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【眼光紙背】有害な携帯コンテンツへの規制

MiAUの眼光紙背:第11回

2007年の後半から、有害情報規制の動きが急速に起こっています。

大まかにいって3つの動きがあります。ひとつの動きは、違法なものが放置されないよう、きちんと対処していける制度にしよう、というものです。もうひとつは、出会い系サイト規制法改正に向けた動きです。そして、一番大きな話題となっているのが、未成年、主として18歳未満の携帯電話のネット機能に対するフィルタリング利用原則化です。

12月10日に、総務省が携帯電話・PHS事業者に青少年が使用する携帯電話についてフィルタリングサービスの利用を原則とするべく要請しました(http://www.soumu.go.jp/s-news/2007/071210_4.html)。これは、新規利用者については未成年、既存契約者については18歳未満の契約者や利用者について意思確認を行って、利用者と親権者が望まない場合を除いては原則としてフィルタリングする、というものです。

ここに至る背景としては、青少年の携帯電話のネット利用についてのバッシングといってもいい動きが2007年前半からありましたが、11月に入って総務省に「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」が設置され、これに次いで内閣府の教育再生会議が小中学生の携帯電話フィルタリングの義務付けを提言していました。

各社がすでに開始しているフィルタリングサービスでは、厳しいものでは「公式サイト」のみのホワイトリスト式の閲覧に限定され、ブラックリスト式の場合でも、ネット以外のメディアでもよく言及される「有害情報」に加え、コミュニティサイトやSNS、掲示板サイトなどは全て一律にアクセス制限されることになりました。各社のフィルタリングサービスでは、いまのところ、ブラックリストの内容を選択できず、各端末単位で例外として許可するサイトを設定することもできません。

直前にマスコミにリークがあったこともあり、発表後には大量の未成年ユーザーを抱えて躍進してきたSNS「モバゲータウン」の運営会社のDeNAの株価が暴落するに至りました。DeNAは、携帯ネットサービスへのバッシングやモバゲータウンの関係する事件の報道のなか、自主規制強化を打ち出していましたが、間に合わなかった形です。総務省の携帯電話事業者への要請後、モバイル・コンテンツ・フォーラムが新たに設置する第三者機関による審査によってフィルタリング対象外としてもらうという対応策を発表しています。

年が明けて各携帯電話事業者が要請を受けて原則化するサービス内容を発表しましたが、自社サービスの中で一番厳しいものにあわせるということで、ソフトバンクモバイルとウィルコムはブラックリスト式ですが、NTTドコモとKDDIは公式サイト限定方式となりました(NTTドコモは従来からブラックリスト式を選択でき、KDDIは新たにブラックリスト式を選択肢として用意)。

その後、1月21日に慶應大学で行われたシンポジウムでは、「健全」な事業をしてきたと自負する携帯コンテンツ事業者の強い不満が表明されました( http://news.livedoor.com/article/detail/3476231/http://journal.mycom.co.jp/articles/2008/01/24/filtering/... )。これを受けてか、NTTドコモが1月23日に利用者のカスタマイズが可能になるよう検討すると発表しています。

こうして「未成年者フィルタリング原則化」の大きな流れができ、コンテンツ事業者も主張するべき点は主張しつつそれに対応していく流れができつつあります。しかし、この方向が果たして正常な判断のもとに行われてきたのでしょうか。

まず、日本は「子どもの権利条約」の批准国です。子どもの権利条約では、締結国が「児童の福祉に有害な情報及び資料から児童を保護するための適当な指針を発展させることを奨励する」としていますが、それは、子どもの表現の自由に留意することが前提となっています。また、条約では、子どもの意見表明権や、「自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の手続において」の意見聴取の機会の保障を定めています。総務省の拙速な要請は、権利主体としての未成年ユーザーについてどれだけ配慮していたのか、疑問です。

また、「子どもからは携帯を取り上げるべきだ」とする根強い意見があり、子どもに携帯電話を持たせない運動を自治体レベルでやっているところまであるなか、このような規制に至っているのですが、はたして、「携帯サイト」が全体としてそこまで危険なものなのか、疑問です。

先のシンポジウムでも、個々の大手の健全運営を自負するサイトでの状況の報告がありましたが、マクロな状況でみても、例えば、少年の福祉を害する犯罪(福祉犯)の被害少年の数は、1979年の約1万5千人から1985年の約2万1千人まで増加した後減少を続け、ここ数年は7千人台で推移しています。警察庁の「出会い系サイト等に係る児童の犯罪被害防止研究会」の報告書では、児童買春の被害児童の半数が出会い系サイトで被害に遭っていることを挙げていますが、大きな流れとしては減少傾向にあるので、ネットが機会として利用されているにしても、ネットのせいで犯罪が増えているとは言えないのです。

「学校裏サイト」での「ネットいじめ」にしても、ネットが無ければ起きなかったはずのいじめが大量に発生したか、というと、よく分からないのではないでしょうか。また、「プロフ」サイトなどを使った子どもたちの開けっぴろげの交流もバッシングされ、「携帯電話で子どもにネットを自由に扱わせているのは日本だけ」という批判もありました。が、携帯電話のネット機能というデバイスに着目すれば、確かに普及が著しいのは日本の特徴ですが、コミュニケーションという観点では、海外では子どものネット利用は親の監視下やフィルタリングが当たり前、という主張はかなり疑わしいものです。

機能的に完全に同一ではないにしても、巨大SNSの MySpace や、そこへ貼り付けるブログパーツなどにもよく使われる写真共有サイトPhotobucket などには、10代と思われるユーザーがたくさんいて、かなり多くの個人情報を公開してコミュニケーションしています。Stickam や Buddypic といったサービスもそうでしょう(日本で問題になるのと似たように問題にする人達はいて、事業者も健全運用の努力はしているようです)。海外のサービスの状況をみれば、日本の未成年者のネット利用のあり方も、日本文化固有の部分はあるにしても、似たようなものではないかと個人的には思います。新しいネットサービスが作られれば、そのサービスアーキテクチャに規定された形で新しい文化が生まれ、それは言語を越えて共通性が高いのではないか、そんな気もします。そして、それに対してネガティブな形でここまで大騒ぎしているのは日本だけではないだろうか、というふうに思います。

シンポジウムでは、「親が子供のデジタル化のスピードについていけず、フィルタリングにすがろうとする状況もあるのではないか」と、総務省の岡村信悟氏も述べていますが、ネットが牽引する社会のフラット化、グローバル化、という状況に対するカルチャーギャップの問題もあるのではないかと個人的には感じています。

重大な犯罪被害をどう防止するべきか、といったことは、もちろん考えていく必要があることでしょう。しかし、私たちの、そして子どもたちの未来を真面目に考える、ということは、後の世代の創造性を、前の世代の想定内の範囲に制限することではないはずです。(崎山伸夫)

プロフィール:
MiAU 2007年設立。ネット上の世論を集約し、政策提言などを行う団体。著作権法関連の動きについて、ネットユーザが意見表明するためのサポートを行っていくことを目的として設立された。
公式サイト:MiAU

眼光紙背[がんこうしはい]とは:
「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
本コラムは、livedoor ニュースが選んだ気鋭の寄稿者が、ユーザが生活や仕事の中で直面する様々な課題に対し、「気付き」となるような情報を提供し、世の中に溢れるニュースの行間を読んで行くシリーズ。バックナンバー一覧
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