誰もが恋してむくわれない…普通の人々のドラマを描くチェーホフの傑作『かもめ』に、気鋭の若手演出家・熊林弘高が豪華演技派キャストと挑む。女優志望のニーナに満島ひかり、その恋人で劇作家志望のトレープレフに坂口健太郎、その母である大女優アルカージナ(佐藤オリエ)の年若い恋人で、ニーナが恋心を抱く人気作家のトリゴーリンを演じるのが、田中 圭。毎年コンスタントに舞台への出演が続く田中だが、インタビュー中に飛び出したのは「舞台はあんまり好きじゃない」という予想外な発言だった…!

撮影/宮坂浩見 取材・文/江尻亜由子
スタイリスト/山本隆司 ヘアメイク/北村典雄        



「熊ちゃんと満島ひかりさんに呼び出されて…」



――熊林さんの演出と実力派キャストの競演が話題になっている本作ですが、まずは田中さんが出演されることになった経緯から教えてください。

熊ちゃんからオファーをいただきました。熊ちゃんのことは好きだし尊敬しています。一緒にやっていてすごく楽しいです。けど今回は、正直なところ最初は……やだなぁって。

――やだ!?(笑) それはどういった理由から…?

熊ちゃんとは一昨年の『Tribes』、去年の『夜への長い旅路』と、3年連続になるんです。ひとりの演出家と続けて何回も一緒にやるっていうのは、どうなんだろうなぁって。それに舞台は年に1本にしようって決めています。

――今年は春に、白井 晃さん演出の『夢の劇』に出演されていますが、基本は年1本と決めているんですね。

それなのに、もう1本熊ちゃんとやるっていうのはどうなんだろうなぁと思って、ずっとお断りしていたんです。そもそも前回の『夜への長い旅路』のときも、食事しながら、満島真之介くんと熊ちゃんに出てくれと言われて。

――田中さんは断っていたのに、ふたりで説得に来られたんですよね。

そうなんです。やっぱり面と向かってあのふたりに「一緒にやろうよ」って言われてしまうと、「わかったよ!」って言うしかないというか(笑)。なので今回は事務所にも「断ってね」って言っていて、固い決意で断り続けていたんですよ。それなのに、熊ちゃんと満島ひかりさんのふたりから直接言われてしまったので。



――満島姉弟そろって同じ方法で(笑)。

熊ちゃんと満島ひかりさんから「飲んでるからおいでよ」って連絡が来て、「あ、行く行くー」って行ったら、いつのまにか「出てよ」って話になって…。「出てよ」っていうより……「出ろよ」(笑)。それで僕も、「わかったよ、やるよ!」とお返事しました。

――ちなみに、舞台を年1本にすると決めている理由は…?

今の自分が舞台だけをやりすぎるのもどうなんだろう…?っていうのが正直あって。それよりは最低でも年1本は確実に舞台をやりつつ、その1本をどこで、誰とどういうふうに取り組むかをきちんと考えたいなと思っています。…稽古は嫌いなんですけどね(笑)。

――えっ、そうなんですか!?

実際にやると決まって、チラシができあがってくるときには楽しみな気持ちのほうが強くなっています。こういう方たちと一緒にできるのは、すごく幸せなことだなと思っています。今は全然イヤな気持ちはないですが、ただ、やっぱり出演を決めるまでは…。なるべく、やりたくねぇなぁ…って(笑)。



――さきほど取材前に、原作の文庫本をパラパラとめくっていましたけど、まだ読まれてないですか?

まだ読んでないです。ストーリーもふわっとしか知らないし、自分の役どころもわかってないです…。何年か前に(生田)斗真くんが舞台でやっていて、観に行けなかったのですが、なんとなく色恋があるということは知っています。

――熊林さんに説得されるときに「こういう物語で、こういう役を演じて欲しい」と言われたわけではないんですね。

一緒にやろうよ、という感じでしたね。僕は「誰と一緒にやりたいか」っていう「人」で決めるので、役とかを聞いちゃうと、逆に「ヤダ!!」って言っていたかもしれない。しかも超スロースターターなので、稽古が始まってから、ようやくエンジンがかかってくるタイプです。稽古の直前まで、台本は読まないです。

「いっぱい稽古をしたら上手くやれるんですか?」



――『Tribes』『夜への長い旅路』と熊林さんの演出を受けられていますが、どういう印象ですか?

