専門医などの取材ではっきりしたことは、日中の睡魔の陰に、Aさんのようなパターンの他にも、さまざまな種類の病気がある点だ。睡眠障害を誘発する代表的な病気に次のようなものがある。

《睡眠時無呼吸症候群》
 前述のように、この病気は日中に強い眠気が出る。特に中高年男性に多く、家族から「ひどいイビキをかく」と注意され、メタボならかなり罹患(りかん)の可能性が大きい。肥満などで気道がふさがれ、睡眠中に何度も無呼吸状態を繰り返す。眠りが浅く熟睡できなくなるだけでなく、怖いのは、呼吸が止まり酸素が体中に回らなくなると、毎晩、低酸素血症の状態になり、突然死や心筋梗塞や脳梗塞、高血圧の原因になること。大相撲の元横綱大乃国、現横綱の白鵬も同じ病気を抱えている。大乃国は、この病気が因で引退を決意した。また、プロレスラーの橋本真也が現役のまま早くに亡くなったのも、この病気が原因といわれる。

《慢性疲労症候群》
 受診する患者の中には、絶対的に睡眠時間が足りていない場合がある。「行動誘発性睡眠不足症候群」ともいわれるが、慢性的な睡眠不足の病態だという。問題は本人がそれに気付かず、今の睡眠時間が普通で、ショートスリーパー(短眠者)と思い込んでいることだ。

《むずむず脚症候群》
 夜、安静にすると、主にふくらはぎなどに「虫が這うような不快感」という表現し難い異常感覚が起きる。そのためジッと寝ていることができず、脚を叩いたり歩き回ったりして動かすと改善する。寝つき悪さから睡眠不足、日中の眠気に繋がる。また、夜間の睡眠中に手足、とくに下肢にピクンピクンとする不随意運動が周期的に出る「周期性四肢運動障害」も、本人が気付かないうちに脚が動いてしまい、眠気が浅くなり睡眠が妨げられる。

《うつ病、パーキンソン病の場合も》
 体や精神的疾患によって、日中に眠気を誘発しやすい病気にうつ病やパーキンソン病がある。うつ病では、特に季節性うつ病が日中に強い眠気が生じやすいといわれる。発症しやすいのは日照時間が影響しているためで、体内リズムの乱れが眠気の原因となる。パーキンソン病などの脳変性疾患でも、病状が進行すると日中に眠気が生じやすく、受診して初めてわかる。

 前出の久富院長は、「睡眠不足症候群の患者の特徴は、普段から“寝だめ”の習慣がある人に起こりやすい」と言い、こう付け加える。
 「平日と休日の睡眠時間に3〜4時間の差があると睡眠不足症候群の疑いがあります。睡眠障害の見つけ方は、起きたい時間の7時間前に寝て、朝スッキリ起きられるかどうか。目覚めが悪く、30分〜1時間延ばしたとしても朝がつらいと思う人は、睡眠障害の疑いがあります」

 また“短眠者”は「普段5時間程度の睡眠なら、連続2日まで。3日目には1〜2時間増やすのは良しとして、短時間睡眠を休日まで連続させない」ことが大事だという。ただ、健康な人でも眠気にはリズムがあり、10分程度の昼寝なら夜の睡眠には影響しないので、寝不足なら上手に取ろう。

 睡眠時間を十分に取っているつもりなのに朝が辛い、日中の眠気が強い場合は陽気のせいにせず、一度、病院を受診をしてみてはどうだろうか。