Se含有タンパク質は、ヒトの生存や健康の維持に必須で、その研究は大変重要だ。

しかし現状では、セレノシステインを自在にタンパク質へ取り込むことができないため、人工的な合成は困難である。

しかし研究チームは今回、ヒト型に続きバクテリア型の生体内のセレノシステイン合成メカニズムの解明にも成功した形だ。

今後、人工的なSe含有タンパク質合成方法の開発に貢献し、Seの自在な導入によって今までできなかった天然の酵素の機能を上回る能力を持つスーパー酵素の創生や、Se欠乏を原因とする疾患の研究などに役立つことが期待できるという。

またアーキアとバクテリアの多くは、基本的な20種類のアミノ酸の内の幾つかについても、セレノシステイン合成のようにtRNA上でほかのアミノ酸を経由して合成を行っているという特徴を持つ。

これは原始生物の名残とされ、初期の生物は少ない種類のアミノ酸からタンパク質を合成し、進化の過程で新しいアミノ酸を獲得していったと考えられているのである。

タンパク質を構成するアミノ酸の並びはDNA上の遺伝子に規定されているため、新規のアミノ酸の獲得には遺伝暗号とその翻訳系の進化が必要だ。

セレノシステインの翻訳系は最も歴史の浅い未熟なものであるため、セレノシステインの合成から組み込みまでのメカニズムを詳細に調べ、完成されたアミノ酸の翻訳系と比較することは、原始の生物が遺伝暗号を進化させながら現在の姿に至った経緯をひも解く手がかりになると期待できると、研究チームはコメントしている。



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