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【眼光紙背】警察にできること、できないこと

赤木智弘の眼光紙背:第39回

秋葉原で起きた無差別殺人事件の影響で、各地の繁華街で警察官が警棒をむき出しにして警備をする姿がよく見られるようになった。
私などは物々しく過剰な警備だなと思うのだけれど、マスコミの過剰報道によって不安を抱え込んでいる人たちには、それが頼もしく見えることもあるのだろう。
しかし、勘違いしてはいけないのは、警察がいくら過剰な警備体制を敷こうとも、通り魔殺人の発生そのものを阻止することはできないということだ。
それこそ例の秋葉原で無差別殺人が起ったとき、中央通りの歩行者天国には、警官が常に徘徊、もとい監視の目を光らせていたのである。

その当時、秋葉原では大人数で踊ったり、下着を露出するような過剰な「パフォーマー」が増え、風紀を乱しているという問題意識があり、そうしたパフォーマーがたむろしないように、歩行者天国の開催日は警察と町内会が協力して常に警戒にあたっていた。
また、職務質問についても、アーミールックなどのいかにもな格好をしたオタクにはすぐにカバンを開けるように要求し、キーホルダー程度の十徳ナイフや小型のハサミ、そしてドライバーといった、日常のちょっとしたシーンで使うような工具を見つければ連行して調書をとるという、警察による「オタク刈り」も常習化していた。
そうした情報は、アキバ系のニュースサイトを通じて、その実態はネット内に知れ渡っていた。もちろん、無差別殺人事件の容疑者だって、その情報を知っていたはずである。

しかし、それにも関わらず事件は起きてしまった。
警察がいくら過剰に警備し、歩いているオタクを職務質問しようと、レンタカーで交差点に突っ込んだ容疑者の犯罪そのものを阻止することはできなかった。
だが、さらに勘違いしてはいけないのは、警察官が秋葉原を巡回していたおかげで、被害が最小限に食い止められたのも、また事実である。この点を過小評価するべきではない。

私たちが警察権力というものを考えるときに頭に入れておくべきなのは、警察は確かに犯罪が発生する瞬間を食い止めることはできないが、一方で犯罪の広がりをとどめることはできるということである。
警察権力を信用している人は、警察に犯罪そのものの発生防止を期待し、警察による過剰な権力行使を承認しがちである一方、警察権力の暴走を危惧する人たちは、警察の被害抑止能力を軽視し、威嚇発砲程度のことでネチネチ文句を言いがちである。
そうではなく、警察のできることとできないことを正しく理解して、必要な権力を認めながら、権力の過剰を認めない姿勢こそが、犯罪被害を防ぎながらかつ、警察が民主主義社会における保安装置として正しく機能することに繋がると、私は考えている。

(追記)「もともとの犯罪の発生を防ぐ」ために、何かができる人がいるとすれば、それは警察ではなく、社会の中で犯罪に走らざるを得ない人を減らす為の提案をすることができる、社会学者や経済学者。そして心理学者やジャーナリストではないかと考えているのだが、少々手前みそが過ぎるだろうか?


赤木智弘(あかぎ・ともひろ)…1975年生まれ。自身のウェブサイト「深夜のシマネコ」や週刊誌等で、フリーター・ニート政策を始めとする社会問題に関して積極的な発言を行っている。近著:「若者を見殺しにする国

眼光紙背[がんこうしはい]とは:
「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
本コラムは、livedoor ニュースが選んだ気鋭の寄稿者が、ユーザが生活や仕事の中で直面する様々な課題に対し、「気付き」となるような情報を提供し、世の中に溢れるニュースの行間を読んで行くシリーズ。バックナンバー一覧
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