被害者が続々と声を上げている“性加害”問題。映画監督や俳優による許されざる行為には各所から非難の声が集まっているが、悪しき風習が蔓延るのは映画界だけではなかった。美しい女性を撮影する“写真家”によるあまりに醜く卑劣な手段とは―。

【写真】下着姿のモデルの背後から抱きつき、鏡越しに写真を撮る藤里氏

《嫌な思いをした事は数えきれないぐらいあります》

 4月13日、女優の水原希子が『文春オンライン』で“性加害”に関する自身の見解を発表した。

「映画監督の榊英雄さん、園子温さん、俳優の木下ほうかさんによる性行為の強要が明るみに出て、多方面で同様の被害を訴える人が続出。水原さんのコメントが発表された4月13日には、飲食店経営者による性加害も報じられました」(スポーツ紙記者)

カメラ雑誌で有村架純と連載も

 映画界にとどまらず、多くの被害者が声を上げ始めた性加害問題。非道な行いの数々が白日の下に晒される中、週刊女性編集部には新たな女性からの告発が寄せられた。

※性的暴力に関する記述が含まれます。

「写真家の藤里一郎は“写真展の撮影をする”と言って密室に呼び出し、最終的に襲う……という手口を、複数の女性に働いていました」

 そう語るのは、自身も被害に遭ったというグラビアアイドルのAさん。

 藤里一郎は、女性ポートレートを主戦場とする写真家。過去にカメラ雑誌で女優の有村架純との連載企画が掲載されたこともあり、歌手・May J.のライブに同行した経験もある。

 有名カメラマンが性加害を行っているのであれば、大問題。詳細を尋ねるべくAさんに取材を申し込むと、対面取材に応じ、恐怖と憤りが混ざった様子で経験を明かした。

「数年前に藤里が主催する写真スクールの生徒さんからオファーがあって、それを機に藤里の写真展の仕事を紹介されました。最初に被害を受けたのは、'20年11月。撮影は関東近郊にある旅館で行われたんですが、現場は密室で、いるのは私と藤里の2人だけ。“素の部分が撮りたい”という理由で一緒に酒を飲まされ、ベロベロになるまで酔わされました……」(Aさん、以下同)

 酒を飲む前から撮影は続いていたというが、Aさんが酔い始めると様子が変わった。

「ヌードを含む撮影でもあったので“脱いで”と言われて服を脱いだのですが……下着を外した途端、カメラを投げ捨てて抱きついてきて、胸をなめられました」

 密室で行われた蛮行は、これだけではない。

「浴室のシーンの撮影では、なぜか藤里まで服を脱いで同じ浴槽に入ってきたんです。“ダメです”と断っても“A、好き”と言ってきて……本当に気持ち悪かった。最終的に挿入されることはなかったものの、私が拒んでいるのに避妊具なしで性交に及ぼうともしてきました」

 Aさんは、仕事上の立場もあり、拒絶の姿勢を強く表すことができなかったという。

「写真展はすでに告知されていたので、ファンの方々のためにも撮影を中止するわけにはいかなかったんです。この撮影以降、LINEなどで一方的に好意を伝えられるようになり……」

指先を1本1本舐められる恐怖

 あからさまに断ることはできず、それとなくかわすようにしていたAさん。しかし、2度目の撮影でも、藤里の暴走は止まらず……。

「'21年2月、“撮影をしたい”と言われ、都内のシティホテルにデイユースで入りました。途中までは普通の撮影だったんですが、ベッドの上で下着姿のシーンになったとき、いきなり抱きついてきて鏡越しに2ショットを撮られました。そのまま“好きって言って”と言われ、応じなければ予定されていた写真展の話がなくなってしまうかもしれないと思い……。精神的にも肉体的にもつらい状態で、恐怖心から“好き”と返さざるをえませんでした」

 藤里にとっては、これが“撮影”なのだろうか。Aさんの恐怖は、まだ続いた。

「その後、カメラをソファに投げて、キスしようとしてきたので顔を背けたんです。そしたら、腕をつかまれ、指先を1本1本なめられ……。上手くあしらって逃げようとしましたが、なぜかパンツ姿になっていた藤里に、今度は上に乗られて下着越しに下半身を押し付けられました」

