いかなるときも、テストから150%を発揮する――松岡禎丞、決して妥協しない声優論

芝居は天才。だけど、素顔は天然。

声優・松岡禎丞を知る多くのファンは、きっとそんなイメージを持っているだろう。

松岡といえば、キリト(『ソードアート・オンライン』シリーズ)に代表される正統派主人公から、ペテルギウス(『Re:ゼロから始める異世界生活』)のような狂人キャラまで、幅広いキャラクターをごく自然に演じ分ける文句なしの実力派声優。

そんな松岡に対し、芝居についてとことん掘り下げていったらどんな言葉が飛び出すのか? 浮かび上がってきたのは、「松岡禎丞が愛される理由」そのものだった。

象徴的だったのは、最後に「声優になるために大切なことは何か?」と問われた際の挙動だ。「声優になりたい人も読むんですもんね……」とつぶやいたのち、松岡は40秒もの長考に入った。それは質問したこちらが申し訳なさを感じるほどの真剣さであり、同時に彼の人柄が滲み出た瞬間でもあったと思う。

もしかしたら松岡は、真面目すぎるがゆえに天然に思われるだけなのかもしれない。

撮影/小嶋淑子 取材・文/岡本大介
スタイリング/久芳俊夫(BEAMS)
ヘアメイク/福田まい(addmix B.G)

『エグゼロス』のエロは、あくまで副産物なんです

放送中のTVアニメ『ド級編隊エグゼロス』ですが、すごくインパクトの強いタイトルですよね。第一印象はいかがでしたか?
僕はオーディションを受けるに当たって初めてこの作品を知ったんですけど、「『ド級“変態”』? 何言ってるの?」って、最初は理解できませんでした(笑)。

ただ、ちゃんと原作や台本を読んでみると、主人公たちは真面目にキセイ蟲(本作の敵)と戦って世界を救おうとしているんですよね。どういうわけか技を放つと服が弾け飛んでしまうだけで(笑)。お風呂シーンなどえっちいシーンも多いんですけど、それは同居生活における一場面ですから。そう考えるとこの作品の本質って、決してコメディではないのかなと理解してオーディションに臨みました。
パッと見はラブコメ&ハーレムですが、作品の根幹にはいわゆる戦隊ものやヒーローもののDNAが流れているんですね。
そうだと思います。エロはあくまで結果であり、副産物なんです。
松岡さんが演じる主人公・炎城烈人は「エグゼロス」のリーダー的存在ですが、どんなキャラクターですか?
すごくストレートで行動力のある男の子です。子ども時代のトラウマを抱えつつも、幼なじみの星乃雲母(ほしの・きらら、CV:加隈亜衣)に対してはずっと一途だし、とても共感できる主人公だなと思います。
▲炎城烈人(CV:松岡禎丞)
キセイ蟲に襲われたことで男嫌いになってしまった雲母のことを、疎まれながらも一途に想い続けるというのはスゴいですよね。
本当にできた子ですよ。僕だったら「私の半径1メートル以内には絶対に入らないで」とか言われたら、二度と立ち直れないですね。なにせガラスの心臓なので(笑)。
ちなみに烈人は演じやすいタイプですか?
「シンクロのしやすさ」という意味では抜群に演じやすいです。『エグゼロス』の世界観に入ってスイッチを入れてしまえば、あとは自然と烈人としてお芝居ができる感じ。

これは現場の雰囲気やキャストのみなさんの力も大きいとは思いますが、演じていてすごく楽しいですし、こういう感覚を味わいたいから声優をやっているんだろうなって思うくらいです。
ちなみに、キセイ蟲は人間のエロスを奪うことで人類滅亡を企んでいますが、松岡さんが奪われて困るものといえば、何ですか?
やっぱり、いちばんは「声」ですかね。声がなくなったら声優はできないですから、これからどうやって生きていったらいいのか。これはリアルに困っちゃいますね。
転職するしかないですね。
考えたこともなかったですが、それはツラいですね。僕はかなりの「仕事がしたいマン」なので(笑)。

