毎年のお盆の夜空を賑わせてくれるペルセウス座流星群の母体であるスイフト・タットル彗星は、1862年に発見されたものだが、回帰予想時期の1981年から1982年にかけては結局出現せず、それ以降この彗星は実は行方不明になっていた。

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 その後イギリスの天文学者ブライアン・マースデンにより、軌道の再計算が行われ、スイフト・タットル彗星の次回の地球接近時期は1992年と予想された。この情報に基づき世界中で捜索活動が展開されたのである。

 そしてこの彗星の行方を見事突き止めたのが、日本の彗星捜索家として有名な木内鶴彦氏である。1992年の木内氏による再発見により、この彗星のより正確な軌道計算が可能になったのだ。この発見からしばらくしてブライアン・マースデンにより、とんでもない計算結果がもたらされたのである。

 スイフト・タットル彗星が2126年8月14日午前10時35分ごろ(日本時間)、インド洋あたりに衝突すると言うのである。この彗星は直径が20kmもあり、およそ6000万年前に地球に衝突し、恐竜を滅亡させた小惑星に匹敵する。これは、すなわち人類滅亡の恐れがあるということを意味するのである。

 衝突は100年以上先の話だが、人類の文明があと100年足らずで終わってしまうと言うのだから、自分たちが死んでからのことだとタカを括ってもいられない。ただし、この話題は、21世紀以降忘れ去られていた感がある。今日はその後この話がどうなったのかについて、紹介をしておこう。

 最新のNASAからの情報では、2126年8月5日に月と地球の距離の約60倍のところまで接近するとのことで、人類滅亡の危機はどうやら解消されたようである。

 彗星の軌道計算は普通の惑星と比べると極めて難度が高い。その理由は、太陽接近に伴い、彗星本体が温度上昇し、ガスを噴出、これがブレーキの役割を果たすためである。

  ガスがどのくらいの勢いでどのくらいの時間に渡って噴出されるのかは予想が困難なため、軌道計算の精度を上げるには、出来るだけ新しい観測データを積み上げて行くしかない。マースデンの報告に比べて、NASAからの最新情報に大きなズレが生じたのもこのような理由による。

 読者の中には、不安になった人もいるかもしれないが、これで今夜から安心して眠れることだろう。