ライオンズの新外国人選手、コーディ・ランサム選手は来月17日で38歳となる。38歳で来日した選手として思い出されるのは、2000年にライオンズでプレーをしたトニー・フェルナンデス選手だ。フェルナンデス選手は38歳という年齢ではあったが、現役メジャーリーガーでもあった。ライオンズにやってくる前年もトロントで142試合に出場し、.328というハイアベレージを残している。元々ホームランバッターではないため、ホームランこそ11本で終わったが、しかしライオンズに与えた好影響は計り知れないものがあった。当時の堤義明オーナーも「今までのライオンズにないものをアメリカから持って来てくれた。ありがとうを言いに行かせる」と最大限の賛辞を送っていたほどだった。

ランサム選手は、フェルナンデス選手ほど実績のある選手ではない。メジャーではレギュラーを獲得したこともなく、鈴木葉留彦球団本部長もランサム選手の打撃を「荒削り」と評している。荒削りということは、3割という打率を求めてアメリカから呼んできたというわけではないのだろう。だが球速というものを見ると、MLBのアベレージよりもNPBの方が遅い。MLBではどの投手も150km以上を投げ込んでくるが、NPBではライオンズだけを見ても150kmを常時マークできるのはウィリアムス投手と、コンディションが良い時の菊池雄星投手くらいだろう。配球面に関してはNPBもMLBには決して引けをとってはいない。だが球速や球威というものを見ると、NPBはMLBよりは劣ると言わざるを得ない。

38歳という年齢であっても、ランサム選手が活躍できる見込みは十分にある。その理由は以前一緒にプレーをしていたことから、松井秀喜選手にアドバイスを貰っているからだ。そのアドバイスとは、右対右の順手対決の際は少しだけホームベース寄りに立ち、反対方向を意識して打てば率を残せる、というものだったらしい。これはまさにその通りであり、トニー・フェルナンデス選手もこれが出来ていたからこそ、38歳でもあれだけのハイアベレージを残すことが出来たのだ。更に言えばMLBで何度も首位打者を獲得しているトニー・グウィン選手もまた、これを実践している打者だった。

来日する外国人打者のほとんどは長打を求められてやってくる。つまりはクリーンナップ候補ということだ。だがランサム選手の場合は6番を打つことが前提となっている。3割30本打ってくれれば嬉しいが、しかし西武球団もそこまでを求めてはいないはずだ。.280で25本、もしくは3割20本程度でもROI(費用対効果)の評価は高まるだろう。ライオンズには現在、かなり強力な和製クリーンナップの存在がある。浅村栄斗選手中村剛也選手坂田遼選手のトリオが怪我なく機能すれば、この3人で100本塁打は軽くクリアしていくだろう。この3人が前にいるからこそ、ランサム選手は無理に長打を狙う必要はないのだ。それはもちろんランサム選手自身よく分かっているはずだ。

なおアメリカ時代のランサム選手は様々な球団で新庄剛志選手、松井稼頭央選手、斉藤隆投手、松井秀喜選手ら日本人選手とチームメイトだった経験を持つ。そこでは日本野球のあらゆることを伝え聞いたようだ。ランサム選手が持つその情報は、日本で活躍するにあたり大きな武器となるだろう。野球とは消耗戦であり情報戦でもある。プレーをする体力はプロならば誰もが持っている。だが情報に関してはしっかりと持っている選手は意外と多くはない。例えば日本人選手ですら、未だに感性のみでプレーをして10年持たずに球界を去る選手も多いほどだ。だがランサム選手には体力に加え情報もある。日本人投手がどのような配球を見せるのかも、かつてチームメイトだった日本人選手たちから耳にしているはずだ。

トニー・フェルナンデス選手はライオンズでは主に3〜4番を打っていた。だが繰り返すが和製クリーンナップトリオにトラブルが生じなければ、ランサム選手は基本的には6番を打つことが内定している。筆者個人としては、選手としての姿勢はフェルナンデス選手のような影響力を持ち、プレー面では例えば昨季までバファローズでプレーをしたバルディリス選手のようなタイプになってもらいたいと期待している。フェルナンデス選手はライオンズではサードを守っていたが、本来は名ショートストッパーだった。そしてランサム選手も守備には自信を持っている。そして外部からの評価も高いため、安心してサードを任せることができるだろう。守備に不安がなく、4番を務めなければならないというプレッシャーもない。更には日本野球に関する豊富な情報も持っている。ということはランサム選手が日本で活躍する可能性は非常に高いと見て良いのではないだろうか。ランサム選手の活躍次第で今季のライオンズのクリーンナップはトリオではなく、カルテットになるかもしれない。筆者はそんな期待さえ密かに抱いているのである。