まだ日本は、アジアでも突出した強国になった訳でもない。韓国やオーストラリアとはまだ肩を並べている状態で、ウズベキスタンにも常に苦戦している。そして、欧州のトップリーグで活躍している選手がやっと数人出現してきた段階で、その数も質もまだまだ世界の強豪国には遠く及んでいない。それなのになぜ、弱者の戦術はやるな、ブラジル相手にどこまで攻撃的に戦って通用するのか試せ、という事を求めるのか? うぬぼれてはいけない。日本人の美徳の1つである謙虚さは絶対に忘れてはならない。

南アフリカW杯の時の守備的なサッカーは、質を伴わない守備的なサッカーだった。特に攻撃面での質、カウンターの質、それを伴わない守備的なサッカーだった。そうしたら、その次に目指すところはどこなのか? 当然、次の段階は、9人で守っていたところを8人で守れるようにし、尚且つ、質のある、威力のある、そういうカウンター攻撃ができるようになる、という事。結局、ハイプレス&ポゼッションのサッカーというのは、その先の段階にあるもので、つまり、南アフリカW杯の時の守備的なサッカーはそこに通じる第一歩、その先はハイプレス&ポゼッションのサッカーへと通じている訳で、そこを理解しておく必要があると思います。

無理にハイプレス&ポゼッションのサッカーを目指さなくても、多くの日本人選手の個々の能力が世界最高レベルにまで上がってくれば、自然とハイプレス&ポゼッションのサッカーをやらなければならなくなる。しかしそれでも、多くの強豪国がそうであるように、堅守カウンターサッカーの必要性というのは消えて無くならない。相手によって、状況によって、環境によって、堅守カウンターをやらなければならないケースは少なくない。従って、堅守カウンターサッカーの威力を磨く事は絶対にマイナスにはならないし、最もダメなのは、カウンターサッカーもポゼッションサッカーも中途半端、という状態になってしまう事。

ハイプレス&ポゼッションのサッカーを将来的にやりたいのであれば、それをやり続ける必要がある、という事には何の根拠も無い。バルセロナにしても、ライカールト監督時代はカウンター寄りのサッカーだったし、グアルディオラ監督時代になってからも、相手がリトリートしないならば、ポゼッションにこだわらずにカウンターで相手を沈めてきた。もちろん、そこはスペイン代表にしても同じ。そろそろ、堅守カウンターは悪、ポゼッション&ハイプレスは正義、という間違った固定観念を日本のサッカー人は捨てるべき。また、ついでに言えば、システム論=無意味、という恥かしい考え方も捨てるべき。そうでなければ、日本のサッカーは近い内に停滞してしまう事になると思います。