そもそも海外に移籍したという事実より、現地でどんな活躍をしたかの方が重要だ。移籍しただけでニュースにするのは、もう止めにしてほしいね。それはニュースではなく、単なる“報告”だよ。実力を過大評価して報じ続けた結果、どうなったか。ワールドカップで散々な目に遭ったのをもう忘れたのかな。
 
 この前も、香川や柿谷が久々にゴールを決めてニュースになったけど、どちらもカップ戦で、相手は2部のクラブ。スイスのボーレンって、どこのチームなの? これで復活と言われても腑に落ちないね。バイエルン相手に2点取ったなら分かるけど、現実を見極めて事実を正しく伝えるのがメディアの仕事だよ。
 
武藤にしろ、柴崎にしろ、南野にしても、彼らが海外に行くことに反対しているわけではない。要は、向こうに行ってなにができるか。海外移籍自体に、いちいち騒ぎ立てるのはまったく無意味だよ。
 来年のワールドカップを見据え、カナダ遠征に出向いたなでしこジャパンが、現地でカナダ代表と2試合を戦って、それぞれ3-0、3-2と勝利した。
 
 連勝を飾り、いい形で今年最後の活動を終えたけど、ワールドカップの開催国でもあるカナダが優勝候補かどうかをよく考えて、評価を下すべきだね。優勝を争うライバルは、あくまでもアメリカやドイツだ。カナダに勝ったところで安心していては危険だよ。
 
 メンバーの顔ぶれが相変わらず代わり映えしないのも気がかりな点だ。少し前のアジア大会で試された若い選手たちは、今回のメンバーにはほとんどいなかった。
 
 もし、これでワールドカップで優勝できなければ、それは今の中心メンバーの時代の終焉を意味すると同時に、今後しばらく、なでしこジャパンが世界の舞台で苦戦するであろうことを容易に想像させてしまう。なぜなら、次の世代が育ってきていないんだから。
 
 これは男子についても同じことが言えるかもしれない。かつては新しい世代が常に台頭していた充実の時期があったけど、今はJリーグも先細りしてきているし、危機感は持っておいたほうがいい。
 
 周知のとおり、U-16とU-19は世界行きを逃し、U-21もアジア大会でベスト8止まり。アジアを勝ち抜けない彼らが何年後かにA代表の中心となった時、どんな事態になるのか。今年のアンダー世代の敗退は、未来に向けた警告と捉えるべきだよ。