中国共産党は2013年秋、いわゆる「一人っ子政策」の転換を正式決定した。規則改正は地方政府がそれぞれの日程で進めているが、大部分の地域では、2人目の子を出産できることになった。政策転換の理由は急速に進行しつつある少子高齢化に歯止めをかけるためだが、出生数の増加は、それほど見込めないという。中国新聞社などが報じた。

 中国では少子高齢化にともない、高齢者の扶養が大きな問題になった。労働人口も減少しはじめており、産業への影響も懸念されている。中国政府は内需拡大を経済活性化の必須条件としている。そのために、社会保険などを充実させていく考えだが、少子高齢化は「強い逆風」となる。そのため、いわゆる「一人っ子政策」の見直しをせざるをえないことになった。

 新たなルールは「夫婦のどちらかに兄弟姉妹がいない場合、2人目の子を出産できる」だ。一人っ子政策が本格的に始まったのは1970年代末で、その当時生まれた人はすでに30歳を超えており、今後は多くの夫婦が2人目の子を持てるようになる。

しかし、出生数の増加は、それほど見込めないという。現在、2人目の子の出産を検討する年代の夫婦は、全国で1100万組程度とされる。しかし、住居、養育費、さらに子育てのための時間を作れるかなどさまざまな制約があるので、実際に2人目の子を作る夫婦はさらに少ない。

 「夫婦のどちらかに、兄弟姉妹がいない」という条件を満たす夫婦の6割程度が、「2人の子を持ちたい」との考えを示したという調査結果がある。

 しかし、中国各地の当局は、出産が集中することを防止するために、「2人目の出産も可能」としながらも、出産時期に間を置かせる措置を設けている。そのことも、出産数の増加を牽制(けんせい)することになる。

 当面は、出産数はやや増えるものの、2000年前後の規模を維持するとみられており、ベビーブームの到来はあまり考えられないという。

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◆解説◆
 「一人っ子政策」がもたらした、もうひとつの「社会のひずみ」として、男女の出生数の不均衡がある。自然な状態における男児と女児の出生比率は104-106:100程度とされるが、中国では2004年には同比率が121.2:100になった。広東省では07年時点で130:100となった。

 男児が異常に増えたのは、「子はひとりだけ」との制限があるので、妊娠した場合、胎児の性別が女と分かったとたん、人工中絶する親が相次いだためだ。男児を求めるのは伝統的な男尊女卑の考え方以外に、女の子の場合は「嫁いだら、別の家に行ってしまう。老後の面倒を見てくれる子がいなくなる」と、不安を感じる人が多いからという。社会福祉の整備の遅れが、アンバランスな男女の出生比率にも影響した。

 中国当局は、医学的に理由がある場合以外の胎児の性別判定を厳禁したが、現在もさまざまな抜け道で、性別判定が行われているとされる。男児の出生が異常に増えたので、「2020年には結婚適齢期の男性3000万人が、相手女性のいないことになる」との試算も発表された。(編集担当:如月隼人)