脱原発運動を続ける俳優の山本太郎は、昨年11月下旬からドイツ、ベラルーシ、ウクライナ(チェルノブイリ、キエフ)と取材旅行に向かい、ヨーローッパにおける原発の実態を目撃した。

 なかでも山本は、福島原発事故以降、ただちに8基の原発を停止させたドイツとチェルノブイリ(ウクライナ)の隣国ベラルーシのギャップに驚いたという。

「ドイツは成熟した市民運動の考えが隅々まで浸透しているんですよ。ゴアレーベンという街でフランスから運ばれてくる核廃棄物輸送に抗議する運動に参加したんですけど、老若男女が一緒になって、氷点下、貨物列車の通過する線路の上で座り込む。誰でも参加できる集会の雰囲気はまるでフェスティバルでした。排除に来た警官も手荒なことはせずに、ときに参加者に温かいコーヒーを振る舞ったりする。誰もが原発に対する自分の意見を持っていて、それを言葉にできるんです。

 ところが、ベラルーシは大統領の独裁体制下、厳しい管理体制が続いていて自由がない。医師にインタビューに行っても、必ず保健省の役人が監視で横にいて、その役人が医師の代わりに被曝線量や甲状腺がんの発生の現状について話すんです」

 その旅で山本の反原発の決意はさらに固まったという。

「メルトスルーというチェルノブイリ以上の事故を起こした日本が、反省を踏まえてドイツに向かうのか、それともベラルーシになってしまうのか。このままやったらベラルーシじゃないですか。

 野田(佳彦)首相が『福島第一原発は冷温停止状態に達した。事故そのものは収束に至った』という発言をした同じ日(12月16日)に、さっそく(福島県)郡山市の児童14人による集団疎開裁判(*6月24日に、郡山市内の小中学校に通う児童・生徒14人と保護者らが同市に『集団疎開』などを求めて仮処分申請を行なった)が却下されましたけど、絶対に許せない」

 安定を示す冷温停止とは、原子炉が壊れた状態で使う言葉ではない。さんざん待たされて却下という集団疎開裁判の判決は、この野田発言のタイミングに合わせたものではないかという。

「このままでは日本はベラルーシになる」と、山本は今後も声を上げ続ける。

(取材/木村元彦)

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