欧州へ移籍した選手の誰もが1対1の重要性を口にする。そして、「サブの選手がレギュラーの選手を削り合うことだってある」と。その練習の激しさを嬉しそうに語る。
「Jリーグでも成長は出来ると思う」と話しながらも、厳しい競争に身を置くことを求めて、Jリーグから飛び出した選手も多い。
 小笠原満男もそんな一人だった。
「ヨーロッパの選手は1対1に強いと言われるよね。個の力があるって。イタリアへ行ってその理由がわかった。それは、練習のときから、試合のようにボールを奪いあっているからなんだ。練習でできないことを試合でやれるわけはないんだよね」と以前話していた。
 
 競争は勝者と敗者を生む。
 敗れたことをチャンスに変えられる強さが無ければ、成長はできない。生存競争の激しいヨーロッパの選手たちは、敗者の立場になる機会も多いのかもしれない。だからこそ、強い闘争心が身につく。いつまでも負け犬のままではいられないと、立ちあがる強さが生まれるのだろう。
 サッカーは、数字で客観的に評価するのが難しい競技だ。
「こんなに頑張っているのに」と、納得できない評価を受けることもあるだろう。でも、だからこそ、ライバルとの戦いは、自身との戦いでもあるのかもしれない。
 前半29分で交代を命じられた長谷部とて、その屈辱から逃げず、現実を受け入れ、立ち向かったからこそ、競争に勝つ日を迎えられるのだ。

 Jリーグからの若い才能が欧州へ流出する現実。そして、Jリーグのレベルが下がったという声も相変わらず多い。観客数も伸び悩んでいる。
 そんな現状を変えるのは、日々の練習なのかもしれない。
 選手自身が競わされていることを自覚し、100%以上の力を出さないと落ちていく、そういう危機感をたぎらせ、闘争心をぶつけ合うトレーニングが試合の興奮に繋がり、レベルアップや成長を促すはずだ。