ゴールキーパーの丹野研太はスローイングをかっさらわれての失点で評価を下げたかもしれないが、あのかたちの失点は代表クラスでも経験するもの。それ以外では渡邉千真と長谷川アーリアジャスールの連携によるスーパーゴールでの失点しかなかったのだから、それほど悪いとは言えない。高さのある3バックとともに、ここはある程度目処が立った。

■5バックを維持するなら、サイドの運動量がカギに

攻撃ではフォワードの西弘則、2列めの木村、右ウイングバックの松本怜がよくチャンスに絡み、いいプレーをしていた。ただ、松本が終盤に負傷交替した。故障の程度が心配だ。現状の選手層からすると、開幕スタメンを維持しないと計算がしにくくなる。

戦術――というかシステムの点では、やはりがまんしてラインを押しあげないと厳しい。3-1-4-2は前がかりにしてアンカーと両ウイングバックを押し出せば3(バック)-3(ボランチライン)-2(アウトサイド)-2(フォワード)となり、4-2-3-1の東京に対して中盤で数的優位をつくることができるフォーメーションだった。

だが、押しこまれた結果、5バックに引いた状態だとその前の中盤は大分3に対して東京が5以上という計算になり、パスワークを許しやすくなっていた(廻させているという感覚ではあったのかもしれないが)。さらに3バックの横のスペースにまで進出されるほど押しこまれれば、狭い範囲で8対8となるうえ、状況によっては東京がふたりフリーになれる(両サイドバックが上がってきていると仮定して)位置関係になっていた。

もし5バックを維持するならアンカー以外の四人が前めに位置したうえで、両ウイングバックがマイボールになったら全力で駆けあがる姿勢がほしい。
そうでなければ、やはりラインを上げて前からプレスをかけ、ショートカウンター、ハーフカウンターを繰りだす態勢を整えたいところだ。

田坂和昭監督のことだから、第2節以降、有効な手を打ってくることだろう。指揮官のがんばりに期待したい。個の力の総量では対戦相手に及ばないのだから、智慧と勇気と根性がJ1残留への鍵となる。諦めずに戦ってほしい。

■著者プロフィール
後藤勝
東京都出身。ゲーム雑誌、サブカル雑誌への執筆を経て、2001年ごろからサッカーを中心に活動。FC東京関連や、昭和期のサッカー関係者へのインタビュー、JFLや地域リーグなど下位ディビジョンの取材に定評がある。著書に「トーキョーワッショイ」(双葉社)がある。
2012年10月から、FC東京の取材に特化した有料マガジン「トーキョーワッショイ!プレミアム」をスタートしている。