もちろん、労働基準法的に明らかにアウトな契約内容であれば、それに対しては主張するのが正当というもの。しかし、今回中島やダルビッシュが提示された契約が不当かといったら、決してそんなことはない。ダルビッシュが希望する年平均2000万ドルを得ている投手は、現時点ではCC・サバシア(ヤンキース)ただ1人。800万ドルという年俸は、松坂がレッドソックスと入団交渉したのとほぼ同じ額で、決して足元を見た額じゃないんだ。中島にしても、6000〜7000万円という年俸は、ヤンキースが提示した「控えの内野手」の額としてはいたって妥当。まして、2人ともまだMLBでは1試合もプレーしていないわけで、いくら日本で素晴らしい実績があるとはいえ、そう簡単に高い年俸を出せるわけがないんだ。 
 
 斎藤隆(ダイヤモンドバックス)や川崎宗則(マリナーズ)を見てみればいい。斎藤は日本では決して一流の選手ではなく、アメリカでもマイナー契約でのスタートだった。それでも、マイナーから地道に這い上がったからこそ、40代の今でもメジャー屈指のリリーバーとして働けている。川崎だって、海外FAでの移籍にもかかわらず、マリナーズからはマイナー契約しか提示されなかったけど、それでも喜んで契約を結んだ(もちろん、彼の場合は目的が別の所にあるんだけど)。その川崎のお目当てであるイチロー、あるいはあの野茂英雄ですら、当初は決して有利な内容の契約じゃなかったけど、あれだけのスーパースターになれたじゃないか。 
 
 最近はMLBに行った日本人選手でも、「英語をなかなか覚えようとしない」と批判される選手もいると聞く。もし今回の選手たちの不満が、「俺は日本での実績があるんだから、好待遇で当たり前だ」なんていう甘えから来てるんであれば、そんな奴に海外に出る資格なんてありゃしないよ。マイナーリーグでは、中南米やヨーロッパからの選手たちが、何とか一軍切符を掴んでやろうと目をぎらつかせてるんだ。そういう環境で、変に甘えた部分を持った奴が成功できるだなんて思うな。メジャーはそんな簡単な場所じゃないよ。