新型コロナウイルス感染症は、全世界に大きな経済的ダメージを与えた。
海外の多くの国や地域で街を封鎖するロックダウンが実施されている。
日本においても緊急事態宣言で、強い外出自粛や営業自粛の要請が実施された。
現在でも、地域によっては時短営業やイベントでの人数制限が行われる状況が続いている。
こうした自粛要請では、人の外出が減り、飲食店や物販店の収益減少など、経済活動に大きなダメージを与えており、収益の減少により雇用減や倒産といった件数も増えている。
そのため政府では、新型コロナウイルス感染症の対策により悪化した経済活動を回復させるために、給付金や「Go To キャンペーン」などの経済対策を実施している。
4月に公表された政府による緊急経済対策の予算は総額108兆円。
これはリーマンショック後の経済対策の2倍近くに相当し、過去最大の規模だ。
国民全員に1人当たり10万円を給付する「特別定額給付金」をはじめ、「臨時特別給付金」「家賃支援給付金」「持続化給付金」「雇用調整助成金」「持続化補助金」など現金給付や助成金による対策が実施され、今もなお様々な対策が講じられている。
一方、このコロナ禍において議論されることが多くなり注目を集めるようになった国家レベルの政策がある。それが「ベーシックインカム」(Basic Income:略称はBI)だ。
スペインでは、新型コロナウイルス感染症拡大による貧困急増の対策として6月からベーシックインカム制度を導入した。また、8月にはドイツでベーシックインカムの実験が行われることが明らかになった。これは、ドイツ人120人を対象に毎月1,200ユーロ(約15万円)を3年間支給するというものだ。
新型コロナウイルスによる経済的ダメージへの対策や貧困格差の是正などを目的として、世界的にベーシックインカムについての議論が活発化してきている。
●ベーシックインカムとは?
ベーシックインカムを簡潔に説明すると、政府が国民全員に現金を定期的に支給する制度だ。
ベーシックインカムは生活するための必要な所得を保障する制度ではあるが、支給金額や期間、支給方法に明確な定義はない。このため実際に実施するとなると、具体的な内容や方法を決める必要がある。
ベーシックインカムは「無条件で国民全員に一律の金額を定期的に支給する」ため、現在の年金や生活保護などの「社会保障」とは異なる。しかし国民に現金を支給するということから、既存の社会保障制度と混同される場合も多い。
そうした混同を避けるために「ユニバーサル・ベーシックインカム」(Universal Basic Income:略称はUBI)と呼ばれることもある。
ベーシックインカムは、最近登場した考え方や政策ではなく、考え方は18世紀頃には既に存在していたという。
現在の日本社会において仮にベーシックインカムが導入された場合、考えられる主なメリットとしては以下のようなものが考えられる。
・貧困格差の縮小
・景気や経済活性化の拡大
・少子化の抑制
・地方経済の活性化
・社会保障制度の簡素化や撤廃
一方で、ベーシックインカム導入による大きな課題や懸念がある。
・財源の確保
・国民の労働意欲の低下
実はこのほかにも重要な課題があるのだが、それは後述する。
●新たな価値の創出や働き方改革につながる可能性
無条件で現金がもらえることは、富裕層でも貧困層でも喜ばしいことであるのは間違いないだろう。
しかし、ただ嬉しいというだけではなく、あまりにも多岐にわたる影響が考えられるため、導入には慎重にならざるを得ないという側面がある。
そんな中、匿名掲示板「2ちゃんねる」の開発者で初代管理人の実業家・西村博之(ひろゆき)氏は、インターネットテレビサービス「ABEMA」の「ABEMAニュース」にて、ベーシックインカムの有用性や導入に積極的な姿勢をみせている。
ひろゆき氏は、生活のためにスキルの向上が見込めない仕事に就くことにより、将来的にスキルを持たない人たちが増えることを危惧している。スキルを持たない人たちが結婚し、子どもを産み、家庭を持つのは困難だろうというのだ。しかし、ベーシックインカムによる給付を受けることで、自身のスキル向上や生産性の高い仕事に就くことが可能になってくると指摘する。