後輩の存在をキッカケに、現場が楽しいと思えるように

アフレコ現場の雰囲気はいかがですか?
勝手知ったるというか、付き合いの長いキャストさんが多いので、僕自身はとてもリラックスした雰囲気で臨めています。基本的にはみんなでバカ話をしながらも、本番は真面目にやるというスタンスだと思います。
なかでも雲母を演じる加隈さんとの掛け合いが多いと思いますが、ここまでの感触は?
加隈さんとはこれまでも他作品で絡んでいて、これは昔から感じていることなんですけど、「ん?」と違和感を抱く瞬間がまったくないんです。すぐに『エグゼロス』の世界にトリップして、役柄としてごく自然と会話ができているなと思います。ご一緒していてすごく心地のよい方です。
▲星乃雲母(CV:加隈亜衣)
後輩が多い女性陣に比べて、男性陣は三木眞一郎さん(庵野 丈役)や岸尾だいすけさん(ルンバ役)など、先輩ばかりですね。
そうなんですよね。しかも現場の席順でいうと、僕の右隣が三木さんで左隣が桑原由気ちゃん(天空寺 宙役)という、あらゆる意味で対極な環境で(笑)。これまで三木さんとガッツリお話させてもらう機会はなかったですし、僕も緊張しちゃうのでついつい左隣の桑原ちゃんとバカ話をしていたんですが、途中で「これはチャンスかもしれない」と奮い立ちまして。
三木さんに話しかけたんですね。どうなったんですか?
三木さんって車好きで有名なんですけど、じつは僕も車の話は好きなんですよ。それもあってこれまでに見たことがない笑顔を向けてくださって、思わず「はあ〜」ってなりました(笑)。
よかったですね。松岡さんは声優仲間から「天然」や「人見知り」と言われていて、インタビューでもずっと「現場では緊張しっぱなし」とおっしゃっていますよね。
そうですねえ。若手時代はよく、台本を熟読するフリをしてごまかしていましたからね(笑)。
現場での立ち振る舞いという点では、最近はいかがでしょうか?
もちろんいまだに緊張したり萎縮したりすることはありますけど、でも30歳を超えたあたり、デビューから10年経ったくらいからは、だんだんと現場が楽しいと思うようになってきました。
何かキッカケがあったんですか?
後輩の存在が大きいかもしれません。気づいたらいつの間にか、「きょうは後輩が現場に来るから、ちゃんと面倒を見てあげてね」って言われるようになってきたんです。

そんなことを言われる年齢やキャリアになったんだ、と驚くと同時に、いつまでも今のままじゃダメだろうと思い、それからは無理矢理にでも自分から話しかけるようになったんですよ。
勇気を振り絞って。
最初はめちゃくちゃ緊張したんですけど、いざ話しかけてみたら意外とみんな優しいし、僕の話も無視せずにちゃんと聞いてくれて(笑)。そういう反応を感じたことで、近頃はとくに現場が楽しくなってきたというのはありますね。
でも最近は、なかなかアフレコができない状況が続きましたよね。そこはどうでしたか?
ステイホーム期間中はすごく人と話したくなりました。実際に人と会って話すのってすごく大事なことだったんだと改めて感じましたし、何よりも自分がそういうふうに感じているということに驚きました。

先日久しぶりにラジオの収録現場に行ったんですけど、スタッフさんから「松岡くんってこんなにしゃべる人だったっけ?」って驚かれたくらいです(笑)。
そうなんですね。では今後の『ド級編隊エグゼロス』の展開についてですが、松岡さん的注目ポイントはどこですか?
個人的には、各話数に登場するキセイ蟲に注目しています。演じていらっしゃるキャストさんが錚々たる女性声優陣で、それだけでもスゴいんですけど、さらに音響監督が必ずアドリブを要求するんですよ。面白い演技を引き出すためにはベテラン勢にもまったく容赦しない作品なんです(笑)。だから、キセイ蟲のお芝居は注目だと思いますよ。
そういう現場にいると、松岡さんも自然と気合いが入りますか?
そうですね。僕はヒロインたちの妄想に登場する男の声もやらせてもらっているんですけど、そこは全力で攻めたつもりです。ただ周りからは「え? これ完全に松岡くんじゃん」って言われちゃいましたけど(笑)。

