サッカー日本代表が誇る絶対的な守護神は、最終予選序盤の大一番で存在価値を発揮した。

 オマーン、ヨルダンをホームで撃破した日本は、6月12日に敵地でオーストラリアと対峙する。最終予選で対戦する4か国のなかで、最大の難敵だ。

 果たして、序盤から相手の猛攻にさらされた。鋭いシュートがゴールマウスを襲ってくる。思わず目をつぶりたくなるような場面が続いた。

 だが、日本には川島永嗣がいた。敵地の観衆があげる声援を、この29歳はことごとくタメ息に変えたのだった。


──6月に行なわれた最終予選を、改めて振り返っていただけますか?

「3試合で勝ち点7取れたのは、いいスタートと受け止めていいと思います。2勝1分けという結果はもちろんですが、チームとしてゲームの質にもこだわれたことに、僕は大きな意義があると感じています」

──今回のようにまとまった活動期間があると、チームのレベルアップを感じることができますね。

「0対1で敗れた2月のウズベキスタン戦では、十分な活動期間がないなかで戦う難しさを感じさせられました。今回はトレーニングを経て試合に臨めたので、その時間を有効に使いたい気持ちがありました。1試合ごとに成長したい思いも。それが、ゲームのなかで出たのかな、と」

──細かな部分での意思疎通が、きっちりとはかられていました。

「普通にやっていたら言わなくても分かりあえるところが、活動期間が空くと当たり前じゃなくなってしまうところがあるんです。DFとの連携を含めて、お互いに何をするのかがはっきりしていましたね」

──オーストラリア戦のパフォーマンスは出色でした。

「客観的に見ると、オマーン戦とヨルダン戦はGKの仕事がそれほどなかった、と見られるかもしれないですけれど、僕自身は3試合とも同じ気持ちで臨んでいました。90分間のなかで1、2回しかボールに触らなくても、つねにベストのパフォーマンスを出さなきゃいけないし、ゴールを守らなきゃいけない。そういう意味で気持ちの変化はなく、オーストラリア戦にもいい形で入れたのでは」

──それにしても、見事なプレーでした。とくに開始早々のケーヒルとの1対1などは、無駄な力がまったく入っていなかった。

「ああいう形になったら、身体がガチガチになってもしょうがないですから」

──10年の南アフリカW杯後に、ベルギーのリールセSKへ移籍しました。2シーズンにわたって色々な試合展開のなかでプレーしてきた経験が、生かされているのでしょうか?

「色々なシーンはもちろん想定しますけれど、実際には何が起こるか分からない。サッカーってスポーツ自体が、どういうシーンが出てくるのか分からない。向こう(ベルギー)でやってきたことで、局面での対応力が出てきているんじゃないか、とは思います」

──結果は1対1でしたが、オーストラリア戦は川島選手のゲームでした。

「まあでも、結果が……。PKは止めたかったです。あれを止めていれば、自分としても良かったと言えるのですが」

──反則を取られた内田篤人選手のためにも止めたかった、と試合後に話していましたね。

「自分でも止められるようなシーンだったんです。シュートと同じ方向へ飛んだので。イケる、と思ったんですけどね」

──GKについて語られるとき、日本で「安定感」や「威圧感」といった表現がしばしば持ち出されます。川島選手も追い求めるキーワードがあるのでしょうか?

「自分自身は、そういうものにとらわれたくないんです。以前はこう……二つにひとつみたいな感じだったじゃないですか。『安定感がある』か、『安定感はあまりないけれど、すごく止める』か、みたいな」