つまりベーシックインカムは、生活のために働かなくてはならないという環境を極力なくすことで、スキル向上や生産性向上につながるために費やす時間や余裕もたらすというのだ。
生活のための労働から解放されることで、自分のやりたいことや、スキルの向上のために注力できるようになる。これはまさに働き方の改革といえるだろう。
ひろゆき氏は、1人当たりの給付金額を7万円から8万円程度と想定しており、この金額であれば生活を維持はできれも贅沢な暮らしはできないため、働かなくなる人は少ないと予想している。
また子どもが産まれれば、世帯としての給付金額も増えるため、少子化対策にも効果があると指摘している。
例えば、1人当たりの給付金額が7万円の場合、子どもが2人の4人家族ならば毎月28万円、もしくは子どもは半額給付だったとしても毎月21万円が手元に入ることになる。
ベーシックインカムで21万円〜28万円の収入が確保できているうえで、別途、好きな労働で所得を得れば余裕のある生活ができる。そうした環境であれば、子どもを産み、育てる人も増えるのではないかというのだ。
ベーシックインカムにより個人の所得のベースを底上げすることで、様々な「ゆとり」を生むことができる。このことは、ベーシックインカム導入の議論の中でも指摘されており、「金銭的な余裕から生まれる精神的な余裕」によって自殺者の減少をはじめ、DV(ドメスティック・バイオレンス:家庭内暴力)、犯罪、事故といった様々な社会的問題も減少するのではないかといわれている。
貧困や金銭のトラブルは、人間関係の悪化や犯罪発生の要因になる。
ベーシックインカムは、将来の日本社会の改善を考える上で、現在抱えている多くの社会問題を解決できる可能性もある。少なくとも日本でも実証実験や、導入に前向きな議論がもっと活発になってもよいだろう。
●導入実現のための財源はすでにある?
ベーシックインカム導入における課題のひとつが「財源の確保」だ。
ABEMAニュース内での、ベーシックインカム導入予算の試算を見ると、
・日本の人口1億2593万人×7万円/月=8兆8151億円/月
・8兆8151億円×12カ月=105兆7812億円/年
1人当たりの給付金額を7万円とした場合、年間で105兆7812億円が必要となる。
この財源ついては、先に紹介したABEMAニュースの動画内でひろゆき氏が持論を展開している。
ひろゆき氏は、新型コロナウイルスの緊急対策費で100兆円規模の予算承認がされたため「実はやろうと思えばできるはず」と指摘している。
この記事の冒頭でも"4月に公表された政府による緊急経済対策にあてる予算は総額108兆円"と紹介したが、ひろゆき氏はこのことをいっているのだろう。
このほか、ひろゆき氏は、
・すでに年金や生活保護などで7万円以上受け取っている人には給付しない案
・年金などの社会保障制度の縮小や廃止による財源確保案
・増税による財源確保案
これらを論じている。
実際にベーシックインカムが導入されることになれば、既存の年金や社会保険制度のように、一度国民から預かったお金を病気やケガ、年配者になってから給付するという従来の社会保障制度の見直しがされることになるだろう。
年金や社会保険のほか、育児手当のような支援もベーシックインカムに置き換えることができるため、そういった制度を縮小・廃止すれば財源の確保につながる。また、年金や社会保険制度などの縮小や廃止は、国民ひとりひとりの負担が軽減されるだけでなく、企業の負担軽減にもつながる。
また、ひろゆき氏はベーシックインカムが導入されれば、消費税増税も可能だという。
過去の景気対策としての消費税増税には反対していたひろゆき氏だが、仮に月7万円程度のベーシックインカムが導入されれば、消費税が増税されても多くの国民は気にならないはずだという。
確かに毎月7万円程度が給付され、年金や社会保険の支出も少なくなれば、消費税が今より数%程度上がったとしてもあまり気にしないかもしれない。
これは国民が国に預けたお金をなんらかの条件で給付されるという従来の社会保障制度とは逆の仕組みになる。国が国民にお金を給付してそこから税収という形で国にいくばくかのお金が戻るという流れだ。
新しい制度を導入するために既存の制度を見直し、ある程度の最適化が実現できれば財源の確保は可能ということだ。
●ベーシックインカム導入への大きすぎるハードル
