韓国政府は日本政府の輸出規制に対して「最後通牒」を発した。写真は2013年8月、韓国・釜山の港の風景(写真:ロイター/Lee Jae-Won)

韓国政府は5月12日、日本政府の輸出規制に関して、問題を解決するための方法と立場を5月末までに明らかにせよと日本側に要求した。具体的な期限を示したことで、韓国政府が日本に対して事実上の「最後通牒」を出したとの見方が広がっている。

日本は2019年7月から、半導体やディスプレイの主要素材となるEUV(極紫外線)用フォトレジストやフルオリンポリイミド、高純度フッ化水素など3品目について、韓国へ輸出する際には個別に許可をとるように規制を強化した。また、ホワイト国(輸出手続き優遇国、グループA)リストから韓国を除外するなど、厳しい輸出規制を現在も維持している。

日本は輸出規制の原状復帰を

韓国・産業通商資源省のイ・ホヒョン貿易政策官は5月12日の記者会見で、「日本政府が輸出規制強化措置を発表してからまもなく1年を迎え、懸案の解決をこれ以上遅らせることはできない。5月末までに3品目とホワイトリストに関する問題を解決する方法について、日本側の具体的な立場を明らかにするよう促した」と述べた。

イ政策官は2019年12月と2020年3月に行われた日韓輸出管理政策対話において、韓国側の首席代表として出席、輸出規制問題について日本と議論をかわした。日本から出席した経済産業省の飯田陽一・貿易管理部長らとそれぞれ10〜16時間のマラソン会議となったものの、結論を出すことはできなかった。

韓国大統領府は2020年4月28日の国務会議で、「日本が輸出規制を行う中、日本側の指摘を韓国政府はすべて解消した。輸出規制の原状復帰などの措置を速やかにとるべきだ」と促したが、日本側はこれといった反応を示さなかった。イ政策官は「日本政府が懸案の解決に積極的になるための必要十分条件を韓国側はすべて示した。輸出管理分野での懸案を速やかに結論づけ、より発展的な方向へ日韓両国が進むことを希望する」と述べた。

日本が5月末までに回答しない場合、韓国政府は暫定的に留保しているGSOMIA(軍事情報包括保護協定)終了を再び検討、あるいはこれも留保している世界貿易機関(WTO)の紛争解決手続きを再開する可能性がある。イ政策官は「現在としては予断は許さない。日本側の肯定的な回答を期待している」と述べた。

韓国政府が5月末までに立場を表明せよと日本に最後通牒を送ったのは、2019年11月に終了を延長したGSOMIAについて再検討する時期に来たと判断したものと思われる。

韓国政府は2019年11月にGSOMIA終了を条件付きで延長すると発表した。その当時、具体的な延長期間は設定しなかったものの、実際には数カ月程度になると判断していた。GSOMIAは相手国に対して終了を通知しなければ1年単位で自動的に延長されるため、1年間このまま何もしないと、事実上GSOMIAは延長される。韓国政府はGSOMIAを継続させるためには、日本側がまず輸出規制措置を撤回すべきとの立場をとっている。

輸出規制と徴用工問題で溝は埋まらず

これに対し、日本は輸出規制に関する協議に消極的であるため、韓国政府としてもGSOMIAの終了を延期してから6カ月が経過し、日本が輸出規制を撤回する可能性があるかどうかを最終的に打診する必要があった。日韓外交当局は2020年4月、日本の輸出規制と元徴用工への賠償問題を議論する局長級協議を行ったが、依然として両国間の主張の溝を埋めることはできなかった。

韓国大統領府の高官は5月12日、「双方はこれまで水面下での対話を進めてきたが、日本側の誠意が見えないと聞いている。そのため、2019年11月に中断していたWTOへの提訴手続きを再開すべき状況に至ったと判断したものだ。輸出規制措置に対し、日本政府が何らかの行動をとるのかどうかを見極めなければならないが、日本の態度が変わらなければ韓国政府はこれ以上(GSOMIA終了の判断を)引き延ばすことは難しい」と述べた。

韓国政府はいったん日本からの回答を受け取った後、GSOMIAを終了させるかどうかを検討する計画だ。韓国外交省関係者は、「すべてのオプションがテーブルに載せられている。とはいえ、GSOMIAを終了するかどうかを本格的に検討する時期ではない。今は日本側にボールがある」と言う。

今回の最後通牒は、新型コロナウイルスによって輸出が厳しくなっている韓国企業にとって、将来への不安を1日でも早く取り除こうとする目的もあるようだ。前出のイ・ホヒョン貿易政策官は「韓国企業にとって将来への不安が高まっているため、その不安感をできるだけ解消したほうがいいという側面がある。あえてこの時期に5月末という期限を設定したことは、韓国側が原状回復に向けての条件をすべて満たしているため、これ以上(日本側に)時間を与える必要はないと判断したため」と明言した。(「ソウル新聞」2020年5月13日)