バレンタインデーを前に先日、「職場内バレンタインデー禁止令」なるものがネット上で話題になりました。「遊びを会社に持ち込まない」などの理由で、職場でチョコレートなどバレンタインデーの贈り物をすることを会社が禁じるものですが、これに関する日本法規情報(東京都新宿区)の調査で、「賛成」が37%、「反対」が10%、「どちらともいえない」が53%だったそうです。

 職場でのバレンタインデーについて、職場のコミュニケーション術に詳しい、人材開発コンサルタントでコラムニストの松尾知枝さんに聞きました。

混乱を避けるための一つの方法

Q.職場でバレンタインデーの贈り物(義理チョコ)をすることを、どのように思われますか。

松尾さん「贈り物をすること自体は、よいことだと思います。ギフトによって職場の人間関係がよりスムーズになり、業務効率に間接的に寄与するのなら問題ないのではと思います。ただし、次の2点に留意しましょう。

(1)心理的・経済的な負担が重くない程度であること
義理チョコを用意する側にとって、心理的・金銭的にあまり負担になりすぎない範囲であれば、用意してもよいのではないかと思います。

(2)強要があってはいけない
義理チョコは、あくまでも自由な贈与であるべきで、期待や強要をするのは論外です。上下関係の存在する職場では、一歩間違えるとパワハラやセクハラになりかねません。強要することが、職場の人間関係に男女関係をにおわせる雰囲気や誤解を与えかねない、例えば、『義理で渡しているのに、本命だと誤解される』といったリスクもあります。

この2点を確実にクリアできているなら、問題ないと思います。

ちなみに、私の会社が運営する婚活サービスの登録者700人以上に聞いたところ、女性からは『高級チョコ倍返しなら悪くない』『男性が楽しみにしていて、女性もお裾分けをもらう楽しいイベント』『普段お世話になっている人に感謝の気持ちを伝えられる』といった肯定的な声の一方、『女性が多い職場では、男性のお返しの負担が大きい』『男の人もお返しが大変というのもあり、部署で話し合いをして、義理チョコを廃止した』という声もありました。

男性からは『義理でもうれしい』という人がいる一方、『正直めんどくさい。返すことを覚えてなきゃいけないのが一番しんどい』と否定的な声もありました」

Q.職場での義理チョコは、どのようなあり方が望ましいでしょうか。

松尾さん「『本音では面倒くさいけれど、社内文化的にあげないのも気まずい』という場合、一目で見て『義理』と分かる金額のものを箱買いして、職場のお菓子スペースなどに設置するのはいかがでしょうか」

Q.「職場内バレンタインデー禁止令」について、どのように思われますか。

松尾さん「極端過ぎる気がしないでもありませんが、『ご自由に』と言われると、贈る人と、贈らない人の間で気が引けることがあるかもしれないので、一律のルールを設けるのは、混乱を避ける一つの方法だとは思います」

Q.「職場内バレンタインデー禁止令」の賛否の結果について、どのように思われますか。

松尾さん「贈り物をすることのメリットより、デメリット(心理的・経済的負担)を感じる方が大半という印象を受けます。であれば、無理をしてまで義理チョコを贈らなくてもいいのではと思います。

私がかつて勤務した航空会社では、虚礼廃止が徹底されていました。女性の職場で元々バレンタインデーの文化はなかったのですが、年賀状を出すことが事実上禁止されていました。その理由は、年末年始関係なく乗務しており、関わる乗務員の数も多いので、年賀状を贈り合うことが業務の負担になってはいけないからというものでした。

職場は、あくまで業務を遂行する場所であり、義理チョコを誰に渡すのか、予算配分はどうするのかなどを巡って仕事の妨げになるレベルであれば、『義理チョコ禁止令』なるルールが存在しても全く不思議ではないと思います。

働く構成人員や社内の男女比率は毎年変わることが予想されるので、毎年ルールを見直して、働く人たちの意識に一番フィットする方法を模索していけばいいと思います」