・贅沢ができない程度の金額であれば人が働かなくなることはない
・実は財源の確保はできる
これらふたつの大きな課題を解消できるのであればベーシックインカム導入は現実味を帯びてくる。
しかし、今の日本でベーシックインカムの実現が不可能ともいえる大きな課題がある。
先に紹介したABEMAニュースの動画内で、元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏は、
「今の自民党政権とか既存の政党では絶対にできない」と断言している。
ベーシックインカムは、これまでやってきた政策や制度を「破壊していく」政策となるため「各省庁が猛反対する」というのだ。
また、実業家の堀江貴文氏も自身のYouTubeチャンネル「ホリエモンチャンネル」に公開した動画内で、ベーシックインカムが導入されない理由を「既得権が大きいから」と述べている。
堀江氏は動画の中で「ベーシックインカムは基本的に(生活保護など行政がおこなう)余計な仕事をなくすための仕組み」とも述べている。
この動画は今から約1年半前の2019年3月に公開された動画であるが、約3年半前の2017年3月に公開された動画では、生活保護の受給資格の審査に多くの時間とコストが使われていることを説明している。
年金や生活保護など既存の社会保障制度の縮小や廃止を可能とするベーシックインカムは、裏を返せばそうした社会保障制度の元で働いている人たちはもちろん、関連する事業や関わっている企業が必要なくなるということになる。
つまり、既存の制度に従事している人や企業にとっては死活問題となり、必ず反対する声が出てくる。
橋下氏が指摘していた既存の政党では難しいという見方についても、既存の社会保障制度を何十年にも渡って作り上げてきたものや、制度に関わる役人や職員の仕事を一掃してしまうことを簡単にはやめますとはいえない。
このような現在の制度とそれに関わる人と事業者の生活を考慮すると、どんなにベーシックインカムが優れた制度であったとしても、残念ながら今の日本ですぐにベーシックインカムの導入が決まることは難しいだろう。
これまでの日本をみれば、行政が既得権益を壊しても実行することは難しく、世界情勢などにより日本もベーシックインカム導入を迫られない状況にでもならない限り実施は困難かもしれない。
しかし、ベーシックインカムにより日本を救済できる…という時代が到来することに期待したい。
執筆:S-MAX編集部 2106bpm
海外の多くの国や地域で街を封鎖するロックダウンが実施されている。
日本においても緊急事態宣言で、強い外出自粛や営業自粛の要請が実施された。
現在でも、地域によっては時短営業やイベントでの人数制限が行われる状況が続いている。
こうした自粛要請では、人の外出が減り、飲食店や物販店の収益減少など、経済活動に大きなダメージを与えており、収益の減少により雇用減や倒産といった件数も増えている。
そのため政府では、新型コロナウイルス感染症の対策により悪化した経済活動を回復させるために、給付金や「Go To キャンペーン」などの経済対策を実施している。
4月に公表された政府による緊急経済対策の予算は総額108兆円。
これはリーマンショック後の経済対策の2倍近くに相当し、過去最大の規模だ。
国民全員に1人当たり10万円を給付する「特別定額給付金」をはじめ、「臨時特別給付金」「家賃支援給付金」「持続化給付金」「雇用調整助成金」「持続化補助金」など現金給付や助成金による対策が実施され、今もなお様々な対策が講じられている。
一方、このコロナ禍において議論されることが多くなり注目を集めるようになった国家レベルの政策がある。それが「ベーシックインカム」(Basic Income:略称はBI)だ。
スペインでは、新型コロナウイルス感染症拡大による貧困急増の対策として6月からベーシックインカム制度を導入した。また、8月にはドイツでベーシックインカムの実験が行われることが明らかになった。これは、ドイツ人120人を対象に毎月1,200ユーロ(約15万円)を3年間支給するというものだ。
新型コロナウイルスによる経済的ダメージへの対策や貧困格差の是正などを目的として、世界的にベーシックインカムについての議論が活発化してきている。
●ベーシックインカムとは?
