岡山県新見市にある無人駅・JR布原駅前の線路上に設置された、ある動物を線路外に逃がすための装置がツイッターで話題になっている。

その動物とは......なんと、カメ。

布原駅では以前から、踏切などから侵入したカメが線路の分岐器(車両の進路を変更するためのもの)に挟まってしまい列車が遅延することがあった。そこで、カメが安全に脱出できると共に遅延発生の低減を図るべく「カメ脱出装置」を設置したという。


カメを逃がすためのU字溝(以下、画像はくまなく・たびにゃん(JR岡山支社)【公式】@Okayama_JRのツイートより)

カメ脱出装置が話題になったのは、JR岡山支社の公式ツイッターアカウントの2020年11月10日の投稿がきっかけだ。上のような解説写真とともに、脱出装置を設置したことを告知したのだ。

写真をみると、分岐器の手前辺りに、ちょうど線路の下をくぐるような形でU字型の溝が作られている。線路内に迷い込んでしまったカメが分岐器に挟まってしまう前に、このU字溝に落下させて線路外に脱出させるという寸法だ。

カメ脱出装置の設置を伝えたJR岡山支社の投稿にツイッターでは、

「カメへの優しさに溢れている」
「人間の為に考えられたことなんだろうけど、動物に優しい」
「単純な手法だけど叡知を感じた」

といった声が寄せられている。

今後の成果に期待


挟まって動けなくなってしまう

そもそも、分岐器にカメが挟まってしまうというのはよくあることなのだろうか。Jタウンネットは11月19日、JR西日本岡山支社に詳しい話を聞いた。

取材に応じた担当者は、過去にカメが挟まった事例について、2019年は1件、2020年は10月31日までの時点で3件あったと話した。頻度としてはそこまで多くはないようだが、それでも十分に起こり得るトラブルであるようだ。

では、カメが分岐器に挟まってしまうと、実際にどういった問題が発生するのか。担当者は、

「線路の進路を振り分ける転てつ機が途中で止まる(不転換)ため、列車に対する進路が構成されず信号機の現示ができなくなります(青信号が出なくなる)。このため、不転換の原因調査を行うことで列車遅延が発生してしまいます」

と説明した。

「こうした輸送障害を少しでも減少させようと、駅・列車区・施設・電気の各系統が集う新見地区連絡会の場で議論をし、今回の対策を実施することとなりました。その後、2020年10月26日と27日の夜間工事にて、件のU字溝を設置しました」

U字溝の効果の有無については、設置してから間がないということもあってまだわからないものの、「長い目をもって検証していきたい」と担当者。今後この場所でカメによるポイント不転換が発生しないのであれば効果はあったといえるだろう、とのことだった。


線路の下から脱出!(編集部でトリミング)

また、ツイッターでの反響については、

「安全・安心して鉄道をご利用していただけるように、遅延対策の取り組みを投稿した結果大きな反響があり、大変うれしく思っている」

とコメントした。

鉄道の利用客だけでなく、線路に入ってきたカメにも配慮したJR布原駅の対応に、Jタウンネット記者もなんだかほっこりした気分になった。