現在放映中のドラマ『Woman』(日本テレビ系・毎週水曜日22:00〜)にハマっている。
満島ひかりさん演じるシングルマザーが、数々の困難に直面しながら2人の子供を育てるという社会派ドラマとして話題になっている。



“社会派ドラマ”と気軽に言ってしまったが、この『Woman』、かなりヘビーな作品である。公共料金を滞納したり、あまりの生活苦に生活保護を申請したり、夜のアルバイトに出ている間に子どもがボヤを起こしてしまった結果、児童相談所職員から子どもをよそへ預けることを勧められたり、主人公の置かれている境遇がまずハード。

物語が進むにつれ、夫が事故で亡くなった経緯が明るみになったり、幼少期に自分を捨てた母親の新しい家族も登場。さらに複雑な様相や、そして主人公が難病に犯されていることが判明し……とこれでもかという試練が畳み掛けてくる。

当ドラマに対するツイッターでの反応も、「重い」「暗い」「可哀想」でほぼ占められている。その3ワードで、「重くて暗くて可哀想だけど見る価値がある」と高く評価する声もあれば、「重くて暗くて可哀想で見ていられない」とネガティブな印象として挙げている人もいる。

大きく賛否が分かれているところであるが、手放しで「面白い!次回も楽しみ!」と絶賛している人はごく少数だ。

このドラマの初回放送を見た時、頭にパっと浮かんだのは映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のことだった。アイスランドの人気女性歌手、ビョークが主演し、2000年のカンヌ映画祭では最高賞であるパルム・ドールと主演女優賞を受賞した作品だが、ビョーク演じる主人公が先天性の病気により徐々に視力を失っていく、

また1人で子どもを育てているという設定もあり、『Woman』と少しカブるな、と感じた。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』、ネタバレになってしまうので詳しくあらすじは明かさないが、鑑賞した当時の私の感想は、ただ一言「悲惨」であった。純粋で真面目な女性がああなってこうなって、そして結末は……と思い出すだけでも顔が真っ青になりそう。

『Woman』の制作陣が『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を意識しているとは思っていないが、『Woman』も回を追うごとに不幸の色合いが濃くなっていっているので、どうか『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のようなラストにはならないでくれ、と祈っているのである。


産後、テレビはもっぱらながら見するか録画しておいて後日視聴するかで、『Woman』もなかなかリアルタイムでは見られず毎週録画しているが、娘のお昼寝の隙などを狙って集中して見るようにしている。

毎回「おう、次はこういう展開か……これまた鬱展開だな……ツラいな……」とテレビの前で拳を握り締め、固唾を呑んでいる。もちろん、多少のアラもあるし、設定にも無理は感じるのだが、息つく間もなく1時間集中した後は、同じ時間の運動をしたくらいの消耗っぷり。

ただでさえ日々育児で体力も気力も使っているのだから、テレビくらい娯楽目的で気楽に見ればいいんじゃないの、と自分でも思うのだが、視聴後は、「あ〜、このツラい話がフィクションでよかった!」と胸を撫で下ろすので、いいリフレッシュというか、ショック療法?とでもいうか。

また、個人的に見所なのは、満島ひかりさんの汗のかき方。化粧っけのない顔に浮かぶ汗が何だかとてもリアル。ああ、子どもいるとすっごく汗かくよね……抱っこしたり走ったかと思ったら急に立ち止まったりして、でもそんなにまめに汗拭いてられなくて汗だくになるよね……とディティールに共感している。


子どもを持ってみて一番の心境の変化といえば、娘に限らず子どもがとにかく可愛く思えるようになったことだ。身近に子どもがあまりいなかったせいもあるが、妊娠する前は子どもが苦手だったのに、今となっては街行く子どもを見るたびにニヤニヤしてしまうし、隙あらば話しかけ、笑いかけたくなる。

だからこそ、子どもが事故に巻き込まれたり、犯罪の犠牲となるニュースには物凄く心が痛むし、そのたびに「これが我が身に振りかかったことだとしたら?」と想像するようになった。子を持つ親なら誰しも同じ経験をしているのではないだろうか?

いつも不幸事を予想しながら生活するのは少し大袈裟かもしれない、でもどんな事故や犯罪も隣り合わせだろう。隣町で事件が発生することもあれば、1本後の電車で事故が起こることもある。


先日、電子書籍アプリのキャンペーンで『ブラック・ジャック』が無料閲覧可能だったので、アプリをダウンロードした。もはや説明も不要な手塚治虫先生による医療マンガの大傑作。

昔から大好きな作品で、親子愛を描いたエピソードが数多くあるので、大人になって、子どもができたらまた違う捉え方ができるだろうなと楽しみにしていた。しかし久しぶりに読み返すと、当時「親子愛」と簡単に片付けていた描写が物凄く重く感じ、読み進めるのがツラくなった。

自分がこのエピソードの親の立場だったらどんな想いだろう?と想像するだけで胸が苦しくなり涙がこぼれた。1冊分読み終わる頃には自分の涙で溺れるんじゃないかと思うくらい泣いていた……ズルズル鼻水と涙をこぼしている私を、何も知らない娘がキョトンとした顔で見上げていた。

漫画に限らず、映画や小説も、子どもができたら改めて触れてみようと決めていた作品がたくさんある。いずれもお気に入りの作品だし、次はどんな感想を抱くようになるのかがとても楽しみな反面、今回読み返した『ブラック・ジャック』のように手に取るのが怖いような気持ちも。それだけ日々の育児で感情が揺さぶられているという証拠なのかもしれない。


ただ産後、映画に関しては嗜好が変わったということは特になく、血がたくさん出たり、人がたくさん死ぬようなバイオレンスものが変わらず大好きな私。この辺はまったく、「もし娘がこの場に居合わせたら……」なんて現実と重ね合わせることはなく、都合のよい頭の構造のようだ。

さて、今週の『Woman』はどうだろう。今回もすごい展開になりそうで、楽しみ半分、怖さ半分、である。

真貝 友香(しんがい ゆか)
ソフトウェア開発職、携帯向け音楽配信事業にて社内SEを経験した後、マーケティング業務に従事。高校生からOLまで女性をターゲットにしたリサーチをメインに調査・分析業務を行う。現在は夫・2012年12月生まれの娘と都内在住。