「できたての電気」を求めて、はるばる秘境のダムに行ってきた

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こんにちは。もりすけと申します。
▲僕が制作したこちらの動画、ご覧いただけましたでしょうか! 感動的なラブストーリーとなっております。ぜひご覧ください。

さて。皆さん、電気は好きですか? 僕は普通です。

現代社会において電気は必要不可欠な存在ですよね。電気が止まるなんて考えるだけでも恐ろしい。
エアコン使えなくて寒い、洗濯機が使えなくて困る、など色々と問題はありますが一番の恐怖はそこではありません。

電気が止まるとですね、このトイレが

真っ暗になるんですよ。
ということはですよ。
拭けてるかどうかわかんねぇだろ!

はい。
安易な顔芸はさておき、恥ずかしながら学生の頃より実際に電気が止められること計5回…「電気を失う」ことの恐ろしさを知っております(災害などでの停電はほとんどなかったのは幸運でした)。

今回は水力発電所で電気のありがたさを再確認しつつ、しれっと新鮮できたての電気をいただこうと思います。発電所でする充電はきっと何かが違う! たとえばビール工場とかで飲むビールってうまいじゃないですか。それと同じことですね。

ということで僕は、静岡県と愛知県にまたがる

佐久間ダムに

来ています。

佐久間ダムと発電所を案内してくださるのは、J-POWER佐久間電力所所長代理の小森さん。地元も隣町の水窪町で根っからのダムっ子だそうです。小森さんの説明を聞きつつ、新鮮なダム電気でスマホを充電したいと思います。
本日はよろしくお願いします。
ようこそお越しくださいました!
あの、突然なんですが電気ありますか?
たくさんありますよ!!!
ここ佐久間ダムは1956年に完成した国内最大級の重力式ダムです!
築年数64年! かなり歴史があるんですね。
ダムの高さは155.5mありまして、完成当時は日本一でした。佐久間ダムの完成によって生まれたダム湖の総貯水容量は3億㎥を超えています。
僕、温泉が好きでよく行くんですけど1回のかけ湯で洗面器1杯分の2.5L使うとすると、ダム湖の水で1200億回かけ湯できますね。
佐久間ダムは発電用ダムでして、年平均14億kWhの発電量は国内の水力発電としては最大級ですよ!
めちゃくちゃ電気ありますね!!
ひとり暮らしの1ヶ月の消費電力量が約154kWhらしいので、ここの年間発電量で75万7千5百年間は電気が止まらない生活ができますよね。75万年前というと北京原人がいた時代ですから、原人が現生人類になるほどの発電量というわけですね。
よくわからないですね。
僕もわからないです。

莫大すぎてよくわからないものがもっとわからなくなったところで、このオレンジ色のドアからいよいよダムの中に突入です。しれっと新鮮な電気をいただきたいと思います!
え、奥行きすごい・・・

なんとダムの厚みは100m以上もあるそうです。
この通路は完成した当時のそのままなんですよ。佐久間ダムは1953年に工事を始めましたが、10年かかると言われていたところをわずか3年で完成させているんです。
え、3年で? なんでそんなに急いだんですか?
当時は戦後まもなく、復興に向けて経済が成長していく中で深刻な電力不足があったようですね。ですから一刻も早く完成させたかったのでしょう。
でも10年の見込みが3年で終わるなんて、そんな奇跡みたいなことあります?
パワーショベルなどの大型の重機を日本で初めて導入したことで3年という工期を実現させたんです。更には1日のコンクリート打設量で世界記録を打ち立てました。そんなこともあり「戦後復興の象徴」「土木技術史の原点」と呼ばれており、歴史的にも価値の高いダムなんです。

って、小森さんの話がおもしろくてつい聞き入ってしまいました。
電気探さないと。ここに来た目的は新鮮な電気でのスマホ充電ですからね。

ただですね、この通路どっこにもコンセントが

ないんですよね、、、電気は点いているのに。なんで?
あの、電気ってどこにありますかね?
ここはダムですから、電気はありませんよ。電気は少し離れた発電所のほうにあります。
わかりました! 発電所に行きましょう!

ということで発電所に向かうため、一旦ダム内のエレベーターでダムの上部に移動します。

着きました。

今この上の矢印の部分にいます。
その下にある5つ並んだ格子状のそれぞれが水をせき止めているゲートです。あれ1枚の大きさが縦14.5m、幅12mなので、ダム自体がどれだけの高さなのかわかります。

覗き込むと
無理でした。

後ろでなぜか小森さんも怖がってる。
ダムってゲート開けて放流しているイメージがあるんですけど今日はしないんですか?
放流は滅多にしません。大雨の時など、河川環境に応じて放流することはあります。それに発電用ダムにとって「水は燃料」なので、主に発電に使います。
上野の飲み屋にいるオジさんは「酒は燃料」と言っていました。同じことですか?
同じです。
同じなんだ。

