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インフラはシステムが命

溜池通信vol.429 Biweekly Newsletter October 30, 2009 双日総合研究所 吉崎達彦

前原国交相の「羽田ハブ化」発言により、一躍有名になった空港の「ハブ・システム」。

これってどこの誰が考案したアイデアか、ご存知でしょうか。よろしければ、ウィキペディアで「フェデックス」(フェデックス・コーポレーション)を検索してみてください。この逸話、ちょっと面白いのです。

ベトナム戦線で兵站の実務を体験した海兵隊員フレッド・スミスは、帰国後に入学したビジネススクールで、「ハブ・システムによる運送業の効率化」というレポートを書き上げ、自信満々で提出します。ところが担当教授の採点は「C」。すっかり頭にきたスミスは郷里に帰り、1971 年に運送会社フェデラル・エクスプレス社を立ち上げます。そしてテネシー州メンフィス国際空港を拠点とし、「米国主要25 都市翌朝配達サービス」を開始します。

これが大ヒットし、折からの航空業界の規制緩和も手伝って事業は急拡大。今では”fedex”という言葉は、「宅配便」を指す普通名詞になってしまいました。
このときのレポートは、今もフェデックス本社ビルに飾ってあるそうです。同社としては「C」をくれた教授に感謝すべきかもしれませんね。仮に評価が「A」であったら、フレッド・スミスはそれで満足してしまい、本気でアイデアを実践しようとはしなかったかもしれませんから。

思うにインフラというものは、「ハード」と「システム」と「ヒト」の3 要素に分解することができます。おそらく「羽田をハブ化する」という話が出たときに、人々が真っ先に考えるのはハードのことで、「まずい、それではウチの空港にカネが回ってこない」的な発想をしてしまいがちです。でも、大事なのは意外と「システム」なんだと思います。「成田は国際、羽田は国内」という役割分担をしておいて、両空港を短時間で結ぶ交通手段がない、なんてのはシステム構築失敗の最たるものではないでしょうか。

日本という国は、ハードへの金をケチって中途半端なものを作ってしまい、システムは利害調整が出来なくて不合理極まりないものとなり、ものすごく不利な条件ができてしまうのに、ヒトが献身的な働きをするから物事が正常に動いている、ということが多い国だと思います。聞くところによれば、成田空港はもともとハードに限界がある上に、重要な部分は旅客にとられ、貨物の運搬はそれこそ空港で働く人たちの職人技で支えられているのだそうです。「こんなこと、日本以外では不可能でしょうね」などという関係者の評価を聞いたりすると、喜んでいいのか哀しんでいいのか分からなくなってしまいます。

その点、アメリカという国は、どこへ行ってもハードは老朽化しているし、ヒトもあまり勤勉でないようなのですが、システムが上手に作ってあるから意外と快適であったりします。ハブ・システムみたいなものを考案するのは、だいたいがアメリカ人です。「城を作るときは五角形にせよ。さすれば見張りが5 人で済む」みたいな発想ができてしまうのが、あの国の面白いところだと思います。
9他方、中国はハード重視の国だと思います。空港でも道路でも工業団地でも、まことに堂々たるインフラをぶっ建てます。でもシステムは混乱していて、ヒトも質より量みたいなところがあって、結果として非効率な経済となります。「後宮の美女三千人」みたいな贅沢な城を作っておいて、北方民族が侵入してくると一夜で陥落、てなことがかの国の歴史ではめずらしくありません。

日本の場合は、ハードにはお金をかけられないものとあきらめるとして、せめてもう少しシステムに配慮をする必要があると思います。でないと、いつまでたってもヒトがラクを出来ないではありませんか。少子高齢化が進む中で、永遠にハードワーキングではいられない。システムの向上のためにも、既得権の見直しが急務ではないか。しがらみの少ない民主党政権であれば、そんな形の経済政策を目指すという手もあると思うのです。

* 次号は2009 年11 月13 日(金)を予定しています。
編集者敬白
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本レポートの内容は担当者個人の見解に基づいており、双日株式会社および株式会社双日総合研究所の見解
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〒107-8655 東京都港区赤坂6-1-20 http://www.sojitz-soken.com/
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溜池通信

吉崎達彦(かんべえ)

双日総合研究所副所長主任エコノミスト。

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