「銀座で鮨」と聞くとかなり敷居が高い印象を持ちがち。もちろん、リーズナブルな価格設定の店も多々あるけれど、せっかくなら本格的な江戸前鮨を心ゆくまで味わいたいものだ。銀座にある「鮨やまけん」は、まさにそんな条件にピッタリ。12月から提供される新メニューの試食会が行われたので、参加してきた。

熟成鮨がコースのメイン

○腕利きの板前が腕を振るう「鮨ダイニング」

「鮨やまけん」は、東銀座の駅から徒歩1分。昭和通りと晴海通りが交わる三原橋の交差点にあるビルの9階、2019年6月東銀座にオープンした鮨ダイニング。江戸前鮨にエンターテイメントを盛り込んだコースメニューが楽しめる、本格的且つちょっと風変わりなお店だ。エレベーターを降りると、店内は思った以上に広く、カウンター、個室、テーブル席合わせて50席が用意されている。

カウンター席で職人さんたちと会話しながら食事を楽しんでほしい

カウンター内で陣頭指揮を執りつつ握るのは、大将の東健志郎さん。老舗鮨店で腕を磨き料理長等を経験、「東京すしアカデミー」講師を務めた人物。カウンターに座ったお客さんと気さくに話す姿は、なんとなく頑固そうな江戸前鮨職人のイメージとは対照的で明るい感じ。来店したからには鮨が美味しいのはもちろん、楽しんで帰ってもらいたいという姿勢が伝わってきた。

真剣な表情で仕込み中の大将・東健志郎さん。今思えばこれはスフレ玉子の準備中だった模様

○趣向を凝らした鮨が続々と登場!

この日いただいたのは、新メニューを含んだおまかせコース「雅―Miyabi」(税込9,000円)。まずは旨味たっぷりな「貝だし」と「生いくら巻き」「いかと外子」等で期待を高めてから、「本日の津本式究極の血抜き熟成魚」3種へ。仕入れによって異なるそうで、この日は9日間熟成させた「シマアジ」、10日間熟成の「ツムブリ」、4日間熟成の「カワハギ」が次々と握られた。

熟成された「ツムブリ」。まったりと濃厚でたまらない味

最近、ブーム的で食べる機会も多い熟成鮨だが、「ツムブリ」はこれまで食べたどの熟成鮨にもない、まったりと濃厚な味で美味しかった。肝がシャリとネタの間に入った「カワハギ」も酒がすすむ。そうそう、生ビールから「メーカーズマークハイボール」、各地の日本酒、ワインまで、料理に合わせて選べるお酒の種類も豊富なのが嬉しい。

「煮アワビ」の肝ソースをちょっと残して、そこにご飯を加えてリゾットにしたり、途中で「九条ネギのお浸し」や「ピーマンの塩昆布和え」「季節の浅漬け」といったお口直し的な料理が絶妙なタイミングで挟み込まれたりと、緩急をつけてテンポよく料理が提供されるので、一品一品を新鮮に楽しく味わうことができる。

そんな中で登場したのが、ガラスのフタの中に煙が充満した一皿。フタを持ち上げると、モワ~と煙が立ち上がって、中から20日間熟成させたという「イサキの燻握り」が姿を現した。味だけでなく視覚と嗅覚にも訴えかけるところがこの店ならでは。

スモークの中から登場した「イサキの燻握り」は香りが最高

コース終盤のクライマックスは「金目の低温調理」、「生サバ」、「うにの手巻き」等で畳みかけ、「おはぎ」が登場。なんでここでおはぎ!?と思ったら、おはぎという名の「とろたく握り」だった。さらに「スフレ玉子」、コーヒーカップ風の容器に入った「舞茸入りの赤出汁」でエンディングへ。アンコールはデザート「クリームブリュレ」という具合に、まさにエンターテイメントな料理を満喫させてもらった。

「おはぎ」と言い張ってるけど、「とろたく握り」です

終盤でついに大好物のうにがキター!白ワインとも合う!じつはこれで7杯目のお酒でした。鮨が美味くて飲み過ぎた

舞茸入りの赤出汁が本当にホッとする味でなんだか幸せな気分になった。からしで味変もできる

○食とエンターテイメントで楽しんでもらいたい

銀座という立地を考えると、これで税込9,000円って相当リーズナブルだ。しかもなかなか他では食べられない趣向を凝らした鮨、料理ばかり。いったいどんな思いでオープンしたお店なのか?最後に「鮨やまけん」を運営する「S.H.N」の代表取締役・高橋竜太さんにお話を伺ってみた。

幼稚園からずっとサッカー一筋の人生だったという高橋さんは、高校卒業後に群馬のJ3(現JFL)に入団。しかし21歳のときに退団を余儀なくされ、サッカーで生きていくことを諦めて、新たな人生をスタートさせるべく飲食店で働いた資金を元手に25歳で独立したという。様々な飲食事業を展開するなかで、現在のテナントに出店するチャンスが訪れ、「銀座のド真ん中で勝負してみたい」という気持ちから、「鮨やまけん」をオープン。メニューは、お客さんに喜んでいただけるものを大将の東さんと相談して決めており、熟成鮨もその中から取り入れることになったそうだ。「色んな年代の方に幅広くご来店いただきたいですし、すべての人にご満足いただけるような食とエンターテイメントで楽しんでもらいたいです」(高橋代表)。

歌舞伎座の目の前のビルにあるということもあり、インバウンド需要が高まる2020年へ向けて、今後は海外の方にも店のことを知ってもらいたいとのこと。さらに海外への展開も考えており、この店を拠点に日本の食文化であるお鮨を海外の人々へ広めたいという。日本人の我々でも新鮮に感じる店だけに、クチコミでどんどん人気店になって行きそうだ。きっと想像以上の満足感が得られると思うので、銀座を訪れる際には是非足を運んでみてほしい。

●information

「鮨やまけん」

東京都中央区銀座5-13-19 デュープレックスタワー銀座9F

営業時間:17時~23時30分

(LO.フード21時30分/ドリンク23時)

休:無

○著者:岡本貴之 1971年新潟県生まれのフリーライター。音楽取材の他、グルメ 取材、様々なカルチャーの体験レポート等、多岐にわたり取材・ 執筆している。好きなRCサクセションのアルバムは『BLUE』。趣味はプロレス・格闘技観戦。著書は『I LIKE YOU 忌野清志郎』(岡本貴之編・河出書房新社)」