今季のフィギュアがいよいよスタート。ソチ五輪金メダリストの羽生結弦選手(19)は、11月7日からの中国杯で初戦を迎える。だが、万全ではない体調以外にも彼の前には大きな問題が立ちはだかっているという。

「国際スケート連盟(ISU)が、ルール変更を発表しました。国際大会では名前をコールされた後、決められた時間内にスタート位置へ着かなければいけません。選手が静止すると音楽が流れ始め演技を始めます。そのスタート位置に着くまでの時間が、これまでの60秒以内から30秒以内に短縮されたのです。30秒以上になると減点、60秒以上だと棄権という厳しい改正です。羽生選手はこれまで約46秒かけていましたから、新ルールを聞いた瞬間『えっ!』と絶句し、明らかに困惑した様子でした」(前出・フィギュア関係者)

 羽生の“46秒”は、次のようなものだ。自分の名がアナウンスされるとリンクの縁に両手をつけ、1度深く屈伸。リンクを滑り始めて、スケート靴の刃の状態を確かめるように周回。体をひねりながら入念にジャンプのタイミングを確認し、スピードを落として胸で十字を切るように士の字を書く。胸の前で手を合わせて祈るような仕草をみせ、スタート位置で集中に入る……。

競技前に十字を切るのは、ジャンプの回転軸と両肩を平行に保つ意識を確認するためだという。これらは羽生にとっては、どれひとつ欠かせないものだ。

「今までの46秒を30秒に短縮するのに、羽生選手はすでに1カ月以上もの時間を試行錯誤のために費やしています。実は、彼にとって16秒の時間を減らすことは、4回転ジャンプを跳ぶこと以上に難しい課題です。このままでは、羽生選手の大切な儀式である“勝利の祈り”も封印せざるを得なくなります」(別のフィギュア関係者)

 ルール改正の理由は――。

「ISUの羽生選手に対する“嫌がらせ”という声もあります。これまでもISUは浅田真央選手のトリプルアクセルのジャッジを変えたり、日本人選手の不利になるようなルール変更が何度もありました。欧米の選手達と違い演技前の精神統一に時間をかける羽生選手にとって、新ルールが足枷にならなければいいのですが……」(別のスケート関係者)