「お前の芝居って、誰にでもできるよな」先輩がくれた転機

ここからは松岡さんの演技論についてお伺いしたいと思います。まず、お芝居において転機になった出来事はありますか?
劇的に意識が変わったのは初主演作のときです。『神様のメモ帳』という作品で、藤島鳴海という主人公を演じさせていただいたんですけど、そのときの共演者に、僕の大好きな松風雅也さんがいらっしゃったんですね。

中盤の6話くらいまで収録したタイミングで飲み会があったんですが、その席で松風さんが僕に、「お前の芝居って、誰にでもできるよな」っておっしゃったんです。
なかなか辛辣ですね。
当時の僕は毎話とも精一杯のつもりだったので、その言葉にすごく反応してしまって、「僕じゃなかったら、じゃあ誰がよかったんスか!」ってガチギレしてしまって(苦笑)。もう泣きじゃくりながら「僕よりうまい人はたくさんいるのに、何でその人にしなかったんですか!」って。松風さんがキャスティングしたわけじゃないんですけど(笑)。

そしたら松風さんが「いいか松岡、俺が言いたいのは『お前にしかできない芝居をしろ』っていうことだ。今のお前の芝居なら俺だってできるわ」と。それを言われた僕は、売り言葉に買い言葉で「わかりました」って言って、翌週の収録日はとにかくテストから全力で臨んだんです。
でも、それまでも全力だったんですよね?
いえ。それが無意識のうちに80%くらいの出力にセーブしていて、いわゆる「ダメ出しを受けないお芝居」になっていたんですよ。松風さんはそれに最初から気づいていて、どこかで言ってやらなきゃと思っていたらしいんです。
無意識に守りに入っていたんですね。
はい。でもその翌週のテストでは、たとえダメ出しをされてもいいから松風さんに僕の全力を見てもらいたいと思って、思いっきりやってみたんです。そしたら松風さんが思いっきり僕の肩を叩いて、「やればできるじゃねえか」って。
松風さん、めちゃめちゃカッコいいですね。
そうですよね。とにかくそこで、僕のなかでスイッチがカチッと入ったのはたしかです。それ以来、常にテストから150%で臨むようになり、今でもそれは続いていますね。
それは大きな転機ですね。
今振り返ってみると、当時の僕は「ダメ出し」と「ディレクション」の違いもわかっていなくて、現場で言われることのすべてがダメ出しだと思って怖がっていたんです。

でも実際は、「ダメ出し」が個人の失敗を指摘しているのに対して、「ディレクション」は作品をよりよくしようとするためのもので、すごく前向きな指摘なんですよね。その違いを自分のなかで明確に分けるようになったら、憑き物が落ちたというか、思いっきり攻めることができるようになったんです。

今はテストは「役者のプレゼンの場」だと思っていて、まずは僕が考えてきたものを出して、スタッフさんが作品の方向性に照らし合わせてジャッジする。その結果はどうであれ、まずは役者側から明確に提案しないと何も始まらないなと思っています。

「こう演じよう」という感覚はない。憑依型の真骨頂

松岡さんは主人公から悪役まで幅広いキャラクターを演じられていますが、基本的にはどのような流れで役作りをされているんですか?
台本や原作をチェックして、収録用のビデオを観ながら合わせてみて……と、ごく普通だと思います。ただ事前に作り込みすぎると現場で変えられなくなってしまうタイプなので、家で作るのは80%までと決めていて、残りの20%に関しては現場での掛け合いのなかで埋めていくイメージです。
松岡さんのお芝居はよく「憑依型」だと言われますよね。そこはご自身ではどう感じていらっしゃいますか?
そう言われると、そうなのかもしれません。作品の世界観やキャラクターの性格を理解して、そのうえでセリフを見れば、瞬間的に「カン!」っていう感じで入ってくるので、「こう演じよう」っていう感覚はないんです。