ベーシックインカムを簡潔に説明すると、政府が国民全員に現金を定期的に支給する制度だ。
ベーシックインカムは生活するための必要な所得を保障する制度ではあるが、支給金額や期間、支給方法に明確な定義はない。このため実際に実施するとなると、具体的な内容や方法を決める必要がある。
ベーシックインカムは「無条件で国民全員に一律の金額を定期的に支給する」ため、現在の年金や生活保護などの「社会保障」とは異なる。しかし国民に現金を支給するということから、既存の社会保障制度と混同される場合も多い。
そうした混同を避けるために「ユニバーサル・ベーシックインカム」(Universal Basic Income:略称はUBI)と呼ばれることもある。
ベーシックインカムは、最近登場した考え方や政策ではなく、考え方は18世紀頃には既に存在していたという。
現在の日本社会において仮にベーシックインカムが導入された場合、考えられる主なメリットとしては以下のようなものが考えられる。
・貧困格差の縮小
・景気や経済活性化の拡大
・少子化の抑制
・地方経済の活性化
・社会保障制度の簡素化や撤廃
一方で、ベーシックインカム導入による大きな課題や懸念がある。
・財源の確保
・国民の労働意欲の低下
実はこのほかにも重要な課題があるのだが、それは後述する。
●新たな価値の創出や働き方改革につながる可能性
無条件で現金がもらえることは、富裕層でも貧困層でも喜ばしいことであるのは間違いないだろう。
しかし、ただ嬉しいというだけではなく、あまりにも多岐にわたる影響が考えられるため、導入には慎重にならざるを得ないという側面がある。
そんな中、匿名掲示板「2ちゃんねる」の開発者で初代管理人の実業家・西村博之(ひろゆき)氏は、インターネットテレビサービス「ABEMA」の「ABEMAニュース」にて、ベーシックインカムの有用性や導入に積極的な姿勢をみせている。
ひろゆき氏は、生活のためにスキルの向上が見込めない仕事に就くことにより、将来的にスキルを持たない人たちが増えることを危惧している。スキルを持たない人たちが結婚し、子どもを産み、家庭を持つのは困難だろうというのだ。しかし、ベーシックインカムによる給付を受けることで、自身のスキル向上や生産性の高い仕事に就くことが可能になってくると指摘する。
つまりベーシックインカムは、生活のために働かなくてはならないという環境を極力なくすことで、スキル向上や生産性向上につながるために費やす時間や余裕もたらすというのだ。
生活のための労働から解放されることで、自分のやりたいことや、スキルの向上のために注力できるようになる。これはまさに働き方の改革といえるだろう。
ひろゆき氏は、1人当たりの給付金額を7万円から8万円程度と想定しており、この金額であれば生活を維持はできれも贅沢な暮らしはできないため、働かなくなる人は少ないと予想している。
また子どもが産まれれば、世帯としての給付金額も増えるため、少子化対策にも効果があると指摘している。
例えば、1人当たりの給付金額が7万円の場合、子どもが2人の4人家族ならば毎月28万円、もしくは子どもは半額給付だったとしても毎月21万円が手元に入ることになる。
ベーシックインカムで21万円〜28万円の収入が確保できているうえで、別途、好きな労働で所得を得れば余裕のある生活ができる。そうした環境であれば、子どもを産み、育てる人も増えるのではないかというのだ。
ベーシックインカムにより個人の所得のベースを底上げすることで、様々な「ゆとり」を生むことができる。このことは、ベーシックインカム導入の議論の中でも指摘されており、「金銭的な余裕から生まれる精神的な余裕」によって自殺者の減少をはじめ、DV(ドメスティック・バイオレンス:家庭内暴力)、犯罪、事故といった様々な社会的問題も減少するのではないかといわれている。
貧困や金銭のトラブルは、人間関係の悪化や犯罪発生の要因になる。
ベーシックインカムは、将来の日本社会の改善を考える上で、現在抱えている多くの社会問題を解決できる可能性もある。少なくとも日本でも実証実験や、導入に前向きな議論がもっと活発になってもよいだろう。
●導入実現のための財源はすでにある?
