プラスワン・マーケティングが開発したFREETELの「雅」。低価格ながら性能や質感が高く、シリーズ名の「SAMURAI」や"日本品質"を全面に押し出したAndroidスマホのファーストインプレッション。

はじめましての方も、そうでない方もいらっしゃると思いますが、今週から、Engadget日本版で連載を持つことになった、ケータイジャーナリストの石野純也と申します。このコーナーでは、筆者が実際に見てきた中で、気になったスマホや、スマホの周辺機器などを紹介していく予定です。スマホ業界的に、その製品がどのような意味を持つのかというところまで、掘り下げていこうと思います。更新は基本週1回です。

【ギャラリー】FREETEL 雅 MIYABI (9枚)


第1回目として取り上げるのは、プラスワン・マーケティングが開発したFREETELの「雅」。FREETELはレイヤー2接続のMVNO事業に本格参入したあと、ブランド名を小文字の「freetel」から大文字の「FREETEL」に変更していますが、これはその第1弾となるAndroid端末で、シリーズには「SAMURAI」という少々仰々しい名前がつけられ、"日本品質"であることがうたわれています。

SAMURAIシリーズの第1弾となる「雅」

フレームの色が異なる3色展開で、ゴールドとホワイトは背面が同じになる
雅は、スペックの割に、とにかく安いことが特徴です。価格は税抜きで1万9800円。にも関わらず、CPUは1.3GHz駆動のクアッドコア、メモリ(RAM)は2GBで、ディスプレイが5インチのHD(720×1280ドット)です。OSにはAndroid 5.1を採用。その上で、ストレージ(ROM)を32GBも搭載しており、同価格帯のスマホと比べると、スペックは豪華です。

たとえば、近い同じ価格帯の商品に、ASUSの「ZenFone2 Laser」がありますが、こちらは楽天モバイルで販売されている最安モデルだと、ROMが8GBしか搭載されていません。16GB版もありますが、価格は2万円台後半になってしまいます。同様に、2万円台半ばで販売さているファーウェイの「P8lite」も、ROMは16GBです。CPUこそオクタコアでコア数では雅に勝っていますが、クロック周波数は1.2GHzです。

プラスワン・マーケティングが公開した、近い価格帯の機種との比較

ASUSやファーウェイと言えば、世界的に実績のあるSIMフリースマホメーカーですが、それを上回る価格で、同等かそれ以上のスペックを実現したのが、雅という端末の位置づけです。ZenFone2 LaserやP8liteは、価格の手ごろさと機能の高さのバランスが評価され、SIMフリー市場ではヒットしているモデルですが、雅もその一角に名を連ねるかもしれません。

実際、実機に触れてみましたが、レスポンスは思いのほか良好でした。ホームアプリのスクロールがスムーズなのはもちろんですが、機種によっては動作に引っかかりが生じてしまうGoogleマップのようなアプリでも、滑らかに動きます。初期設定のままの端末で、実利用環境ではなかったことは当然割引いて見る必要はあるものの、1万9800円とは思えない動きのよさを体感することができました。

レスポンスはよく、パワーの必要なアプリもスムーズに動いた

個人的に「いいな」と思ったのが、バッテリーを取り外せること。フレームが金属になっているため、一見するとはめ込み式に見えますが、実はバッテリーカバーは取り外すことができます。プラスワン・マーケティングの取締役、大仲泰弘氏によると、このバッテリーカバーの裏側には、放熱のためのシートが仕込まれているとのこと。負荷のかかりがちな処理をしても「熱くならないというとウソになってしまうが、そこまでは熱くならない」という特徴があります。

バッテリーが取り外せるほか、バッテリーカバーには放熱シートが仕込まれている​

カメラも1300万画素で、実際に撮ってみた限りでは、まずまずの画質です。むしろ、この価格帯の端末としては、上出来な部類に入るのかもしれません。

カメラも、このクラスのスマホとしては十分​

この価格で、LTEに対応しており、しかも「ドコモとソフトバンク、両方のプラチナバンドが使える」のもメリットと言えるでしょう。MVNOはほとんどがドコモから回線を借りていますが、この端末なら、ワイモバイルでもきちんと利用できるというわけです。

ドコモの800MHz帯と、ソフトバンクの900MHzの両方に対応​

しかも、デュアルSIM仕様になっており、どちらのSIMカードで通信するのかは、手動で切り替えることができます。LTEで通信できるのはどちらか一方だけですが、2枚SIMカードを入れておき、データ容量を使い切ったら別の方に切り替えるようなこともできます。より便利なのが海外に言ったとき。ほとんどの国でGSMが使えるため、国際ローミングしている日本の電話番号で待受けしつつ、データ通信は現地の割安なSIMカードで行うといったことができます。

デュアルSIM仕様で、SIM1とSIM2は切り替え可能​

ホームアプリは、素のAndroid、英語圏だと「Stock Android」と呼ばれるものに近く、あまりカスタマイズはされていない印象ですが、雅ならではの機能も搭載されています。1つが、「ジェスチャーアンロック」。スリープ状態の端末の画面の上で、文字を描くと、それに対応したアプリが起動します。初期設定ではいくつかのアプリが割り当てられていますが、これは変更も可能。よく使うアプリを設定しておくと、便利そうです。ほかにも、手袋をつけたまま操作できる「手袋モード」などを搭載しています。

画面にアルファベットを描いて、スリープモードからアプリを一発で起動する
「ゼスチャーアンロック」

プラスワン・マーケティングによると、こうした機能の一部は、同端末のチップセットである「MediaTek」の「MTK6735」によって実現しているものだといいます。中国で販売されている安価な端末に採用されることの多いMediaTekですが、日本では、SIMフリースマホも多くが、クアルコムのSnapdragonや、インテルのAtom、ハイシリコンのKirinを搭載しており、MediaTekはまだまだ少数派。そのため、チップセットの提供する機能が差別化につながっています。安価に作れて中国市場などで実績があるチップセットだけに、今後、SIMフリー端末を中心に、採用が広がってくるかもしれません。

実機を触った限りでは、サクサク動いて、デザインもシンプルにまとまっていました。この価格とは思えないほど、金属の質感も高かったのが印象的です。一方で、筆者が触れた端末は、あくまでサンプル品。量産機で、この質を保てるかが勝負になりそうです。

特に、FREETELは、過去に何度か、量産機での品質に"ミソ"がついています。延期を繰り返した末にようやく登場した「Simple」は、個体によっては裏ブタが外れる、USB端子のキャップが緩いなど、ネット上には不満が噴出しており、「Simple」ではなく「Sample」という不名誉なニックネームまでつけられてしまう始末。Androidでも、「nico」のように不具合が多かった端末があります。

ベンチャー企業で、価格も安いので仕方がないという見方もありますが、同社は「日本品質」をうたっているメーカー。特に雅は、SAMURAIシリーズに属する機種だけに、ユーザーの期待感はいやがおうにも高まります。ブランドを刷新したあと初めて発売する、Androidスマホの初号機だけに、品質面には気合いを入れて作ってほしいところ。きちんとした量産機が店頭に並ぶようになれば、SIMフリー端末の注目株になれるかもしれません。同社取締役の大仲泰弘氏によると、「まだ発売日は言えない」とのことですが、実機を報道陣に披露したことからも、完成も間近に迫っている様子がうかがえます。

【ギャラリー】FREETEL 発表会 2015 (30枚