先ほど言った80%まで作っておくというのは、どちらかというと作品やキャラクターの理解のほうに費やしていて、どういう芝居になるかは最後の最後に現場で決まる感じですから。やっぱり現場で生まれるものがいちばん大切なんですよね。
憑依型であり、かつ感覚重視なんですね。
でも本能的な感覚に頼っている部分が大きいので、そのぶん難しさもあるんですよ。演じさせていただいたキャラクターはすべて自分の血肉としてストックされているつもりではあるんですけど、仮に10年前に演じたキャラクターを今やったとしても、昔と同じニュアンスは出せないんですよね。

いつだってそのとき、その現場での精一杯を出しているので、それを今やろうとすると過去の自分を思い出す必要があって、しかも「模倣」になってしまう恐れがあるんです。
感覚を重視しているぶん、再現性には乏しいんですね。
そうですね。あとは声優として積み重ねてきた経験値の違いも大きいと思います。最近では自分の出演作品を改めて観る機会も多いんですけど、妙に生っぽくて、それが新鮮で勉強になったりもするんです。かと言って、どちらがいいというわけでもないので……本当に難しいですよね。
過去のインタビューで「昔はアクセル全開だったけど、最近はブレーキをどう踏むかが求められている」とおっしゃっていました。今は感覚的にはいかがですか?
今は……アクセルとブレーキを同時に踏めるようになりました。

たとえば『ド級編隊エグゼロス』では、現場が楽しいこともあってついつい200%くらい出しちゃっているんですけど(笑)、でもずっと200%だとやっぱり浮いてしまうときがあるので、そこは瞬間的な判断で自然とコントロールしています。
え? 瞬間的にコントロールできるものなんですか?
いつの間にかできるようになったんですよね。バランスのレベルゲージを本能的に合わせるといいますか。
すみません、ちょっと想像がつかなくて……(笑)。
……僕もよくわかっていないかも(笑)。感覚的なことなので、なかなか言語化できないんですよ。

あ、でも最近思うのは、以前よりも相手のお芝居を冷静に聴くことができるようになってきて、それは大きいんじゃないかなと思います。
ああ、なるほど。相手の芝居に集中できる余裕があるということは、現場ではあまり緊張することなく、リラックスして臨めているんですね。
いやまあ、今も作品によっては現場が怖いと思うことはありますけどね。それにどういうわけか、最近は精神的な面で疲弊しやすくなってきているんですよね。
楽しい現場が多いのにですか?
そうなんです。何て言ったらいいんですかね。1つひとつの現場にかける熱量のようなものが年々増えていっているような気がして、家に帰ると本当にぐったりしていて「疲れた〜、眠い〜」ってなっちゃうんです。
松岡さんを知る人に話を伺うと、口を揃えて「作品愛が人一倍強い」とおっしゃいますが、ここへ来てさらに作品愛が高まっているんですかね。
昔よりも作品世界にトリップする能力が上がっているので、そのせいでより深くハマりこんじゃうのかなとは思っています。

仕事はもちろん大好きなんですけど、そこは今後の課題というか、うまく調整していかないとダメかなと思っています。後輩たちからもよく「少しは休んで僕たちに役をくださいよ」って言われていますし(笑)。
たしかにちょっと心配です。キャラクターに飲み込まれかねないですよ。
気をつけます。このままだと40歳くらいで抜け殻になってしまう危険もあるので(笑)。

いつか自分だけの“突き抜けた一本槍”が欲しい

松岡さんのことをライバル視している方も多い印象ですが、松岡さんにとって同年代の声優さんたちはどんな存在ですか?
うーん、それで言えばみんな脅威ではあるんですけど。やりたかった役が別の誰かに決まったときなどは、「こんちくしょう」って思ったことも多々ありますけど、でも同時に作品を作っていく大切な仲間でもありますし。何より僕自身が目の前のことにいっぱいいっぱいなので、そこまで意識はしないですかね。
では後輩に対してはいかがですか?
あからさまに脅威だとは思っていないつもりなんですけど、でも後輩にも「すごくいい演技をするな」って思う子は何人かいるんです。たとえば僕は畠中 祐くんのお芝居がとても好きなんですが、それってよくよく考えると脅威に感じているのと同義だとも思うんです。

