家族や恋愛、お金や仕事など、日常における悩みは多いもの。ここでは、心理学者の平松隆円さんがマイナビニュースのQ&Aコーナーに寄せられた悩みにお答えします。

今回のお悩みタイトルは、「うちのオウムが夜中の2時に"いくさじゃあああああああああ!"と叫ぶので困っています」です。

■質問

かなりでかいオウムを飼っているのですが、今までまったく言葉を話しませんでした。

ところが先日とある時代映画をみせたところ、映画の中のセリフを覚えてしまいました。 言葉を話すようになったのはいいのですが、夜中の2時に「いくさじゃあああああああああああああああ!」とか「切腹する所存でゴザイマス」とかしゃべっています。

夜中にそれをされるととても怖いので、なんとかして普通の「おはよう」とか「ごはん食べる」といったセリフを覚えさせたいです。どうすればよいでしょうか?

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■回答

言葉は教えるものではなく、話しかけるもの。

「いくさじゃあああああああああああああああ!」とか「切腹する所存でゴザイマス」でなくても、夜中に話し出すのは困ったものですね。でも、「助けて!」とかじゃないだけ、いいかもしれませんよ。オウムもインコも飼ったことがないので、どんな言葉を、どうやって覚えるのかについては一般的な知識しかありません。「おはよう」などの普通の言葉を覚えたら、「いくさじゃあああああああああああああああ!」を忘れるようになるのかもわかりません。ごめんなさい。相談の答えにならないですよね。でも、一ついえることは、言葉は覚えさせようとしてもダメだということ。それは、オウムに限らず人間だってそうですよね。

人間の場合、この世界に生まれたときには、どんな言葉も話せません。最初は、周囲の大人の声などに対して泣いたり、叫んだり、笑ったりという反射的な発生をするだけです。とうてい言葉ともいえませんし、ましてこちらの話していることが理解できているかということも、わかりません。ですが、だからといって、このときに話しかけることをやめてしまったら、子どもは言葉を習得することはできないのです。

人間は、生後9ヶ月くらいから言葉を発しだします。ですが、それより前の生後6ヶ月くらいに、人から話しかけられている言葉には意味がある、ということに気づきます。すると、周囲の大人が話しかけると、その意味を知ろうとして、相手の顔をじっと見たりします。誰かが話したら注目する、そして話し終わったら自分が話す番だとわかる」この会話の基本を学ぶことから、言葉を覚え、話し出すのです。

会話の基本を学ぶことで、言葉を覚え始めます。まずは一語発話から。そして次第に、二語発話、三語発話と増えていくのです。これは、人間だけではなく、オウムやインコにも当てはまると思います。オウムやインコは、群れをつくって生活している鳥です。群れを作るということは、コミュニケーションが必要になってきます。そのコミュニケーションは、声が使われているんです。つまり、オウムやインコは会話でコミュニケーションをとっているのです。ペットのオウムやインコにとって飼い主は、大事な仲間。だからこそ、コミュニケーションをとろうとして人間の言葉を覚えようとするんです。

ですので、言葉を覚えさせようとするのではなく、話しかけて会話をしてあげれば、きっと新しい言葉を覚えてくれるはずです。あせらず、人間の赤ん坊と同じように接してあげてくださいね。

(イラスト: のでこ)

○著者プロフィール

平松隆円…化粧心理学者 / 大学教員

1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。国際日本文化研究センター講師や京都大学中核機関研究員などを経て、現在はタイ国立チュラロンコーン大学講師。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。よそおいに関する研究で日本文化を解き明かしている。NTV『所さんの目がテン! 』、CX『めざましどようび』、NHK『極める 中越典子の京美人学』など番組出演も多数。主著『化粧にみる日本文化』(水曜社)は関西大学入試問題に採用されるなど、研究者以外にも反響を呼んだ。ほかに『黒髪と美女の日本史』(水曜社)など。

(平松隆円)