムが4バックと3バックという違いはあるが、2002年大会のブラジル代表と雰囲気は似ている。

■ 中心になるMF木村祐志

チームの中心となっているのが、川崎Fから加入のMF木村祐志。守備的なMF桑原とボランチのコンビを組んでいるが、MF木村が下がってきてボールを受けてパスをさばくプレーが攻撃のスタート地点になっており、キープ力、パスセンスで、欠かせない存在となっている。

木村は川崎Fのユースから2006年にトップチームに昇格しているが、5シーズンで5試合に出場しただけ。能力は評価されていたが、同じような特性を持つMF中村憲の壁は厚くて、ベンチ入りもままならなかったが、新天地では1年目にしてキャプテンを任されている。開幕戦では、得意のフリーキックで見せ場を作っており、右足のプレイスキッカーとしても、期待できる選手である。

■ MF安田は持ち味を出せず

一方、トップ下に入っているMF安田は、この試合は持ち味を発揮できずに、前半のみで交代となった。ジェフ千葉との開幕戦はスルーパス等で見せ場を作ったが、ボールに触れる回数も少なくて、いいところはなかった。

MF安田もユース出身で2008年にトップチームに昇格したが、3年間でJ1出場はゼロ。MF遠藤、MF二川、MF橋本という日本代表クラスの選手が同じポジションにいたため、出場機会に恵まれなかった。パスセンスは高く評価されており、攻撃をリードしなければならない立場であるが、この日は不本意なプレーだった。

■ 早坂が決勝ゴール

一方の鳥栖はチームに加入して2年目となるMF早坂が活躍。時間が経過するにつれてプレーに関与するシーンが増えていって、両チームを通して、もっとも存在感を示したといえる。

MF早坂はJFLのHonda FCから加入してきた選手で、攻撃的なポジションならどこでもこなす。183?と高さもあるが、運動量もあって、使い勝手のいい選手である。昨シーズンから、ユン・ジョンファン監督に重宝されており、移籍1年目から36試合に出場して4ゴールを挙げたが、攻撃的なポジションで起用されたにもかかわらずに4ゴールというのはさびしい数字でレベルアップが求められるが、この試合では期待に応えるプレーを見せた。

鳥栖には昨シーズン13ゴールを挙げたFW豊田という絶対的なストライカーがいるが、その次に続く選手がおらず、「パンチ力不足」であったが、MF早坂が、コンスタントにこのレベルのプレーができるようになると、チームの総合力は大きく上昇するはずである。

■ 1トップで奮闘したFW野田

1トップでスタメン起用されたFW野田も好プレーを見せた。身体能力という点ではFW豊田に見劣りするが、ポストプレーは安定しており、技術もあるので、確実にボールがおさめることができる。2月に行われたプレシーズンマッチの浦和レッズ戦でも決勝ゴールを決めており、プロとしても、順調なスタートを切っている。

鳥栖は元韓国代表で2002年の日韓W杯にも出場しているユン・ジョンファン氏が監督に就任して1年目のシーズンであるが、ライセンスの問題で正式に監督になれなかっただけで、実際には2年目のシーズンであるが、チームの軸はFW豊田、DF木谷、GK室で固まっており、その周りの選手がどれだけ活躍できるかである。MF早坂、FW野田、MF國吉、MF岡本、MF藤田など、面白いプレースタイルを持つ選手が多く、彼らのブレークに期待したいところである。

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