ロシア・ワールドカップ(W杯)の開幕まで10日を切った。

 数々の名シーンを生んできた4年に一度のフットボールの祭典。はたして今大会、サッカー史に残るようなスペシャルな出来事は起こるのか。世界中の関係者とファンはワクワクしている。

 もちろん、素晴らしいプレーやビューティフルゴールだけではない。W杯ではさまざまな“ハプニング”も起こり得る。英紙『Daily Mail』は6月3日、過去20大会における「もっとも物議を醸した事件」のトップ10を選出した。

◆10位 サンティアゴの死闘(1962年チリ大会)

グループリーグでの対戦を前に、イタリアの記者がチリの首都サンティアゴの街並みやチリ人の女性を酷評。地元メディアがこれに反論したことで、両国の対立がヒートアップした。試合は荒れに荒れ、警察が何度か介入する事態となっている。イタリアの2選手が退場となった試合は、2-0でチリが制している。

◆9位 パトリック・バチストンの重傷(1982年スペイン大会)

西ドイツ対フランスの準決勝で、フランスのDFパトリック・バチストンは、西ドイツのGKハラルト・シューマッハーと衝突した際にラフプレーを受け、歯を折られたうえに脊椎を骨折。昏睡状態となった。だが主審はシューマッハーに対し、イエローカードすら出さなかった。
 
◆8位 アイルランド代表のサイパン事件(2002年日韓大会)

大会前のサイパンでのキャンプ中、アイルランド代表の主将ロイ・キーンとミック・マッカーシー監督が衝突。インタビューでの監督批判に加え、たびたび指揮官に対して暴言を吐いたキーンが帰国を命じられた。アイルランドはこの大会、グループリーグを突破してベスト16進出を果たしている。

◆7位 スアレスの“セービング”(2010年南アフリカ大会)

準々決勝のガーナ戦で、ウルグアイ代表のルイス・スアレスが、延長後半の終了間際にドミニク・アディアーのシュートを両手でブロック。スアレスは一発退場となったが、ガーナがPKを外したことで生き延びたウルグアイは、その後のPK戦を制してベスト4に駒を進めた。ちなみに、スアレスはその4年後のブラジル大会でも、グループリーグ最終節のイタリア戦でジョルジョ・キエッリーニの肩にかみつき、長期の出場停止処分を科されている。
 
◆6位 決勝前夜のロナウドのトラブル(1998年フランス大会)

準決勝までに4ゴールを挙げ、王国ブラジルのエースとしてファイナルでの活躍も期待されていた“怪物”ロナウド。だが試合当日、最初に明かされた出場メンバーの中に彼の名前はなかった。結果的にはスタメン出場をしたが精彩を欠き、ブラジルは開催国のフランスに0-3で完敗した。のちにロナウドは痙攣を起こしていたことが明らかになっている。

◆5位 マラドーナのドーピング違反(1994年アメリカ大会)

ナポリ時代の薬物使用によるブランクを経てアルゼンチン代表に復帰したディエゴ・マラドーナは、初戦のギリシャ戦で豪快なシュートを決めた。だが、2試合を消化したのちのドーピング検査で禁止薬物の陽性反応が検出されたことが明らかになり、大会から追放された。15か月の出場停止処分を科されている。

◆4位 マラドーナの「神の手」(1986年メキシコ大会)

言わずと知れた伝説のゴール。イングランドとの準々決勝で、ピーター・シルトンと競り合いながらマラドーナが手で押し込んだそれは、サッカーの歴史においてもっとも物議を醸したゴールのひとつとなった。みずから「神の手に助けられた」と話したマラドーナは、同じ試合で「世紀のゴール」と言われる伝説の5人抜きも見せている。
 
◆3位 ジェフ・ハーストの“ゴール”(1966年イングランド大会)

イングランド対西ドイツの決勝、2-2のタイスコアで迎えた延長前半11分に、イングランドFWジェフ・ハーストのシュートがクロスバーを叩いた。真下に落ちたボールがゴールラインを割っていたかどうか、主審は副審に確認を求めたうえで、得点を認めた。ゴールラインテクノロジーが採用されている現代であれば、どのように判定されていただろうか……。このゴールがこの日2点目となったハーストは、延長後半にも1点を加えてハットトリックを達成。イングランドはこれまでで唯一の優勝を遂げている。

◆2位 ジネディーヌ・ジダンの頭突き(2006年ドイツ大会)

イタリアとの決勝戦でPKを決め、先制点を挙げていたジダンは、1-1のタイスコアで迎えた延長戦で、挑発してきたマルコ・マテラッツィの胸のあたりに頭突きを見舞い、一発退場に。大会MVPに選ばれたジダンだが、現役最後の試合を不名誉な形で終え、フランスもPK戦の末にイタリアに敗れた。

◆1位 アンドレス・エスコバルのオウンゴール(1994年アメリカ大会)

前評判が高かったコロンビアは、ルーマニアとの初戦を1-3で落として迎えたホスト国アメリカとの第2戦で連敗し、グループリーグ敗退という結果に終わった。アメリカ戦でオウンゴールをしてしまったアンドレス・エスコバルは、帰国後に外出先で射殺されている。『Daily Mail』紙はこの事件を「W杯史最大の悲劇」と称した。