うーん……。俳優としては、すごく楽しいんですが、観に来る方が楽しいかどうかは、ちょっとわからないですよね。

――俳優として楽しいというのは、どういうところですか?

熊ちゃんが一番嫌いなのが、ウソをつくこと。ウソっていうのは“芝居”をしちゃうことなんです。唯一それだけはすごく怒るんですよね。それを求められる側としてはプレッシャーでもあるんですけど、役者がその世界に違和感なく生きていられるようにしてくれるから、そこがすごく楽しいです。

――田中さんはよく「役になるんじゃなくて、役として生きたい」とおっしゃってますよね。その感覚がハマる演出家さん、ということなのでしょうか。

そうかもしれないですね…。僕もどうして熊ちゃんのことが好きなのか、よくわかっていないです。でも、あの方の演出を受けていると、自分では気づかないところの扉を開いてくれる気がする。あと、稽古はそんなにやらない。そこが一番好きかも(笑)。



――稽古時間は、かなり短いそうですね。

ホントに短い。でも、その1回に集中させる力がスゴいんですよね。

――演出法としては、「こうやって」という具体的な指示はなく、熊林さんの説明から役者さんたちが汲み取っていく、みたいな感じなんですか?

そうですね。そっちのほうが多い気がします。熊ちゃんの話を自分の中で噛み砕きながら、答えを探ろうとする感じ? 僕、そういうのはわりと好きなのかも。

――ヒントが散りばめられていて、拾い集めて組み立てるという。

そうそう。なので地頭がいい人や勘が鋭い人は、熊ちゃんの演出がハマると思います。あと、稽古でも自分が出てないシーンは観ることができないんです。

――えっ、観せてもらえないんですか?

観せないんですよ。まだ台本を読んでないからわからないですけど、今回の舞台で僕が出ないシーンがどれだけあるか、要チェックだなって。

――それは、出番がなければ稽古も出なくていいから、っていうことですか(笑)。

だって、稽古に出なくていいんですよ(笑)。『夜への長い旅路』でも、僕の出番はそんなに長くなかったんです。ずっと舞台上にいるから結果的には出てることになるんですけど、セリフはないので、稽古には参加してないシーンのほうが多いんです。

――その場にいない役の人は、そこで起きていることを知らないはずだから…みたいな理由で観せないようにしているんですかね…?

いや、たぶん何も考えていないと思います(笑)。



――そうすると、通し稽古のときが楽しみですね。

めっちゃ楽しみですよ。だから、熊ちゃんの稽古は飽きない。稽古も短い。短すぎて途中から「これ、間に合うのか!?」「もっと稽古やってくれ!」って焦り始めるんですけどね(笑)。ゲネ(本番直前に舞台上で行う通しリハーサル)でド緊張します。

――えー…!

もう勝手に自分で自分を追い込んでいかなきゃいけないんです。でもそれを熊ちゃんに言うと「稽古なんていくらやっても変わらないからいいんですよ」「じゃあいっぱい稽古やったら上手くやってくれるんですか?」って。

――(笑)。

そう言われたら、「そうっすよねー」って(笑)。

――では、今回の演出で楽しみにしていることはありますか?

今回は登場人物が多いんですよね。僕自身、あんまり大人数の舞台での経験がないんです。

――しかも田中さん演じるトリゴーリンは、いろんな人と絡む役ですもんね。

えっ、そうなんですか?

――そうですよ。思ったり思われたりする、大事な役どころです。

……(しばらく固まる)。あぁ、そういうパターンのヤツか…。でもまぁ、熊ちゃんがこの人数をどうさばくのかは楽しみですね。「はじめまして」の方もいらっしゃるので。



――満島ひかりさんとは、これまでにも共演されていますね。

昔から何度も共演してます。舞台も(『鎌塚氏、すくい上げる』など)何度もやっていますね。熊ちゃんと彼女が仲がいいのは知っていますが、かといって僕自身はそんなに知らないんですよ。普通に「よっ!!」って挨拶する程度ですね。

――お芝居の面ではいかがですか?

