「09年に改定案が議論されたときに、民主党は修正協議で自公案を丸のみしました(国会解散により廃案)。私は民主案は09年のものよりも後退していると見ているので修正協議が心配です」
さらに、こんな話もある。
「今回、妥協のないまま廃案になったとしても、いずれまた改定論議は再燃するでしょう。そのときに、現在と与野党が逆転していれば、より規制強化の意思が強いものになってしまうかもしれない。それならば、不十分な点があったとしても、とりあえず今回の民主案で改定したほうがマシです」(ある民主党の議員秘書) どうも、今回の議論はあくまで改定ありきで進んでいる様子だ。それゆえに、規制を進める人々につけ込まれる隙を与えてしまう可能性がある。何しろ、民主党内部にも、マンガやアニメに無理解で、規制強化に熱心な議員は多い。その代表格が小宮山洋子厚生労働大臣だ。もちろん、小宮山大臣も入閣した以上は震災復興優先で、こちらの問題に力を割く余裕はないはずだが……。
「野田内閣は原発から沖縄の基地問題まで課題が山積み。参議院で野党が多数を占めている以上、ほかの法案を通すために“こっちは折れるから、こっちは……”と、さまざまな妥協が必要になってしまう。そうした取引材料のひとつとして児童ポルノ法が利用されることもあり得ます」(前出・議員秘書)
本稿締め切り時点では、国会は会期を何日とするかをめぐって対立している状況。参議院で多数を占める自公側は、さまざまな面で強気な姿勢を崩さない。規制に反対する人々の内部には「こんなことになるのならば、民主党が力を持っていた09年の衆院選直後に(当時の民主案で)改定してしまえばよかった」という声もある。議員や関係者の多くは、取材に対しては「何も進んでいない」と答えるのだが、民主党が妥協した形で改定案が成立してしまう可能性は決して低くなく安心はできない。
昨年、大きな注目を集めた東京都のマンガ規制条例の際には「地方自治体の条例の形で外堀を埋めた上で、本丸(児童ポルノ法改定による規制強化)が狙われている」という見方も強かった。直接の関連性はないにしても、都条例が改定されてしまったことで規制を進める人々の側が勢いづいていることは間違いないだろう。
都条例のときと同じく、今回も表現の自由が悪化するかしないかは民主党の態度いかんにかかっている。安易な妥協によって表現の自由が奪われるのだけは勘弁してくれ!!
(取材・文/昼間たかし)
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