言葉巧みに接近してきて金品を奪う悪徳商法や、いったんハマればまともな社会生活が送れなくなるカルト宗教など、巧妙なマインドコンロールを仕掛ける魔の手が若者たちを狙っている。「まさか、このオレが……」「なんで、あんなバカな話に……」という事態はなぜ起きるのか? その巧みな心理操作の実態を“だまされのプロ”であるキャッチセールス評論家の多田文明(ただ・ふみあき)氏に聞く!

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最近の悪徳商法は、すごく巧妙になっています。以前は路上でのキャッチセールスが主流でしたが、規制が厳しくなり、代わりに使われているのがSNS。今はいつもスマホを見ていて、書き込みしたら、すぐに返事が来るじゃないですか? ネットで知り合ってから、実際に会うまでのスピードが速くなった。スマホの登場で、だまされやすくなっているのです。

手口で多いのは、競馬投資情報などのギャンブル系や「人妻とやれる」などと誘うアダルト系。うっかりそんなメールやSNSの誘いをクリックして、携帯番号を入力してしまったら、すぐ電話がかかってきます。1、2回目の電話では「どれくらい稼ぎたいの?」「給料はいくら?」などと情報を集めて、だませる人かどうかを見極めるんです。ようやく3回目くらいに、「あなたは信頼のおける人だ。競馬のヤラセ情報を30万円で買わないか?」などと言ってきます。

その後の手口で巧妙なのは、利用者から電話をかけさせること。指定された時間にピタリとかけたら、「やはり、あなたは信用できる」とほめられたりする(笑)。自ら電話させることで自主的に行動しているという意識を持たせ、「ぜひ情報を聞きたい」という心理状態にさせられるのです。

デート商法も非常に巧みですよ。私の体験ですが、夜に若い女性から「アンケートです」と電話がかかってきました。いろんな話をして、すごく楽しい。「ワインは何が好きですか?」と聞くから、「黒」と答えたら大爆笑。何を言っても笑ってくれて、「会ってみたい」と思わされ、いざ会ったら美人でね。「私のすべてを知ってほしい」と言われ、「知ってあげるよ〜」と思いました(笑)。

ところが「私の職場を知ってほしい」と頼まれ、ついていったら宝石販売会場……。現場では手を握ってきたり、目を見つめながら耳に息を吹きかけてきたりと積極的なスキンシップ。最初は「ダイヤを売りたい」とは言わないので、「付き合えるんじゃないか」と思わされましたよ。

このように、勧誘場所についていくと、なかなか逃げられないから厄介です。壁で囲まれた席に座らされて、隣に人を配置されてしまえば、その人を飛び越えないと逃げられないでしょ? 業者はそんな状況をいいことに、厳しいセリフも織り交ぜながら精神的に追い詰めてきます。でも、その場から逃げ出したい一心で、「後でクーリングオフすればいいから」と契約してしまうのは絶対にダメ。

私はある勧誘場所に連れていかれ、途中で帰ろうとしたら、「人の話の途中で帰るなんて失礼じゃないか!」と言われたことがあります。「おまえが失礼だろ! 勝手に4時間も話して」と言いたい気持ちをグッと抑えて帰りました(笑)。

若い女性に「そんな態度だから結婚できないのよ!」とののしられたこともありましたが、怒ったら相手の思うつぼ。「あなたのことを真剣に考えているから言っているのよ」と反撃のスキを与えてしまいます。日本人は人がいいから話を最後まで聞いて、両者納得の上で帰ろうとしますが、連れ込まれて、一方的に話をされているんだから、途中で勝手に帰っていいんです。

(取材・文/宮崎俊哉 中島大輔 渋谷 淳 撮影/伊藤晴世)

■週刊プレイボーイ23号「キミを狙う極悪マインドコントロールから心を守れ!!」より