そんなドジはしないと思うが、パスポートを盗難されないとも限らない。というのも、85年、北朝鮮で取材をしていたサッカー記者が、ホテルで食事中に「部屋に冷蔵庫があればいいのにな」とつぶやき部屋に戻ってみると、そこに冷蔵庫があったという逸話が残っている。パスポートを部屋から消すぐらい簡単なことなのだ。

「まだ北朝鮮側からザックジャパンが滞在するホテルの通達がないようですが、おそらく平壌一高級な高麗(コリヨ)ホテルに決まるでしょう。くれぐれもホテルの部屋で作戦会議はしないこと。会話はすべて筒抜けです。また、予定もないのに部屋のドアをノックされても決して開けてはいけません。不測の事態に巻き込まれる可能性があります」(辺編集長)

 なでしこジャパンも五輪予選で中国滞在中、深夜のホテルの部屋を“ピンポンダッシュ”されて睡眠不足の選手が続出した。北朝鮮なら美人工作員が“ハニートラップ”を仕掛けてくるぐらいのことは想定しておくべきかも……。

 あとは食事。サッカーの世界では、アウェーの選手が食事に下剤を混ぜられて、下痢ピーのまま試合……なんてこともよくある話だ。

「ザックジャパンが自前で食材を用意しても税関で拒否されれば、ホテルで食事を取る以外、選択肢はない。これこそ北朝鮮の思うツボです」(宮塚教授)

 それはヤバいことになりそうだ。

「しかし、私が最も懸念しているのは北朝鮮が大差で敗れることです。試合終了後、競技場にいる10万人近い北朝鮮サポーターが黙っているわけがない。わずか数百人の日本人サポーターを取り囲んで……。テレビ中継などないはずですから、われわれの知らぬ間に不測の事態が起きることになるかもしれない」(宮塚教授)

 10万人の北朝鮮サポーターに囲まれて「殺せ、殺せ!」とコールされないよう、ザックジャパンはほどほどに勝ち逃げするのが賢明かもしれない。

(写真/益田佑一)

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