ミランの攻守の要、ズラタン・イブラヒモヴィッチとチアゴ・シウヴァのふたりを獲得するなど、潤沢な資金力をバックに大型補強を繰り広げるフランスの強豪パリ・サンジェルマン(PSG)。今シーズンはチャンピオンズリーグに出場していることもあり、その注目度はヨーロッパを超えて、もはや世界レベルの域に達している。

 とりわけ脚光を浴びているのが、あのマンチェスター・シティをしのぐと言われる補強予算である。

 PSGが今夏使った補強費は総額約140億円。その中には、来年1月に加入することが決まっている弱冠20歳のルーカス・モウラ(サンパウロ)の獲得に使った約40億円も含まれる。自らブラジルに足を運んで獲得を試みたマンチェスター・ユナイテッドのファーガソン監督が、獲得競争に敗れた末、常識を超える金額で落札したPSGに対する怒りをあらわにしたことは記憶に新しいところだ。

 そもそも、PSGがこれだけの資金力を持つクラブになったのは、昨シーズンのことである。それまでアメリカ系投資ファンドが持っていた株式をカタールの投資会社カタール・インベストメント・オーソリティーが購入。

 同グループのアル・ケラフィがオーナーに就任すると、昨シーズンはパレルモからMFハビエル・パストーレを約42億円で競り落とした他、総額約100億円を使ってフランス代表のMFジェレミー・メネズ、FWケヴィン・ガメイロ、イタリア代表GKサルヴァトーレ・シルグ、ウルグアイ代表DFディエゴ・ルガーノらを次々と補強したのだった。

 さらに、一躍タレント軍団となったPSGはリーグ首位に立っていながら、折り返し地点でコンブアレ監督を解任。アンチェロッティ新監督を招へいし、冬の移籍マーケットではイタリア代表MFチアゴ・モッタと左SBにはマックスウェルを獲得したのである。

 もっとも、チェルシーやマンチェスター・シティが数年がかりで頂点に立ったように、大金を使ったからと言ってすぐに結果が出るわけではない。PSGもその例に漏れず、昨シーズンはスモールクラブのモンペリエがリーグアン初優勝を遂げ、PSGは2位の座に甘んじる結果に終わっている。

 そして、リーグ優勝が至上命令となった今シーズン、冒頭のふたり以外に、アルゼンチン代表FWエセキエル・ラベッシ、イタリア国内ではピルロの後継者と評される19歳の至宝マルコ・ヴェラッティ、アヤックスからはオランダ代表右SBのグレゴリー・ファン・デル・ヴィールを獲得。気づけば、各ポジションにふたり以上のレギュラークラスの戦力を抱えるタレント軍団へと変貌を遂げたのである。

 とはいえ、これまで補強した選手を見てみれば、PSGが単にビッグネームだけを獲得しているわけではないことが分かるはずだ。とりわけ、今シーズン最大のサプライズと言われる19歳のヴェラッティ獲得(約10億円)は、しっかりとしたスカウティング網と広い人脈、そして確固たる強化戦略がなければ実現しえなかった補強と言える。

 そして、その総指揮を執っているのが、レオナルドなのである。現役時代にはサンパウロ、鹿島、PSG、ミランなどでプレイし、ミランやインテルでは監督も経験したレオナルドがスポーツ・ディレクターを務めていることは、現在のPSGを語るうえで重要なポイントとなっている。

 現在と将来を考慮したバランスのよい補強策は、レオナルドの存在なくして実現し得なかったと言えるだろう。

 ここまで、PSGはチャンピオンズリーグの第2節でポルトに敗れたものの、公式戦の黒星はその1試合のみ。国内リーグではライバルのマルセイユに首位を譲るものの、第4節のリール戦で固まった4−3−1−2が機能してからは、それまでの不振が嘘のような圧倒的な強さを誇っている。