ベーシックインカム導入における課題のひとつが「財源の確保」だ。
ABEMAニュース内での、ベーシックインカム導入予算の試算を見ると、
・日本の人口1億2593万人×7万円/月=8兆8151億円/月
・8兆8151億円×12カ月=105兆7812億円/年
1人当たりの給付金額を7万円とした場合、年間で105兆7812億円が必要となる。
この財源ついては、先に紹介したABEMAニュースの動画内でひろゆき氏が持論を展開している。
ひろゆき氏は、新型コロナウイルスの緊急対策費で100兆円規模の予算承認がされたため「実はやろうと思えばできるはず」と指摘している。
この記事の冒頭でも"4月に公表された政府による緊急経済対策にあてる予算は総額108兆円"と紹介したが、ひろゆき氏はこのことをいっているのだろう。
このほか、ひろゆき氏は、
・すでに年金や生活保護などで7万円以上受け取っている人には給付しない案
・年金などの社会保障制度の縮小や廃止による財源確保案
・増税による財源確保案
これらを論じている。
実際にベーシックインカムが導入されることになれば、既存の年金や社会保険制度のように、一度国民から預かったお金を病気やケガ、年配者になってから給付するという従来の社会保障制度の見直しがされることになるだろう。
年金や社会保険のほか、育児手当のような支援もベーシックインカムに置き換えることができるため、そういった制度を縮小・廃止すれば財源の確保につながる。また、年金や社会保険制度などの縮小や廃止は、国民ひとりひとりの負担が軽減されるだけでなく、企業の負担軽減にもつながる。
また、ひろゆき氏はベーシックインカムが導入されれば、消費税増税も可能だという。
過去の景気対策としての消費税増税には反対していたひろゆき氏だが、仮に月7万円程度のベーシックインカムが導入されれば、消費税が増税されても多くの国民は気にならないはずだという。
確かに毎月7万円程度が給付され、年金や社会保険の支出も少なくなれば、消費税が今より数%程度上がったとしてもあまり気にしないかもしれない。
これは国民が国に預けたお金をなんらかの条件で給付されるという従来の社会保障制度とは逆の仕組みになる。国が国民にお金を給付してそこから税収という形で国にいくばくかのお金が戻るという流れだ。
新しい制度を導入するために既存の制度を見直し、ある程度の最適化が実現できれば財源の確保は可能ということだ。
●ベーシックインカム導入への大きすぎるハードル
・贅沢ができない程度の金額であれば人が働かなくなることはない
・実は財源の確保はできる
これらふたつの大きな課題を解消できるのであればベーシックインカム導入は現実味を帯びてくる。
しかし、今の日本でベーシックインカムの実現が不可能ともいえる大きな課題がある。
先に紹介したABEMAニュースの動画内で、元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏は、
「今の自民党政権とか既存の政党では絶対にできない」と断言している。
ベーシックインカムは、これまでやってきた政策や制度を「破壊していく」政策となるため「各省庁が猛反対する」というのだ。
また、実業家の堀江貴文氏も自身のYouTubeチャンネル「ホリエモンチャンネル」に公開した動画内で、ベーシックインカムが導入されない理由を「既得権が大きいから」と述べている。
堀江氏は動画の中で「ベーシックインカムは基本的に(生活保護など行政がおこなう)余計な仕事をなくすための仕組み」とも述べている。
この動画は今から約1年半前の2019年3月に公開された動画であるが、約3年半前の2017年3月に公開された動画では、生活保護の受給資格の審査に多くの時間とコストが使われていることを説明している。
年金や生活保護など既存の社会保障制度の縮小や廃止を可能とするベーシックインカムは、裏を返せばそうした社会保障制度の元で働いている人たちはもちろん、関連する事業や関わっている企業が必要なくなるということになる。
つまり、既存の制度に従事している人や企業にとっては死活問題となり、必ず反対する声が出てくる。
橋下氏が指摘していた既存の政党では難しいという見方についても、既存の社会保障制度を何十年にも渡って作り上げてきたものや、制度に関わる役人や職員の仕事を一掃してしまうことを簡単にはやめますとはいえない。
このような現在の制度とそれに関わる人と事業者の生活を考慮すると、どんなにベーシックインカムが優れた制度であったとしても、残念ながら今の日本ですぐにベーシックインカムの導入が決まることは難しいだろう。
これまでの日本をみれば、行政が既得権益を壊しても実行することは難しく、世界情勢などにより日本もベーシックインカム導入を迫られない状況にでもならない限り実施は困難かもしれない。
しかし、ベーシックインカムにより日本を救済できる…という時代が到来することに期待したい。
執筆:S-MAX編集部 2106bpm