もっとも、世の中には、日本代表を必要以上に強く見せたがっている人がいることも事実。日本のサッカー産業を支えているのは紛れもなく日本代表だ。それが強そうに見えなければ、産業は好転しない。ものは売れない。視聴率は伸びない。メディアもその一員に含まれる。

 とはいえ、そうしたメディアの実態を知ってしまったファンが急増していることも事実だ。ブラジルW杯における惨敗は、メディアの応援報道の弊害をも浮き彫りにした。メディアの信頼度は低下した状態にある。話を半分疑って掛かろうとする人はグッと増えている。従来の手法は、通じにくくなりつつある。

 ザッケローニは、従来の手法と相性がいい監督だった。80%で臨んで来る相手に90%の力で対抗。その結果、勝利を重ねた。アギーレはどうなのか。僕には非ザッケローニ的な、テスト好きな監督に見える。日本のメディアがこれまでと同様に、商売重視の応援報道に走るなら、両者は良好な関係にあるとは言えない。

 アジア大会の韓国戦のような敗戦を、どれほど容認できるか。メディアはどれほど耐えることができるか。メディアの一員として言わせてもらうなら、アギーレより心配になるのはこちらの側だ。設定をあえて低くして臨んでくる相手に勝利し、大喜びする姿はあまりにも愚か。他人の振り見て我が振り直せ。アジア大会の準々決勝は、そうした意味でとても良いサンプルだったと僕は思う。