今季のJリーグは、サンフレッチェ広島が初載冠。そしてベガルタ仙台やサガン鳥栖といった過去にJ2に縁はあっても、タイトルには縁のないクラブが上位に喰い込む健闘を見せ、一方ではガンバ大阪が2部に降格し、鹿島アントラーズやジュビロ磐田の名門クラブが不振に喘ぐなど、さながら下克上の様相を呈したシーズンでした。

一方で昨今の日本経済界ですが、日本が世界に誇った家電のトップブランドが、見るも無残な経営不振に陥っている現実を鑑みると、「奢れるもの久しからず、盛者必衰の断りを表す」という平家物語の有名な冒頭の文言は真実を鋭く突いていることをしみじみと思うのです。そして、フットボールクラブの運営も、家電とスポーツという企業形態こそ違え、競争社会の中での厳しい戦いを強いられている点では、全く変わらないことを痛感する次第です。胡坐をかいたり、理に適わぬことをしたりすると、現実は容赦しないことを今季のJリーグは物語っていると言えるでしょう。

とりわけ、西野監督と共に過去10年間にわたって栄華を誇ったガンバ大阪2部降格のニュースは、マスコミに大きく取り扱われましたが、私としては道理に適った現象としか申し上げようがなく、改めてGM、或いは強化管理部長を始めとしたクラブ首脳部の責任の重さを認識した次第です。その理由は、小生がシーズン開始前の本年1月11日に掲載したブログ「2012年の日本フットボール界を占う」を読んで頂ければと存じますが、ガンバ大阪はシーズン開幕前の監督人事が、あまりにもデタラメでした。何故こんな人事が許されるのか、私は呆れると同時にその行く末を案じましたが、案の定です。比較的早い段階でその過ちに気付いて監督以下コーチ陣を更迭したので、2部降格を免れる可能性はあると思いましたが、プレシーズンキャンプ並びに開幕時の躓きは、想像以上に悪影響を及ぼしていたと言うことになります。

セホーン、呂比須ワグネル体制を引き継いだ松波監督に責任はないと思いますが、西野監督が築き上げた攻撃的フットボールを継承するといって、何故当初実績の無い呂比須ワグネル氏を監督に挿げ替えようとしたのか、また、それを解任して何故これまた実績の無い松波氏でなければいけなかったのか。こんな人事をしていると、現日本代表の大黒柱である遠藤選手がいようと、守備の要の今野選手を獲得しようと焼け石に水。そして彼らの頑張りを持ってしても、傾いた船を元に戻すことは出来なかったのです。

それほどまでにチームの浮沈は監督、そしてその監督を選び、正しい運営方針を示すGMにかかっているということなのですが、その事実を証明する痕跡は、僅か20年の歴史しかないJリーグでさえ、そこかしこに残されていることが分かります。開幕当初、全く奮わなかった名古屋グランパスに初タイトルをもたらしたのは、かのベンゲル監督でした。そして、これまたタイトルに縁のなかったJEF UNITEDにタイトルをもたらしたのは、イビツァ・オシム氏でしたし、巻、羽生、坂本、山岸、佐藤勇人、水野といった選手達が最も輝いていたのは、そのオシム監督の下でプレーしていた時でした。9冠を達成した後、なかなかタイトルを奪取できなかったアントラーズを再び常勝軍団に押し上げたのも、ブラジルで名将の誉れ高いオリヴェイラ監督でしたし、かつてガンバ大阪同様にタイトルに縁のなかった柏レイソルに光を当てたのは、奇しくも西野監督でした。また、柏レイソルが西野監督を切った後、どのような転落ぶりをし、一方で西野監督を獲得したガンバ大阪がまるでその逆を行く快進撃を見せたのは決して偶然ではありません。そして今再び、そのガンバ大阪が、当時の柏レイソルの強化管理部が犯した過ちを繰り返してしまったのは残念でなりません。