だから同期であっても後輩であっても、そういう感覚はずっとどこかにあるんだと思います。ただ僕はそういうお芝居に出会ったときは、すぐに「パクってやろう」と思うので(笑)。
事務所の後輩である天﨑滉平さんにも、「いいお芝居はパクれ」とアドバイスしたと聞きましたが、それは松岡さんのポリシーなんですね。
そうですね。これは僕自身が昔マネージャーさんに言われたことで。

事務所の先輩に下野 紘さんがいらっしゃるんですが、「下野さんの芝居をマネしたっていいんだよ」って言われたんです。最初は何を言い出すんだと思ったんですけど(笑)、「下野さんの芝居を松岡くんの方向に落とし込めたら、それはもう全然違う芝居になる」と言われて、なるほどなと思って。
モノマネではなく、自分のものにするという意味での「パクる」なんですね。
そうです。さっきの畠中くんのお芝居もそうですが、僕はそういうことをいっぱいやっていて、あとは使える機会が来るのを待っている状態ですね。
ストックが無限に増えていきますね。貪欲すぎません?
いやあ、ただ我欲が強いんだと思います。もともとオールラウンダーとして生きていきたいと思っていたので、引き出しはできるだけ多いほうがいいですから。

ただその一方で、僕にはいつまで経っても「THE・自分」みたいなものがないことにも気づいていて、いつか自分だけの突き抜けた一本槍が欲しいなとも思っているんですよね。
オールラウンダーが一本槍を持ったら、それはもう最強じゃないですか。
そうなんです。オールラウンダーとしての最強って、声優界では昔からいわれている「困ったときの山寺(宏一)さん」みたいなことだと思うんですよね。山寺さんなら絶対になんとかしてくれるっていう安心感。

それに対して一本槍の最強ってたとえば大塚芳忠さんで、「これはもう芳忠さんしかいないでしょ」っていう役があるじゃないですか。そういったレジェンド級の存在になっていくためには、僕にはまだまだいろんな武器が必要なんです。いつかは僕も「この役だったら真っ先に松岡の顔が思い浮かぶ」っていう役者になりたいですね。
何度も言いますけど、本当に貪欲ですよね。そういう情熱や探究心の原動力はどこにあるんですか?
それはもちろん、作品を見てくださる方々がいるからですね。アニメーションもゲームもドラマCDもすべてがそうですけど、それらを求めてくださる人がいるからこそ、僕らの仕事は成り立っていますから。

作品ファンのみなさんから「○○を松岡くんがやってくれて大正解だったよ」って言ってもらえるのって、純粋にものすごく嬉しいんです。
ただ「芝居が好き」なだけでなくて、「人に喜んでもらえる」ことが大切なんですね。
それがないと、何のためにお芝居をしているんだろうと思っちゃいます。ただ、それは根底にありつつも、永遠にそのモチベーションだけで続けていくのって、それはそれでどこかでしんどくなってくるのも事実なんですよ。

だから今回は「人のため」じゃなくて「自分のため」にお芝居をしようとか、あるいはまったく別の動機を作ったりとか、そこは数年単位で少しずつ変化してきていると思います。きっと僕は、自分が最大限に頑張れるための理由をいつも探し続けていて、そこに頼っているんです。
モチベーションを維持するためにそういう考え方ができるのも、役者としてひとつの才能だと思います。
そうだといいんですけどね。でも……次は何のために頑張ろうかな。

究極のごっこ遊び――声優にとって大切なもの

次が最後の質問になります。声優を目指している方々は多いですが、彼らに向けてこれだけは大切にしてほしいと思うことについてお聞かせください。
僕の経験で言えば「怖がらないこと」です。怖がってしまえば、それはただの「自分」になっちゃいますから。

