お嬢様育ちだった母の苦労前回触れたが、塚本幸一はしばしば、「塚本家は極道もんの筋だから」と口にした。祖父や父の放蕩ぶりを誇張しつつ、自分のお茶屋通いの言い訳にしているようにも受け取れるが、それだけではないようだ。塚本幸一はワコールが経営危機に直面するたび、尋常でない腹の据わり方でそれを乗り切っていった。そこには確かに一種の“侠気”を感じずにはいられない。そんな彼の中に流れる激しい血のことを