フルスイングをさせない投球術・薩南工
完封勝利で2回戦へと駒を進め、喜ぶ薩南工業バッテリー(左:中尾 右:上塩入)
薩南工は初回、併殺崩れで1点を先制し、2回は1番・冷水辰綺(2年)のセンター前タイムリーで2点目を挙げた。5回は冷水の二塁打を皮切りに、3番・下野稔和(2年)のライト前タイムリーで貴重な追加点を奪った。先発の上塩入健人(2年)は直球と変化球の緩急で鹿児島商打線に狙い球を絞らせず、散発3安打で完封した。
薩南工は上塩入―中尾大晟(2年)バッテリーの「フルスイングをさせない」(夏越勝三監督)投球術が冴えた。「ブルペンからボールが走っていて、きょうは行けると思った」と捕手・中尾。基本的な投球の組み立てはスライダー、カーブを意識させつつ、直球で押す緩急を使うことだ。鹿児島商の打者は狙い球が絞れず、早打ちして凡ゴロやフライを打ち上げることが多かった。9回まで要した投球数はわずか106。1イニング10球以下で打ち取った回も6イニングあった。
「夏の反省を生かして、1球1球集中することを考えた」と上塩入。夏の県大会初戦の川辺戦では、好投しながら七回に不用意に投げたカーブを打たれて、その1点に泣いた。
「もっとリードを頑張らないと」と痛感した中尾は「3年生を全校応援に連れてくる」ことを今大会の目標に掲げて精進した。
スライダーのキレ、直球の球威の緩急で相手にジャストミートさせない投球術が通用することを2人で証明してみせた。夏越監督は、1年秋から正捕手をつけている中尾が「1年間で大きく成長してくれた」ことを勝因に挙げていた。
(文=政 純一郎)