イチロー・スズキがメジャーリーグに衝撃的に現れた2001年、彼はその魔法のようなバットでたくさんのヒットを打った。その独特な存在感と臨機応変なスタイルは、タバコのシミに汚れたアメリカ人野球選手と深いコントラストを生み出した。

彼はまた、他の物の中にある共通点を大切にした。 彼はロッド・カルーの威厳ある言葉と、ポール・モリターの静かな力強さ、そしてバック・オニールのオーラを大切にした。イチローはバックの全てを愛している。彼ら二人は違う色の皮膚を持ち、違う時代を生き、違う銀行口座を持ち、違う考え方をした。しかし彼らの野球への愛情とその情熱は言葉の壁を超え、他の誰かが考えるのよりも深い関係を作り上げた。

バックの成功は、良く知られている。そしてイチローは、否定しがたい苦しみの中にいる今のような時に、彼について考えるだろう。それは年令なのか、他の何かが理由なのか判らないが、38才のイチローは.300以下の出塁率とキャリア平均を60ポイントも下回る打率、そしてフリーエージェントになる今シーズン終了後の未来について、これまでにないくらいに苦しんでいる。

バックは2006年に亡くなる前に、時々見ていて楽しい選手たちの話をした。彼はキャリアを通して一つの場所にいた選手に対して、親近感を持っていた。イチローとシアトル・マリナーズは最近まで、生涯を添い遂げるのは確実だと思われていた。そして彼が今週、稀なインタビューでYahoo! Sportsに語ったところによれば、彼が留まることは確実ではない。

「それは、どっちにもなるでしょうね」イチローは通訳のアントニー・スズキを通して言った。「選手からだけでは、どうにもできない。チームからもこなくては、どうにもならないから。もしチームが必要だって言ってくれるのなら、自然とそうなるけど、もし選手だけがそうしたいと思っているなら、そうはならない」

彼の気持ちを共有しないマリナーズについて、まだ感心をもっているのかと尋ねた時、彼は返事を渋った。「それについては話せない」彼は言った。そしてイチローが今日から教訓にするであろうニグロ・リーグの象徴、オニールの話題に移った。

彼らは先駆者としての苦しみを共有していた。しかしイチローは、黒人だからという理由で差別を受けた人物と彼の境遇を比較しようとはしない。新人でMVPを獲得したシーズン中、イチローはバックと会い、信じがたい彼の話を聴きいて、より知るためにニグロ・リーグ・ミュージアムに一緒に行き、マリナーズがカンサス・シティに行った時は毎回、彼と会おうとした。バックはいつもバッティングケージの後ろで、イチローがグラウンドのあらゆるところに打ち、そして体の大きさからは考えらないパワーでライト側にホームランを打ち込む姿を見ていた。イチローは彼にために打った。とてもたくさんの物を得て、それを分け与えることを躊躇しない男から、イチローは素晴らしい物を見た。

「バックからは、何か大きなものを感じた」イチローは言った。「彼が歩んできた道から、彼が野球を愛していたと感じることができる。そしてその存在を感じた時、彼についてもっと知りたいと思った。僕に見えたのはそれ。僕たちはみんな、良い野球をしようとしているし、野球をもっと良くしようと思っている。僕はそう思っているし、それを楽しんでいる」

これらの言葉は、引退を考えている男のものとは思えないが、シアトルのコラムニストは、彼はそうすると暗示している。恐れと後ろ向きな考えて満ち溢れている雲は、今イチローの頭上で止まっている。そしていつでも、彼の上にそれらを降らせる準備ができていて、マリナーズと彼の12年間に及ぶ関係にダメージを与える可能性がある。