 度重なる性被害を受けたAさん。その後も藤里からの連絡は止まらず、返事をしなくてもメッセージが届き続けたという。

「当初は写真展のためにこらえていましたが、我慢の限界で……。《誤解を与えてしまったようで申し訳ないですが私は付き合っているつもりもないです》と、はっきり伝えました。すると、《僕はAのことが大好きでした。だから余計に想いが先走ってしまったのかもしれません》と。彼にとってはそうなのかもしれませんが、私が受けた行為は立派な性被害です……」

 この時点で、Aさんは藤里の写真家デビュー25周年を記念する写真展に向けすでに撮影をされており、藤里からは《25周年の作品もご協力いただけたら》と伝えられていたものの、結局その写真展のモデルは別の女性に変えられたという。

 そもそも、好意の有無は被害女性にとっては関係のないこと、しかし“好意”を盾にするのが藤里のやり口だという。

「“好きだよ”と繰り返し伝え、相手に本気の好意だと思わせて性加害を行うので、みんな訴えにくいのかもしれません……。同様の被害を、私はほかの女性からも確認しています」

 藤里の行いについて、彼が主宰する写真スクールの生徒から連絡がきたことも。

「性被害を心配するような連絡がきたので、事情を明かすと《やっぱり…》と返事が。生徒の間でも、ある程度認識されていたんだなと思いました。藤里から受けた被害について、Bさんという女性は訴訟を起こし、裁判で闘っているとも聞きます」

 性加害行為によって、藤里は現在係争中だという。詳しい事情を尋ねるべく、Bさんに電話で取材を申し込むと……。

「申し訳ありませんが、まだ係争中なので……。私の口からは、現時点では何もお答えできないんです。すみません……」

 そう言い残し、通話を終えた。

 Aさんの話が事実ならば、藤里の行為は間違いなく性加害にあたる。4月中旬、事実を確認するため藤里に電話で取材を申し込むと、後日、本人が対面での取材に応じた。

藤里カメラマンに性加害を直撃

─Aさんという女性が、性被害を訴えていますが。

「大前提として、恋愛関係にあったんですよ」

─Aさんは仕事上の立場もあり、強く拒めなかったと話しています。

「僕は“仕事をやるから俺と付き合え”とか、何かを強要したことはいっさいありません」

─Aさんは《付き合ってるつもりはない》とはっきり伝えているかと。

「それは、最後ですよね。都内のホテルでの撮影の日に僕は告白をちゃんとしていますし、そのときにAさんは“うん”と頷いてらっしゃったんですよ。僕としては、交際関係にあったという認識です」

─仮にそうだとしても、'20年11月の段階では交際していないことになりますが。

「僕の撮影距離はめちゃめちゃ近いので、撮影中に身体が触れることはあります。ただ、故意に身体を触る、胸をなめる、挿入しようとしたなんてことは、記憶にないです」

─浴室での撮影中、服を脱いで同じ浴槽に入ったことは。

「アングルの問題で浴槽に入ることはありますし、暑ければ服を脱ぐこともあります。ただ、仮に女性が嫌がっていたとしたら、絶対にやめます」

 撮影手法については、こんな話も。

「欲情して撮らないと、作品として何も伝わらないと思うんですよ。そういうふうに自分をもっていく部分はあります。だけど、実際に行為に及ぶことはありません」

 あくまで性加害はなく、一部の行為は交際関係のもとに行われたものだと主張する。

 しかし、Aさんはこの回答に対し怒りをあらわにする。

「彼の主張は、すべて嘘です。最初の撮影以降、一方的に好意を伝えられるようになり、どれだけ気持ち悪くても写真展を控えた立場からは強く断れず、ヘラヘラとかわすような態度をとってしまったのは事実です。それで誤解させてしまったかもしれませんが、異性として見たことは一度もありませんし、交際なんてしていません。

 ホテルで抱きつかれ“好き”と言うよう迫られたとき、彼にとっては告白だったのかもしれないけど、ほぼ裸の状態で権力も体格差もある人に言われてる私にとっては、脅しでしかなかった。藤里の記憶になくても性的な行為は間違いなく受けているし、近い距離で撮影しても、モデルに抱きつく理由がわかりません」

 両者の合意なき性行為は、いかなる背景があろうと認められない。一方的な感情を理由に相手の尊厳を傷つけるのは、紛れもなく“加害行為”だろう。