10月6日に行われたナビスコカップ準々決勝の平均観客数は、4,940人だった。カードとしては悪くないゲームが揃い、2試合は延長までもつれるスリリングな展開となったが、集客にはつながらなかった。

条件は良くなかった。平日のナイトゲームで、すべての試合が雨模様だった。寒波も押し寄せていた。仕事や授業、アルバイトなどを慌ただしく切り上げてスタジアムへ向かうには、動機付けが足りなかったと言える。

代表選手不在の影響はどうだったのか。準々決勝に進出していた8チームからは、駒野 (磐田)、栗原 (横浜FM)、遠藤 (G大阪)、増田 (鹿島)、藤本 (名古屋)、原口 (浦和) の6人が不在だった。清武 (C大阪) はケガで出場できていない。

3、4人がまとめて抜けてしまっていたのならともかく、どのチームもひとりである。集客への影響は、それほど大きくなかったと考えるのが妥当だ。ナビスコカップという大会の興味が、薄れているのだろう。

Jリーグはナビスコカップの改革に着手しており、J2を加えたトーナメント方式への変更が模索されていた。J2各クラブは賛成の意向を示したが、J1各クラブは反対意見が過半数を占めたと聞く。トーナメントではホームゲームが少なくなり、収入が減ってしまうというのが理由だ。来季からの変更は見送られ、継続的に議論していくことになっているという。結論は先送りされたわけだ。

カップ戦ならではのジャイアントキリングを求めるなら、J2のクラブを加えたほうがいい。J2のレベルアップにもつながる。ただ、平日に開催されることの多いカップ戦は、ただでさえ観客動員に障害がある。たとえば、関東地方のチームが西日本のチームを迎える場合、アウェイチームのファン・サポーターがどれぐらい来場してくれるのかが不透明だ。もちろんその逆も同じである。

実力の格差が明らかだと、試合の見どころそのものが失われかねない。ナビスコカップにジャイアントキリングを求めると、天皇杯に性格が近づいてしまう可能性もある。そもそも最適解がないとしても、着地点を見つけるのが難しいのは確かだ。

個人的には、J2を含めたほうが面白いと思う。J2クラブには、かつてJ1でプレーした選手や、期限付き移籍で所属する選手が少なくない。古巣と対戦する選手は数多く、様々な角度から話題を提供できる。チームが増えれば監督、選手にまつわる因縁は増えるわけで、J1クラブだけより“切り口”は多彩になるはずだ。

ナビスコカップを介してJ1とJ2のクラブ間が交流すれば、思いがけないところでファンを開拓できるかもしれない。予想されるデメリットは見過ごせないが、予想外のメリットが生まれる可能性だってある。

ホームゲームの収入減への対応としては、東南アジアや中東への放映権販売に活路を見出したい。そのためにはアジア枠を使った選手の獲得も必要になってくるが、外国企業へ向けたスポンサーの呼びかけはしやすくなる。投資した分の回収は見込めると思う。

Jリーグがアジア枠を採用したのは、アジア全体のレベルアップへの寄与と、アジアへ向けた情報発信が目的だったはずだ。現状ではヨーロッパへ注がれている東南アジアや中東企業の視線を集めることは、Jリーグの魅力や競技力を広くアピールすることにもなる。

オーストラリアや韓国の選手限定ではなく、アジア枠をもっと有効に活用し、そのうえで、ナビスコカップの位置づけをさらに高めたい。J1リーグ、天皇杯と並んで3大タイトルと呼ばれるにふさわしい価値を持たせるのだ。

ここで、ACLとのリンクを模索する。たとえば、ナビスコカップの優勝チームとJ1リーグの3位チームが、ACL出場をかけてプレーオフを戦う。ナビスコカップの成績をポイント制にしてJ1リーグの最終成績に上乗せし、ACLの出場クラブを決定してもいい。