もちろんパワーがすごくある人だから、一緒にできるのが楽しみです。

「この夏は、家族と思いっきり遊んでます!」



――もし俳優じゃなかったらこういうお仕事をしたかったな…っていう職業はありますか?

数年前までは、そういう質問には「板前さん」って答えていました。

――なぜ板前さん?

単純に、一番長く続いたバイトが寿司屋さんだったからです。なぜか続いて、そこの大将もカッコよかったんですよね。あと最近思うのは、俳優をやっていなかったら僕、たぶんもう死んでるんじゃないかなと。

――どうしてそう思うんですか…!?

俳優以外、何もできないから、生きていられないと思うんですよ。だから良かったです、俳優という仕事があって。



――舞台だけではなく、映画やドラマとさまざまな作品に出演されていて、毎日お忙しいと思うんですが、お休みの日はどのように過ごすことが多いですか?

家族と思いっきり遊んでます。なかなかいい家族サービスをしてますよ(笑)。

――家族サービス!

遊園地に行ったり、カレーを食べるためだけに山梨に行ったり、横須賀までバーベキューをしに行きました。「スイカ割りを教えてやる」って、トップバッターでスイカ割りをした瞬間、足をケガするとかね(笑)。次は花火をする予定です!

――夏らしいイベントがいっぱいでいいですね。お休みの日でも朝から動くほうですか?

基本は昼過ぎです。昼頃に起きて食事をして、そこから出かけています。イベントがない日でも、僕が行ったほうが重い荷物を持てたりするから、奥さんの買いものに付き合ったりしていますね。至って普通の毎日ですよ。

――せっかくのお休みだから、ひとりで遊びに行こう、とかはないんですか?

まったくないですね。ジムは行きますけど、基本、ひとり行動ができない人なんです。

――そういえば以前、「一緒に食べる人がいなければ食事はしない」とお話されてましたよね。

そうそう(笑)。なので休みの日に家族以外に空いてる人がいれば、予定を組んで、とかできるんですけど。友だちと休みを合わせるのが、なかなか難しいですね。




――そして先日、32歳のお誕生日を迎えられたということで。おめでとうございます!

ありがとうございます。

――32歳の目標って何かありますか?

仕事における目標は、多すぎて何を言えばいいかわからないですけど…ホントにひとつひとつ、着実に全力を出し、ワンランク、ツーランクと上がっていかなきゃなって思っています。そこは、がんばります。

――ではプライベートでの目標というと…?

プライベートは……32歳。うーん…。あ、浪費癖を直します。

――浪費癖があるんですか?

……割り勘ができないんですよ。しかも酔っぱらうとおごってしまうクセがあって。それを知っている友人が集まると、あいつらまったく払わないんですよ。

――役者仲間たちですか?

役者もいれば、昔からの友だちもそうなんですよ。ホントにね、まあぁぁぁぁ、払わないっ!!(笑)相手のほうが僕より年上だったりするんですよ? あと、後輩とかだと当然、僕が全額出しちゃうんですけど、連日連夜それをやっていると「やっべえな、どうしようかな」って。後輩にも少しは払ってもらうとか、そういうのをちょっとね、そろそろできるようにならないと。それが、32歳の目標です(笑)。



【プロフィール】
田中 圭(たなか・けい)/1984年7月10日生まれ。東京都出身。O型。2003年にドラマ『WATER BOYS』(フジテレビ系)で注目を集める。その後もNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』、『5→9〜私に恋したお坊さん〜』(フジテレビ系)『家族ノカタチ』(TBS系)、映画『びったれ!!!』『図書館戦争』シリーズなど、多数の作品に出演。2007年の『死ぬまでの短い時間』で初舞台を踏み、その後も年に数回のペースで出演が続いている。10月29日(土)より東京芸術劇場にて舞台『かもめ』に出演する。


■舞台『かもめ』公式HP
https://www.geigeki.jp/performance/theater124/

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