平均株価が、リーマンショック直前の終値を4年半ぶりで上回った日に、池袋西口のマクドナルドを訪れると、家があっても帰れない、仕事を失い住む場所がないなど様々な事情をもつ人たち、100円で夜を過ごす〈マクド難民〉の姿があった。一方で、ひと晩に100万円を遣う男がいる。ひと晩100万円飲む男、ネオヒルズ族・与沢翼氏を作家の山藤章一郎氏がインタビューした。

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「1000万円稼いだら頭の中にリアルな札束が浮かぶんです。でもいつも現金だから、よく落とす。こないだも酔いから醒めたら150万の時計がない。じゃ、今日中に500万稼ぐぞって。ぼく、六本木では超有名なんで。車のナンバーも覚えられて。みんなわあっと来る。じゃ飲みに行くかあで、一晩100万は絶対遣いますもん。平均したらいくらぐらいかなあ。月3000万円は遣ってるな。はい、カードじゃなく、全部現金で」(与沢氏・以下「」内同)

 池袋〈マクド〉の100円で眠る人たちと出会った同日午後2時、六本木。地下鉄駅より徒歩5分、六本木通り〈フォルクスワーゲン〉の入ったビル4階にあがる。

 黒を基調とした調度品にかこまれた若き会長は丁重に応じる。30歳のアンちゃんである。だが、ただのアンちゃんではない。いま最もふところにカネが唸る立志の人物である。

 JR東日本の関東域に自著『秒速で1億円稼ぐ条件』(フォレスト出版)の広告を顔写真入りで出した〈与沢翼〉という。〈(株)Free Agent Style Holdings〉会長。

 超ミニの秘書がさっと紙コップのお茶を淹れてきた。

 グループ月商4億円、成功報酬型広告と呼ばれる〈アフィリエイト〉で稼いだカネを元手に、投資ファンドやメルマガ配信などのネット関連事業のオーナーを務め、〈ネオヒルズ族〉と呼ばれる。

 どこか幼さを残した80キロに迫るぽっちゃり体型である。この若き立志伝者に「カネアル」話はきりがない。一軒家、マンションなど5か所の住まいの総家賃は月800万円。

 200万円のスーツを着、4000万円のベントレーやフェラーリを持ち、7000万円のロールスロイスファントムで移動する。

 会長室には、「人生は一度きりやりたいことをやりたいようにやれ」の色紙、大きな額の中で鋭い眼光を放つ虎、ヴィトンのトランク、バッグが散らばり、高級酒のが並ぶ。秩父の山奥育ち、母はいまも小学校教師、父は超大手企業役員。小6で大宮市に出てきた。いじめられて、中学校でグレた。高校中退。16歳で警察に検挙され、われに返った。

「こんな交友関係をひきずっていては、本当に駄目になる。不良をやってても成功はできない」

 土木作業員、板金屋、クロネコヤマト……大人に交じって仕事を覚え、大検を取得して早大社会科学部入学。〈カバン持ちインターンシップ〉に参加して、企業の社長の薫陶を受け、アパレルのビジネスを興した。月商1億5000万円の会社もつくったが、

「店舗展開やブランド急拡大が失敗して破産し、精神的にヤバくなった。10代で、喧嘩や暴走ばっかりやってたんだから、ビジネスなんかオレにできるわけない、オレはカスだ、人生の底辺を這いずりまわるんだと思いましてね。

 いや、辛かったですよ。ジェットコースターみたいに上がったり下がったり。なんでオレはこうまで成功したいのか、そのことも、いまもってよくわからない。ヒルズに住みベンツに乗って、渋谷マークシティの一等地にオフィス入れて、それが叶った瞬間に、なんだろうって。毎月たくさんの金が入ってくるけど、それがどうしたんだろうって。

 値段のついているものは、なんでも買えますけど。でもなあって。で、いまの目標はダイエットなんですよ。朝から夜までアポ入ってるから食べる時間がない。夜遅くにラーメンと焼肉とストレスのドカ食い、酒飲んで。

 25歳くらいからどんどん太ってきました。みんなに、35歳ぐらいで死ぬんじゃないのって言われて。それを回避しなきゃ、まずいっす」

※週刊ポスト2013年3月29日号