あとは、「いい声」かどうかは関係ないっていうことかな。大切なのは芝居であって、「いい声」だったら声優としてやっていけるかというと、まったくそんなことはないですから。
なるほど。先ほどの松岡さんの体験談もそうですが、怖がらずに自分の考える芝居を信じてやり切ることが大切なんですね。
これから声優になろうとしている方に向けてですよね。

…………(しばらく考えて)うーん、難しいですね。怖がらないで全力を出すのはもちろんなんですけど、かと言って自分で正解を決めちゃってもダメなんですよね。それを決めるのはあくまで周りの方々ですから。
思い切りのよさは大切に、でも要望に対応する柔軟さも持ち合わせておく、ということでしょうか?
そうなのかな? …………(さらにしばらく考えて)うーん、言葉にするのは難しいですね。
す、すみません。軽い気持ちでヘビーな質問をしてしまいました。
あ、でもそうか。そもそも声優って「究極のごっこ遊び」だと思うんですよ。そういう意味では、おままごとで遊んでいる子どもたちのほうがよっぽど上手にお芝居をしていると思いますし、もし子どもの頃の感性をもってこの業界に入ることができたら、何も怖いものはないと思います。
たしかに。子どもたちは演じているというよりも、「成って」いますから。
そう。その「成る」っていう感覚は、役者にとっては絶対になくしちゃいけないものだと思いますね。うん、そこがいちばんの起源のような気がします。
なるほど。丁寧に答えていただきありがとうございました。
ホント、まとまりがなくてすみません。これじゃ全然伝わっていないですよね。
いえ。松岡さんが声優というお仕事に真剣に向き合っていることが伝わってきました。
本当ですか? 次はもっとうまい言葉を考えておきます。
松岡禎丞(まつおか・よしつぐ)
9月17日生まれ。北海道出身。O型。2009年にTVアニメ『東のエデン』(AKX20000)で声優デビュー。2011年にはTVアニメ『神様のメモ帳』(藤島鳴海)で初主演を果たし、同年度の第6回声優アワードで新人男優賞を受賞。2016年度の第10回声優アワードでは主演男優賞を受賞する。主な出演作に『ソードアート・オンライン』(キリト)、『ノーゲーム・ノーライフ』(空)、『食戟のソーマ』(幸平創真)、『アイドルマスター SideM』(御手洗翔太)、『鬼滅の刃』(嘴平伊之助)、『五等分の花嫁』(上杉風太郎)などがある。

    作品情報

    アニメ『ド級編隊エグゼロス』
    2020年7月3日(金)より放送開始! TOKYO MX、BS11、AT-Xほかにて
    https://hxeros.com/

    ©きただりょうま/集英社・ド級編隊エグゼロス製作委員会

    サイン入りポラプレゼント

    今回インタビューをさせていただいた、松岡禎丞さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

    応募方法
    ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT
    受付期間
    2020年7月11日(土)12:00〜7月17日(金)12:00
    当選者確定フロー
    • 当選者発表日/7月20日(月)
    • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
    • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから7月20日(月)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき7月23日(木・祝)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
    キャンペーン規約
    • 複数回応募されても当選確率は上がりません。
    • 賞品発送先は日本国内のみです。
    • 応募にかかる通信料・通話料などはお客様のご負担となります。
    • 応募内容、方法に虚偽の記載がある場合や、当方が不正と判断した場合、応募資格を取り消します。
    • 当選結果に関してのお問い合わせにはお答えすることができません。
    • 賞品の指定はできません。
    • 賞品の不具合・破損に関する責任は一切負いかねます。
    • 本キャンペーン当選賞品を、インターネットオークションなどで第三者に転売・譲渡することは禁止しております。
    • 個人情報の利用に関しましてはこちらをご覧ください。
    ライブドアニュースのインタビュー特集では、役者・アーティスト・声優・YouTuberなど、さまざまなジャンルで活躍されている方々を取り上げています。
    記事への感想・ご意見、お問い合わせなどは こちら までご連絡ください。