高いところが怖いのでそそくさと発電所のほうに来ました。
ここは発電した電気を各地に送電する設備です。
このコンセント、直接あの電線に付けたら一気に充電できますかね?
死にますねぇ
ここの電圧は275,000Vなので、100-240V対応の充電器は壊れます。それに高圧の送配電線は近づきすぎると、直接触れなくても雷のように電気が流れてきてしまいます。ぶっ飛びますねぇ。
触れなくても!?
電気は目に見えないものなので、細心の注意を払って現場の業務に当たっているんです。
関東と関西で電気の周波数が違うのをご存知ですか? 長野県あたりを境に東側が50Hz、西側が60Hzです。
知っています。違う周波数の地域に持っていくと電子レンジとか洗濯機など物によって使えなくなるんですよね。電気の境目が、どん兵衛の味の境目とだいたい同じなのもおもしろいです。
佐久間発電所ではどちらの周波数の電気も作っています。そしてこの送電線で東京都町田市、愛知県春日井市の変電所までそれぞれ電気を送っているんです。
なんで東と西で周波数が違うんですか? 効率悪いですよね?
明治時代に発電機を輸入した際、東京は「ドイツ製(50Hz)」大阪は「アメリカ製(60Hz)」が導入され、そのまま全国に広まってしまったんですね。
東京VS大阪ってこのときからあったんだ…

またしても小森さんの話に聞き入ってしまいましたが、ようやく発電所に突入です。スマホの充電をフルMAXにすべく新鮮な電気を探しましょう。
でか・・・

機械音なのか水が流れている音なのか、ゴオォォという低い音がこの広い空間に響いています。
これが発電機ですよね?
そうです!佐久間発電所では4機の発電機を保有しています。
発電機の下ではダム湖から引いた水が勢いよく流れ、巨大な水車を回しています。その動力で磁石の付いた軸が回転すると、その周りにあるコイルに電気が発生するんです。
中学校でコイルに磁石を通して実験した、あれのデカい版?
そうです。基本的に自転車のライトも、火力も、水力も、風力も、原子力も、「回して発電する」という原理は同じです。回す動力が違うだけなんです。
また、この4機すべてが50Hz、60Hzの切り替えが可能です。東日本大震災時には、東日本用に切り替えて電力の安定供給に貢献しました。

そしていよいよ下に降りて発電機の中へ! できたての電気をいただきましょう。
現場に入るということで小森さんも顔が引き締まっていますね。
こちらから発電機の中に入れます。

さぁようやく! この中に待ちに待った新鮮な電気が待っていますよ!!
???

中ではとんでもないスピードで水車の軸が回転していました。
が、コンセントは見当たりません。
あれ? 電気ってどこですかね?
電気はですね、この上で磁石が回転していて、その周りに発生しています!
あ、コンセントは?
それはないですよ(笑)。
ダメでした。

まぁ薄々気付いていました。発電機の中にコンセントなんかあるわけない。

というか、ここに来るまで発電所内をきょろきょろと見回していたんですけど、全然コンセントなかったんですよね。なので。
もう正直に言ってしまいましょう。
すみません、今使える電気はありますか?
あ、スマホですか?
どうぞこれ使ってください。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
【取材を終えて】
結果的に、小森さんの優しさが想定外の結末を生みました。モバイルバッテリーって…
発電所なのでコンセントがそこら中にあってスマホ充電にはかなり潤沢な環境かと思ったら全然なかったですね。
ただあの後、発電所内にコンセントを見つけたんですよ。できたて新鮮な電気だから、普通の家庭用の電気と違うのかなと思ってたんですけど
「電気の速さは光の速さと同じと言われていますので、発電した瞬間にもう各地で使われていますし、発電所にあるコンセントが発電機と直接つながっているわけではないんです」とのこと。

つまり、電気はいつだって新鮮らしいです。
大学で化学を専攻していたんですが、電気のことは全然知らなかったですね。新しい知識がたくさんあって今ドーパミンがドバドバ出てます(笑)。
ダム展望台の下には「佐久間電力館」があり、そこでダムや発電所のことを学べます。
踏んだり蹴ったりでしたが、ダムの歴史や発電の面白さを知れて大満足です!
電気はスイッチ押せば点くのが当たり前なので考えたこともなかったですよ。
エアコンにばかり頼ったり、必要のない電気を点けっ放しにしたりしていましたが、これからはもっと大事に電気を使っていこうと思います。

小森さん、J-POWERの皆さんありがとうございました!
今回お世話になったのは…
J-POWER(電源開発株式会社)
ホームページはこちら
1952年の創立以来、約70年にわたり日本と世界で電気をつくり送り届けている。今回訪れた佐久間発電所のほかにも、水力、火力、風力、地熱などさまざまな形で全国に約100カ所の発電所を保有。また、海外でも発電事業や技術支援を積極的に行っている。
 
 
森祐介(もりゆうすけ)
1990年、鹿児島県生まれ。喜劇俳優。SNSでの動画投稿がきっかけとなり活動を開始。 1人で複数役をこなすコメディ動画の連投で「残念なイケメン」と一躍話題に。動画の総再生回数は6億超。さまざまなPR動画・記事を発信する一方、ファッション誌でのモデルの顔も持つ。

撮影/Ahato
文/森祐介
提供/J-POWER