トップ下とSHでは、守備に対するタスクの強さが異なる。当然、トップ下よりもSHの方が守備のタスクが強く、その分だけ攻撃には力を使えなくなってくるので、また、その分だけ守備能力が求められてくるので、香川や本田のような選手には不向き。もしそれでも香川や本田をSHで使いたいならば、C・ロナウドがそうされているように、偽りのSHとして起用し、SHであってもその守備のタスクはトップ下ぐらいに減らさなければならない。

ちなみに、最近のC・ロナウドは守備でも頑張っている、という事を言う人もいますが、確かにそれは間違ってはいませんが、あくまでもそれはプラスαの要素であって、レアル・マドリードでもポルトガル代表でも、基本的には、C・ロナウドが守備をサボっても良いように守備が構築されている。そうでなければ、いくらC・ロナウドがスーパーな選手であるからと言っても、SHというポジションであれだけの得点を取る事は無理。

従って、香川と本田の同時起用の問題というのは、どちらがより守備を負担するのか、という問題でもあって、もし香川と本田を同程度の弱いタスクの守備負担にするとしたならば、右SHにはその分の強い守備のタスクを背負ってもらわなければならないし、当然、ボランチの2枚に対してもそうですね。ところが、今の日本代表の場合には、遠藤にはそれを求められないし、右SHにも岡崎というFWの選手を使っているので、そこでバランスの悪さが生まれている。

しかし、それでも何とかギリギリのところでバランスを保てているのは、岡崎が守備でも頑張ってくれているからと、長谷部がそこのバランスをよく取ってくれているのと、左SBに長友という運動量があって守備に強い選手がいるからですね。但し、そうなってくると、当然その3人の攻撃参加は少なくなる、という事はあって、その傾向は最近ハッキリ出ていると思います。つまり、香川と本田の問題というのは、その2人のところだけを議論してても意味は薄い、という事ですね。

そして、香川がサイドに向かない理由としては、もう1つ、香川は動きで相手を制するタイプの選手なので、香川が相手のマークを外してプレーするには大きな幅が必要なのですが、サイドだとそのスペースが少ないために、どうしても上手くボールをもらえなくなってしまうから。だから香川は中へ中へ行きたがるのだと思いますが、その時には、本田が左へ行くか長友が左サイドの高い位置へ上がるか、それで「4−2−3−1」もしくは「4−3−3」、という形になればバランスは良い。

但しその場合には、遠藤がアンカーとしてしっかり香川と長谷部の後ろに残っているか、もしくは、遠藤が長友のカバーとして左SBの位置へ入るか、という事をやる必要があるし、更には、そうするだけではなく、そこで遠藤がしっかりとした守備をしなければならない、という事になってきて、そこがザックジャパンの守備の弱さになっている訳ですね。従ってやはり、香川と本田の問題というのは、その2人のところだけを議論しても意味は薄い、という事で、ましてや、香川と本田、どちらの能力の方が高いのか、というのも、ほとんど意味が無い議論だと言えると思います。

という事で、結局何が言いたいのかと、まとめれば、香川にしても他の選手にしても、重要なのは、相手がこうだからこうやろう、という判断力、という事であり、それによって正解というのは常に異なってくる、という事ですね。相手の事を考えずに、トップ下には香川が良いのか本田が良いのか、という事を議論していても、その答えは永遠に導き出されないし、正解はケースバイケースで変わってしまうし、また、チーム全体としての有り方を正しくすれば、どちらがトップ下でも左SHでも機能性は出せる、という事です。